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中川政調会長発言と日銀の大義
 中川自民党政調会長を皮切りに政府要人から量的緩和解除をけん制する発言が相次いだ。中川会長の日銀法見直しのほのめかしは、個人的にはやり過ぎではないかと思う。確かに、日銀の解除議論は早過ぎるし、解除条件を満たす前からフォワードルッキングになったのは無謀な賭けと言える。問題は、量的緩和解除に、大義があるかどうかであろう。つまりは、日銀法上の「物価安定を通じ、国民経済の健全な成長に資する」かどうかに尽きる。
 先のエントリー、「リフレ心理は生臭い」で日銀がインフレファイター的姿勢をのぞかせたことで推測することがあると書いたが、ちょうどいいのでここで解説してみたい。日銀は量的緩和の解除に際し、どう理屈をつけるかで一時期悩んでいた。日銀の論理では、量的緩和は流動性懸念の払しょくに効果を発揮した一方、マクロ効果はほとんどない。この場合、金融システムの安定化と消費者物価上昇率のプラス転換によって、少なくとも量的緩和は止められる。問題は、そこから先の「利上げ」が正当化できるかどうかだ。
 量的緩和をゼロ金利に戻すのは異常な政策を止める、ということで理解を得られたとしても、利上げは誰が見ても「引き締め」だから、何か理屈が必要だ。それは一つしかない。「物価安定のため」である。展望リポートでは、物価・経済に見合った水準に調整していく、となっていたが、これはまさに「物価安定を通じて、国民経済の健全な成長に資するのだ」というわけだ。日銀としては物価安定のためと言えるかどうか悩んだが、言うことで割り切った(それしかないのも事実)のだろう。
 先週末の総裁講演では「需給バランスの改善が長く続いていく中で、何らかのきっかけからインフレ心理が予想以上に高まる可能性はある」との文言があった。私の記憶では、日銀が公式にインフレリスクの可能性を具体的に指摘したのはこれが初めてではないかと思う。その可能性はなしとはしないが、かなり低いのではないかと思う。マーケットの馬車馬さんも書いておられるように、潜在成長率は本来、推計が難しく、日銀は1%前後とかなり低めに見込んでいるが、実際はもっと高い可能性もある。
 低めに見積もった方が物価は上がりやすくなるから、そうしたのか。解除を正当化したいから、インフレリスクの可能性をわざわざ講演に盛り込んだのか。やりたいこと(解除)がまず先にあり、それに都合がよいように数字を舐め、「物価安定のため」という目的がもっともらしくなるようにインフレリスクをわざと盛り込んだのなら、罪深いと思う。
 半年後、一年後のことは誰にも分からない。逆算型で理論武装する日銀が結果的に賭けが当たるかもしれないし、外れるかもしれない。来春の解除をめぐっては、場合によっては政府・日銀は対立する可能性が高い。そのとき日銀は大義を訴え、政府はその判断は間違いだと反論すればいい。どちらが正しいかは、その後の経済・物価情勢が証明する。日銀が間違えたら二度目となり、法改正論議が浮上しても仕方ない。今の与党は強いから、もしかしたら本当に改正されるかもしれない。
 私としては、そうなって欲しくないからビハインド・ザ・カーブの政策運営が望ましいと思っているわけだが…。
 
by bank.of.japan | 2005-11-14 22:36 | 日銀 | Comments(4)
Commented by ラスト何マイル? at 2005-11-15 00:15 x
中川政調会長は「政策手段について日銀の独立性は認めるが、政策目標は常に政権と合致させていく必要がある。それが分からなければ日銀法改正も視野に入れなければならない」と発言されたそうですが、現在の政策目標が日銀法2条の「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」だと理解するなら、そこには本来、日銀の独立性もなければ時々の政権との合致もないのだと思います。
ただ、「物価の安定」についての日銀的解釈が、余りにも立法趣旨とかけ離れていると立法府が判断するのであれば、法改正によって政策目標をより明確化しようとすることは、決してご無体な話ではないと思います(いずれにせよ、その時々の政権に合わせろというのは無茶だと思いますが)。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-15 00:38 x
ラストさん、どうもです。前段部分がちょっと分かりにくいのですが、中川会長の言う「政策目標」がもう少し具体的に示されたら、議論のしようもあるのではないかと思った次第です。結果的に日銀法第二条に沿うなら、何も法改正とまで言う必要はないと思います。私が思うに、解除の時を迎えたとき、「物価は安定しているか、そして安定しつづけるかどうか」が争点になるのではないかと推測します。
Commented by gogogogo5555 at 2005-11-15 09:29 x
何人かのアナリストが指摘するように、仮に潜在成長率が2%+だと仮定すると、来年度は日銀の予想する成長率+1.8%では需給ギャップが拡大して、インフレどころか再びデフレに逆戻り?に。。。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-15 11:41 x
gogogogo5555さん、どうもです。成長率と需給ギャップが物価に与える影響が実際問題としてどの程度の相関性があるのか私にはわかりませんが、理屈の上ではご指摘の通りだと思います。
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