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郵政公社預金の構造運動・本論=基盤岩はなぜ上下動するのか
 地質学的なアプローチとは言ってもイメージしやすくするためのものなので、全然アカデミックではないかもしれないが、地層に例えて「郵政公社預金が上下動する理由」を説明してみたい。郵政は公社発足に伴い2003年4月から日銀当座預金に2兆円程度を「預金」することになった(こちらを参照)。郵政は準備預金制度の対象ではないので、「積む」と言うのは正しくない。準備預金に似た資金を「預金」する、というわけだ。これによって「2兆円」が当座預金残高目標に上乗せされることになった(量的緩和政策の形骸化を象徴する出来事だが、ここでは触れない)。
 この「2兆円」はしかし、預金額が上下動してもインタバンク市場への影響は少なかった。すでに所要準備を大幅に上回る量的緩和政策の下で組み込まれ、その後量的緩和が強化されていったからだ。例えば、当座預金残高30兆円の下で上下動しても、郵政が増やした分は民間銀行分が減少するという内訳の変化をもたらしていたと思われる。
 さて、ここから地層への比ゆである。インタバンクを大陸の湖だとすると、所要準備6兆円(銀行4兆円、郵政2兆円)が湖底、すなわち堅い基盤岩となっている。日銀はこれに24兆円の真水を注ぎ込み、水面まで30兆円とした。基盤岩まで水深24兆円の湖である。日銀は現在、湖水を抜く作業を行っているが、金融機関の間では金利がゼロでは運用しないところもあるため、深いところは真水がヘドロ状となって堆積層と化している。もっとも、ゼロ金利状態ではヘドロ化する堆積層も金利がプラスになれば蒸発するわけだ。
 問題は、基盤岩の一部を構成する郵政公社の「預金」である。「マネタリーベースと日本銀行の取引」で預金額を計算すると、直近数ヶ月の末残ベースで2兆円程度から5兆円程度までの振れ幅となっている。従って、湖底を形成する基盤岩は6兆円一定ではなく、6兆円をボトムに変動しており、場合によっては10兆円近くまでせり上がっていると推測される。従って金利がゼロの状態で水抜きを進めるにしても、基盤岩の上下動やヘドロ化した堆積層の存在によって水深10兆円程度までが限界ではないかと思われる。
 さらに根深い問題は、金利がプラスになっても、郵政基盤岩は上下動を継続すると思われることだ。地質学的には基盤岩の変動は構造運動と言うが、郵政の上下動も公社特有の構造要因に基づいていると推測される。簡単に言えば、預金を一定に保つほどの柔軟な対応が取れない構造となっているようだ。預金が増えるのは、預託金の償還などが主な要因と考えられ、普通であれば償還に合わせて運用すればいいのだが、そこまできめの細かい操作はまだ難しいのであろう。民間銀行並みの資金繰りを精緻に行うにはまだ程遠いとみられ、これは組織体制に起因する構造問題である以上、金利がプラスになったからといって解決する問題ではないと思われる。
 所要準備=基盤岩が郵政の構造要因によって構造運動を引き起こしているとき、金融調節上はどのような問題が生じるのかは別途エントリーで取り上げたい。
by bank.of.japan | 2006-05-05 01:09 | マーケット | Comments(3)
Commented at 2006-05-07 16:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 真実一郎 at 2006-05-08 01:12 x
しばらくぶりに拝見させていただいていました。
ちょっとコメントをと思ったのですが、字数制限ではねられてしまったので、不細工ですが、自分のところのエントリーとさせていただきました。お眼汚しではありますが、URLを張らせていただきます。

http://hyouron.blog23.fc2.com/blog-entry-50.html

 
Commented by bank.of.japan at 2006-05-08 11:02
真実一郎さん、どうもご無沙汰です。リンク有難うございます。後ほど、そちらのエントリーにコメントする予定です。よろしくお願いします。
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