人気ブログランキング |
『アウトライヤー』初期案とALMについての所見
 日銀周りの話題としては、出張航空旅費の過払い問題だが、運用不備のお粗末さを会計検査院に指摘され、格好悪い姿をさらしてしまった。悪いことは悪いことなので、以後こういうことはないのように気をつけるべし、と言うしかない。この話題でエントリーを埋めると、前から書こうと思っていたことがまた書けないので、表題のテーマに戻りたい。
 このエントリーはシリーズを考えている。最近、注目されるようになってきたバーゼルⅡの「アウトライヤー」規制に絡めて、過去の邦銀ALMの実態やそれがイールドカーブ形成に与えた影響、マクロヘッジ会計上の考察点などに触れていきたいと思う。全体として、規制と実態の差、それが金利形成に与えた影響などが浮き彫りになればいいと思う(手におえず、脈絡なくなるかもしれないが)。なお、私は金融実務の専門家ではないので、記述が不正確になる恐れがあります。その場合はご指摘を。適宜修正していきます。
 さて、「アウトライヤー」だが、現在は割り当て資本をベースにして金利リスクを管理する概念となっているが、最初の案は違った。「各銀行の平均よりも突出した金利リスクを取っている銀行」がアウトライヤーとされていた。平均を突破した存在、という意味ではまさにアウトライヤー(ならず者、外れ者、突破者)である。
 だが、この概念は弱点があった。①「平均」をいかに導き出すかが困難②平均が出せないなら突破者も検出し得ない-のだ。なぜそうなるかだが、それは銀行ALMの実態が把握しにくいため。ALMとは「資産・負債の総合管理」と訳されるが、これだけでは良く分からない。多少噛み砕くと、金利リスクを適切に管理しつつ、収益の極大化を目指す、となる。分かるようで分からない。ぶっちゃけ言えば、うまく金利動向を当てて可能な限り儲ける、であろう。
 アウトライヤー概念が登場した6-7年前は、今は単体としてはもはや存在しない銀行が多くあった。その中からまず「さくら銀行」の例を紹介しよう。同行はスワップ市場の中期ゾーンで積極的なレシーブを行っており、ペイポジションとの比較ではネットで10兆円もレシーブポジションが多いことがあった。レシーブすると、同期間の国債を買うのと等しい。単純にレシーブするのは金利リスクを積み上げるだけだが、ある負債を念等に置けばヘッジとみなせる。推測するに、さくら銀行は流動性預金の長期滞留分を「長期負債」と認識して、それにマッチングする形でレシーブポジションを作ったのではないかと思われる。そう。まさに「コア預金」の概念である。
 当時の私は、ALM関係者らの取材を通じて、この概念にたどり着いたとき、ちょっと感動した覚えがある。話を戻すと、もちろん流動性預金は短期債務と認識できる(それが一般的)。この点について、当時の日銀考査局は「負債期間の認識は経営判断」と言っていた。ところが、流動性預金の期間認定が自在だとすると、バンキング勘定で保有する国債、それにALMのスワップも含めた金利リスクが多いのか少ないのかが特定しにくくなる。
 コア預金概念を導入してALMで金利リスクを取る銀行、そうはしない銀行がほぼ同列になると何が平均的かあいまいになる。それにみんなが一斉に金利リスクを取れば、全員が会うトライヤー化することによってアウトライヤーがいなくなることにもなる。こういった事象を当時、バーゼルⅡに関わっていた日銀マンと議論したのだが、「アウトライヤー認定は無理かな」という感想であった。

追記 
・銀行のリスクの取り方はオンバランスの資産・負債だけではなく、オフバランスも見ないとよく分からない。さらにオフを含めても実はよく分からない面もある。
・ある銀行は業務純益の半分を「市場・ALM部門」が稼いだが、決算短信からは収益のトラッキングができなかった(私の能力不足による面もある)
・個人的には当時のさくら銀行のALMは何か悟りきったフシがあり、「明日なきALM」との声もあったが、結構好きであった。
10兆円のレシーブポジションは「マクロヘッジ会計適用分の概要」から算出した想定元本ベースのものだが、この概要がざっくりしたものなので、実際の金利リスクがどの程度であったかは不明。特に期間の区切りが大雑把なので、IMMスワップという短期物が中期ゾーンに入れ込まれた格好であったので、10兆円という数字に驚いてはいけないかも。
・なお、最近のALMは金融不安の収束、景気回復などでそれほど積極的に動いていないように思われる。
 
 
by bank.of.japan | 2006-04-20 22:40 | ALM | Comments(2)
Commented by 元投資銀行員現PB at 2006-04-21 11:47 x
 はじめまして。鋭いエントリー、いつも楽しく拝見させていただいてます。
往時アナリストだった私は「規制金利負債の金利感応度は低い(デュレーションは長い)、特にリスク局面となる金利上昇局面においては」と自説を主張していたため、さくらの中短期レシーブ姿勢を支持するものだったのですが。
 で、7年経ってやっとリスク局面が来ましたが、規制金利の動向と都銀の預貸構造が大きく変わってしまったため、もう検証の機会が無いですね(寂)
Commented by bank.of.japan at 2006-04-21 12:19 x
元投資銀行員現PBさん、どうもです。このシリーズ、興味を持つ方は非常に少ないだろうと思っていたので、コメント頂き有難うございました。ご指摘のように、経済環境や預貸構造も変化し、検証難しくちょっと残念ではあります。メガ再編によって個性も薄れた面もありますし。関連のネタはまだ取り上げる予定ですので、引き続きコメント歓迎です。今後ともよろしくお願いします。
<< 今ごろ気が付いた表現修正=日銀... 日銀『さくらリポート』で見る各... >>


無料アクセス解析