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読み物紹介の続き=NHK特集と『大本営参謀の情報戦記』
 このエントリーは8月24日の読み物紹介の続きである。その中で取り上げた『大本営参謀の情報戦記』を読んだ方向けの内容なので、関心の薄い方はパスしていただきたい。
 先の週末、NHK特集「私は日本のスパイだった-秘密諜報員ベラスコ」(1982年作の再放送)を見た。この番組の記憶はなく、興味深く視聴した。ここで話題にしたいのは、この特集ではない。特集の中で、戦時中の情報戦について証言した一人の元陸軍高級将校についてだ。「陸軍、海軍、外務省などそれぞれバラバラだった」という趣旨の厳しい反省の弁が聞かれ、その瞬間は「なるほどなあ」と思っただけで漫然と聞き流した。
 その後である。そういえば、堀栄三元少佐が大本営情報参謀の経験を書いていたなあ、と思ったのは。証言した人は確か「有末」と言う名で、テロップでは大本営陸軍第二部の部長になっていたような…。というわけで、さっそく『情報戦記』を調べたところ、出ていた。「有末精三第二部長」、この人であろう。問題は人物像である。以下のやりとりがあった。
 ドイツ課に配属間もない堀少佐。いきなり有末部長から「明日からソ連戦況を担当せよ」と命令される。地名すら知らず、自信のなかった堀少佐が「もう少し時間が欲しい」と恐る恐る答えたところ、有末部長は激怒。「何を!そんな奴に参謀の資格はない!」と一喝したうえ、堀少佐の参謀肩章をつかみ、肩章は留め金が飛んで引きちぎれそうになった。
 堀少佐はこの出来事を描写した後、「大本営は陸軍の秀才が集まる。秀才はこんなとき、分かった顔で引き受けるのか。目から鼻に抜ける人間が天下の秀才なのか。嘘でも丸めて本当のようにしゃべるのが大本営参謀か。しかし、そうらしい」と記している。
 堀氏の戦記が出たのは平成にかけてのころ。従って、特集を生で見た人には有末氏の大本営時代の感じは分からない。私はたまたま戦記を先に読み、偶然にもその登場人物を再放送の中に発見したわけで、その意味でも味わい深い番組となった。職業上、ちょっと思ったのは、当時番組を作成する際、戦時中の情報戦に誰が詳しいかといったとき、有末氏はその筋の第一人者とマスコミからみなされていたのだろうか、ということ。堀氏ならもっと違った証言になっていたはずで、それを想像するのもまた味わいを深める。もっとも、貴重な情報がたくさん集まっていたのに、有効に利用されなかった、利用する方法論がなかった、という結論に変わりはなく、スパイ組織のチーフだったベラスコ氏もそれを激しく嘆いていた。
 ところで、秀才が集まるところは日銀も同じ。目から鼻に抜ける秀才、嘘でも丸めて本当のようにしゃべる秀才は…。いないと言えば嘘になるかな(笑)。
 
by bank.of.japan | 2005-10-05 00:58 | ブログ紹介・お知らせなど | Comments(0)
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