人気ブログランキング |
何気に量的緩和が総括されている件について
 「展望リポート」ネタが続いて恐縮ながら、表題の通りであります。詳しくはリポートの「金融政策運営」をお読みいただくとして、まとめると以下の通り。
①潤沢な資金供給(量的緩和)は金融不安が強い時期に大きな効果を発揮
②時間軸効果によるゼロ金利継続予想は長めの金利を低位安定させた
③今や金融不安は後退し、時間軸効果も徐々に後退。量的緩和の経済・物価に対する刺激効果は、次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になっている

ポイントは③で、要は量的緩和の「量」が物価・経済に与えた効果については、それを書かないことで否定している、わけだ。私としてはきちんと書いて否定して欲しいのだが、明記してしまうと将来の緩和手段を無くしてしまうので、万が一の退路は多少でも確保したかったのかな、と邪推してしまった。

山のような疑問があるのは①である。
・景気判断前進と同時の昨年1月の3兆円増額は一体何なのか。金融不安があったのか(数字訂正・すみません)
・知り合いのメガバンク(複数)の資金関係者らは預金超過に転じて以降は「資金繰り不安はなかった」と証言している。一体どの銀行の資金繰りが不安だったのか。
・仮に一部の銀行の資金繰りに不安があったとして、それを救済するためにマクロ政策である金融政策を使って良いのか→金融政策を隠れ蓑にした利益供与の疑い?
・上記に関連するが、そういう局面では金融政策を発動するのではなく、LLRで対応すべきではないのか
・「金融不安が強い時期の金融機関の流動性需要に応えることで」と書いているが、それならば当座預金を多く抱えている銀行ほど資金繰りが危ないことになるが、そうか
・長めの資金供給オペに積極応札する銀行ほど資金繰りが危機的なのか
・政策委員会に金融不安の恐れを報告したのは誰か。考査局長(現金融機構局長)は金融政策決定会合に出席していない。金融市場局長が代わって報告したのか。だとしたら、金融政策運営上の重要情報を握る考査局長を出席させる措置を早く取るべきではなかったのか
・それとも通常会合で金融不安の恐れが報告されたのか。だとすると、その議事要旨が公表されないのはおかしい
・各金融機関の資金繰りをモニタリングする金融課(課制廃止で現在は課ではなくグループ)が金融政策運営上重要な役割を果たしたなら、なぜプルーデンス側に放置しているのか。
・金融課を金融市場局に戻すと「営業局」復活と言われるのを恐れているのか
・金融不安の台頭を未然に防止するために量的緩和を強化する決断を下せたのなら、デフレに再び陥るのを絶対に阻止するためにインフレリスクを許容するぐらいはできるのではないか
・そもそも量的緩和の強化は「追加緩和」だったのではないか
・仮に将来量的緩和をやるときは、金融不安対応だと明言してやるのですね

まだまだあるが、きりがないのでこの辺で。かなりマニアックなからみが多いので、興味のない方は無視してください。
by bank.of.japan | 2005-11-03 00:13 | 日銀 | Comments(20)
Commented by 忘れな草 at 2005-11-03 01:51 x
これらの質問に対する答弁書作成の仕事は、企画サイボーグへのとても良いエサになると思います。政治家の方から、こうした質問を投げてもらいたいものです。政治家にとっても良いエサになるのではないでしょうか。
Commented by 馬車馬 at 2005-11-03 05:56 x
では私は2点目に対する疑問点を。
『金融市場では、潤沢な資金供給により短期金利の水準がゼロとなるとともに、物価の小幅下落が続くもとでは、上記の「約束」がゼロ金利の継続予想を生み出し、長めの金利が低位安定的に推移してきた。』とのことですが、結局彼らは潤沢な資金供給がいわゆる時間軸効果を生んだとのスタンスなんでしょうかね?「サイボーグ」様が意図的にぼやかした結果の文章なのかそうでないのか、ちょっと私には分かりかねるんですが。

常識的に考えれば、「物価が上昇するまでゼロ金利政策を継続」と言っても、全く同じ時間軸効果が得られると思うのですが。(更に意地悪く言うならば、そもそも日銀がこの約束を守るという保証がない=コミットできていない以上、この約束が時間軸効果を生んだという事も必ずしも自明とは言えないわけですが。その辺りのコミットメントの問題はこちらのブログでもちゃんと書こうと思いつつ、既に一年が経過しました・・・)

