人気ブログランキング |
生産性上昇の暗部=悲惨な鉄道事故で思うこと
 以前、ユニットレーバーコスト(ULC)の低下について、生活の安全上も問題があるのではないかとのエントリーを書いたことがある。同じ思いの方が多かったようで、タクシー事故の経験談など比較的多くのコメントをいただいた。今回の鉄道事故の原因究明はこれからだが、背景的な要因として秒単位で列車運行を管理される運転士の厳しい労働環境などが伝えられる。
 マクロ的に生産性が上昇している場合、それ自体は経済的にはポジティブに受け止められるが、工場での事故が目立つことなど考えると、悪い生産性上昇の側面が大きい気がしてならない。日銀が5年前のゼロ金利解除に先立って「デフレ懸念の払しょく」の定義に関連して、良いデフレ・悪いデフレ論を展開したことがある。この場合、技術革新や流通合理化などに伴う物価下落は良いデフレ、需要低迷によるものは悪いデフレと定義され、当時はITバブルではあったが景気が急回復していたので、日銀は前者の要因が大きいとして利上げに踏み切った。
 これと似たことはやはり生産性の上昇にもあてはまるだろう。理想的には、労働条件は一定の下、技術革新や無駄を削ることで生産性が上昇するのが好ましい。中にはそういう優れた経営を行う企業もあるだろうが、現実的には合理化の逆進性というか、組織内の弱いところ(得てして現場)に合理化の圧力がかかり、表面上は生産性が上がっているような気がする。労働分配率の低下もマクロ的には必要な修正だが、修正圧力は社会的弱者、会社内弱者、年代的には若年層に向かい、希望格差社会を招いている側面が強いと思う。
 政府・日銀は景気は踊り場を抜け出し、持続的成長軌道に乗るとの見通しを示しているが、私がこれに懐疑的なのはマクロ統計上のポジティブな動きが、ミクロ的には事故の多発や労働環境の悪化など社会基盤が弱体化しているように思えるからだ。それとも実は世の中は良い方向に向かっており、私が悲観的に過ぎるのだろうか…
 追記 こんな思いを深めるのも、私の友人である石川さんのコラム「欧州便り」(カテゴリーを参照)も影響している。彼は欧州(デンマーク在住)で為替の仕事をしているが、彼がデイリーの市況にときたま書くコラムをこのブログで紹介させてもらっている。デンマーク人に限らず欧州人の仕事ぶりは日本人からみていい加減、そんなんでいいの、という感覚だが、むしろ個人生活を犠牲にしやすい日本人の方がおかしいのかもしれない。欧州も日本も財政は放漫化(原因は違うが)しているが、生活ぶりがこうも違うのは、価値観の違いを思い知る。国民性の違いだと言ってしまえばそれまでだが、ULC低下が貧乏ヒマなしに感じるのは何か変だ。海外から帰国したとき、電車が時間どおりに運行されているの様子は感動モノなのだが、それを維持するのに安全が犠牲になる面があるのなら、多少運行がずれるぐらいは許容された方がいい。それが許されないほどみながセカセカ働かないといけないなら、暮らしは貧しくてもゆとりがあった方がましなような気がするのだが。
by bank.of.japan | 2005-04-27 22:44 | 経済 | Comments(0)
<< 展望(願望)リポート、来年度は... 財政諮問会議『21世紀ビジョン... >>


無料アクセス解析