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金融市場局のミッション・インポッシブル=郵政公社“岩盤”を粉砕?
 本日の国会答弁。福井総裁は「(当座預金残高を)6-7兆円というところに下げていく」と述べていた。先のエントリーを読んで頂いた方々はご存知のように、所要準備(6兆円)前後まで下げていく場合には“動く岩盤(基盤岩)”を形成している日本郵政公社預金が障害になる公算が大きい。仮にゼロ金利状態の下で6-7兆円に落とせるにしても、それは①公社預金が2兆円に落ちている②ブタ積みが1兆円に縮小している-場合に限られ、いずれにせよ2-5兆円程度の幅で公社預金が上下動している以上、安定的に6-7兆円を維持することは非常に難しいと思われる。一時的に達成できても、再び当座預金が増える事態になると考えられ、インタバンク市場の外からは当座預金増大が郵政要因ではなく、日銀の操作でそうなったように見えるため、何がしかのサインであると誤解されるリスクもある。
 日銀マンにとって総裁の言葉は重い。言ったことが実行されないと、総裁が恥をかいてしまうかもしれないからだ。質問した国会議員にしても、言質を取ったつもりが反古にされた格好となり、総裁をまた国会に呼んで批判するかもしれない。金融政策決定会合を控えて日銀はブラックアウトに突入してしまったため、企画・金融市場局が総裁答弁をどう受け止めたのか不明だが、それなりの衝撃はあったのではないかと推測される。
 では、郵政公社預金の岩盤を粉砕し、当座預金を所要水準で安定推移させることは可能なのだろうか。考えられるのは、①郵政公社をごり押しして2兆円で預金を安定させる②郵政公社専用の相対売手を実行し“ブタ預金”を吸収する-といったこと。前者の手段はしかし、民営化に向けて郵政の存在そのものをどうするかに悩殺されている以上、とてもじゃないが、資金繰りの精緻化までは手が回らない。やれと言われること自体がミッション・インポッシブルではないかと思われる。一方、後者も調節体制にイレギュラーな手段を設ける発想自体がないため、日銀にもミッション・インポッシブルである。
 総裁答弁をどうやってしのぐのか。恐らくは日銀文学を駆使してやり過ごすのであろう。「6-7兆円というところに(向けて)下げる」と言葉を補った拡大解釈で逃げる気がする。都合の良い言葉を挿入してごまかすのも優秀な日銀エリートの条件である。これぐらいのこと企画官僚は瞬時にこなす。今ごろは週末の総裁会見に向けて想定問答は完成しているはずだ。
by bank.of.japan | 2006-05-16 21:17 | 日銀 | Comments(4)
Commented by SAKAKI at 2006-05-17 10:13 x
本エントリーにて大笑いしてしまいました。コロリと騙してください。
Commented by bank.of.japan at 2006-05-17 11:13
ありがとうございます、SAKAKIさん。想定問答、楽しみですね。
Commented by walrus at 2006-05-17 17:02 x
普通、利上げが行われれば、当預保有に機会費用が生じるため、利上げ自体が当預残の所要準備近辺への減少を促進させる要因になると考えられます。利上げ後において、果たして公社が機敏に機会費用を回避するのでしょうか。その可能性が低いのであれば、日銀は誘導金利水準についてかなり幅を持たせた表現を採らざるを得なくなるのではないでしょうか。
Commented by bank.of.japan at 2006-05-17 18:47 x
walrusさん、どうもです。機会費用の回避に動く金利感応度は民間銀行よりもかなり低いと思われ、ゼロ金利解除して例えば0.25%に上がった程度では公社預金の変動性に変わりはないかもしれません。概ね…%の「概ね」でどの程度の幅を織り込むか、でしょうか。
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