もし当座預金を積み増した事自体が時間軸効果を生んだと考えているなら、その理由をぜひ聞いてみたい気がします。
Commented by 馬車馬 at 2005-11-03 07:30 x
・・・というか、その辺りをあいまいにしたままなのが日銀最大の問題(のひとつ)なのかもしれませんが。
Commented at 2005-11-03 13:31 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by dosanko at 2005-11-03 17:08 x
うーんちょっと意地悪すぎるのでは? 昨年1月の増額は当時の巨額介入支援だったことはみんな知っているけど、かつての不胎化非不胎化論争もあって、そこは日銀としては言うわけにはいかないわけですから・・・。じっさいその後はドル安もとまったし、政策は結果がすべてですから、うまくいったことにいちゃもんをつけるような言い方はどんなものでしょうか。
Commented by 忘れな草 at 2005-11-03 21:47 x
結果オーライはpoliticsの終着駅かもしれませんね。おそろしく寒そうなところですけど。
また、そもそも「うまくいった」かどうかはわかりません。例えば、「…をやっていれば、もっと早くCPIはプラスになったはずだ」とか(…には「インタゲ」「ゼロ金利+時間軸」とか何でもお好みで入れてください)、いくらでも政策の結果をこき下ろすことができますし。
Commented by dosanko at 2005-11-03 22:18 x
日銀への政治的圧迫は格段に減り、福井総裁への外部からの評価は格段に高まり、日銀こき下ろしの声は格段に減ったのですから、十分に「うまくいった」と思いますよ。だからこそ、また以前の状況に舞い戻らせかねない最近の福井総裁の動きに驚いているわけです。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-04 00:08
忘れな草さん、どうもです。私と発想が近いですね。企画サイボーグ諸氏は優秀ですので、私の絡みなど軽くいなすような気もします。政治家で絡めるのは民主党の大塚氏でしょうかねえ。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-04 00:09
あっ、民主党は早期解除派だったかあ。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-04 00:19
dosankoさん、どうもです。恐らくマーケットの一般的な見方がdosankoさんに近いように思われます。ロジカル面は綻びだらけですが、機動的政策運営が政財界の評価を高めたのは確かです。最近の出口政策は危なっかしいのもご指摘の通り。今後は「運がいいかどうか、に尽きるような情勢で、私としては「good luck」としか言いようがないですね。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-04 00:28
馬車馬さん、ご無沙汰です。「時間軸効果」はもちろん、CPIへのペッグによるもの。量を増やしたことを「時間軸効果」に関連付けるなら、「時間軸効果の補強」という意味合いだと思います。どういうことかと言うと、量を増やせば増やすほど解除は難しくなるため、CPIペッグを反故にする可能性がないことを訴えられる、というもの。昨年1月の追加緩和に関し、日銀幹部は「手足をより強く縛ることで時間軸の公約を守る姿勢を強調できる」と説明していました。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-04 00:37
この説明はしかし、非常に倒錯的であり、私はこの幹部に「時間軸の公約は守って当然のもの。補強する必要性があるものではない。補強する行為そのものが信任に自信がないことを露呈しているのではないか。そういう説明は狂っているように思える」と反論した記憶があります。例えは悪いですが、ドロボーが「二度と盗みません」という約束の堅さを証明するため、自ら指を折ってみせるようなものでしょうか。日銀はしかしドロボーではなく、まっとうな組織ですから、政策委員会の「決議事項」である時間軸の公約は、決議だけで十分なはずなのです。
Commented by システム5.1 at 2005-11-04 16:05 x
ここに書き込むのが適切かどうか分からないのですが...。足元、債券市場では、量的緩和の早期解除観測が盛り上がり、中期債利回りが先行して上昇。さらに、世界的なイールド・カーブのフラット化傾向などもあって、15年変動利付国債が急落しております。監督官庁からは、一昨年、昨年の債券相場急落を通じて、「ポートフォリオの平均年限の短期化、15年変国へのシフト」等を指導されたところも少なくないと聞きます。緩和が解除に向かう際、基本的にイールド・カーブは(ベア・)フラット化するのが常。それを想定しなかった投資家の自己責任であるのですが、何とも釈然としない感じが残ります。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-04 16:16 x
今日は債券が荒れてますね。システム5.1さん、どうもです。解除がビハインド・ザ・カーブなら、ベアスティープしていくような…。早期解除観測の台頭は対話(モノローグ)の弊害ではないかと。日銀がこの状況を見て市場が出口を用意したと思ったりすると茶番ですね。ALMの投げ、まだ出ますかねえ。
Commented by システム5.1 at 2005-11-04 16:28 x
いわゆる「地均し」がなければ、ここまでの急速なフラット化はなかったでしょうね。茶番という意味では既に、「自作自演」が行われているように感じます(笑)。投げが出るかどうか...、まだ、本格化していないと考えられるだけに、ちょっと恐い気がします。
Commented by 馬車馬 at 2005-11-05 08:04 x
どうもご無沙汰しておりました。書き込みたいネタはいくつもあったのですが、最近は自分のブログのコメント欄すら管理しきれない有様でして・・・。
その幹部氏のコメントが本気なのか、上の意向に合わせるためのこじつけなのかは分かりませんが、どちらにしても苦笑するしかない説明ですね・・・。「手足を縛る」ことと「時間軸の公約を守る」ことの間に全く論理的なつながりがありません。おっしゃるとおり、「ホントにやる気なら根性見せろ」と言われて刺青を彫るくらいに非論理的です。ぎりぎり好意的に解釈しても、積み上げたブタ積みを解消するのに3ヶ月以上かかることはないでしょうから、ブタ積みが3ヶ月以上先の時間軸効果をコミットすることは出来ないはずです。
結局、ブタ積みは「予想外の資金需要のせいで(intradayで)金利が上昇する」リスクを抑える、という以上の正当化は不可能ではないかと思います。
Commented by 馬車馬 at 2005-11-05 08:30 x
それから、dosancoさんと忘れな草さんの議論についてですが、私が「厳密にはどの政策に意味があったのか」にこだわり、結果オーライをよしとしないのは、その点に今後の金融政策を考える上で重要な問題が含まれているからです。
例えば、ブタ積みに時間軸効果に対する効果があったとするなら、ブタ積みの縮小は(どのような理由であれ)金融引き締めと解釈すべきですが、もし効果がないならブタ積み縮小は「技術的な問題」として無視できますよね。この判断があいまいなままだと、日銀のアクションに対する解釈もあいまいになってしまいます。
だからこそ、この曖昧さが「日銀最大の問題」だと思うわけです。そもそも、ボード内で未だにコンセンサスが取れていないようにも見えますが・・・何年かければ気が済むんだよという思いは正直あります。
Commented by dosanko at 2005-11-06 01:57 x
福井総裁になってから、速水総裁のころからの政策方針を事実上大きくかえてしまったけれども、そこを厳密に「総括」しながらやるのもいろいろ軋轢があってたいへんなので、やらないでその場しのぎできた結果、あとになってみると結構な矛盾やほころびが出てしまったということだと思います。ただ私としては、一貫した論理に殉じて討ち死にするよりは、多少の矛盾があっても結果を出していく方が何倍もいいと思っているので、矛盾をあえて問わないというのもありかなと思っているわけです。
Commented by bank.of.japan at 2005-11-07 01:00 x
馬車馬さんのご指摘は、山口前副総裁が昨年夏のインタビューで主張したこと(解除する際にきちんとした量的緩和の総括が必要)とほぼ同じですね。本当に景気が良くなり、物価が上がると思うなら、軋轢があっても「総括」した方が政策運営上、禍根を残さない、つまり市場との対話も円滑にいくと私は考えています。dosankoさんのご指摘も心情的には理解できるのですが、狙った「結果」が対外的なパフォーマンス向上の側面が大きいと、これは単なるウケ狙いとも受け止められ、市場にとって日銀は政策運営の予測が難しい中央銀行と化し、期待形成の面でマイナスに作用する恐れがあるのではないかと心配しております。
Commented by 総括 at 2005-11-08 02:15 x
これまでの動きをみる限り、マーケットは、BOJのことをそれなりに良く理解しているような気がします。少なくとも、政策運営の予測が難しい中央銀行とは考えていないのでは(笑)。
<< “マネポ”に非ずんば人に非ず “全体として”の余裕とは=日銀... >>


無料アクセス解析