官邸経済政策コンファレンス(2004年1月14日)をネットで傍聴していたとき、妙に記憶に残っていたのが林文夫・東京大学教授の法学部批判。関係資料を探していたら、議事概要に発言要旨が残っていた。引用すると
「改革の処方箋は立派なのに改革は進んでいない。(総理が)自分の言葉で話されるほどのパッション(情熱)があるのに、このような人でも進まないのは官僚制度のためである。特に経済官庁の役人に問題がある。法学部に入ってケーススタディばかりやっている者が(政策を)運用しているからおかしくなる。少なくとも経済学の知識があるものが90年代に入って不良債権問題にとりくんでいれば、もっとましな結果になった。役人の生涯所得のうち相当の部分が天下りによって得られている事実がある。これでは、利益保持をすることがインセンティブになる。日本の役人はIQ が高いが、誤ったインセンティブの上にのっていると、悪知恵の能力が高いということになる。改革のためには、遠回りかもしれないが公務員改革を行なう必要がある」 実際はもっと厳しい言い方だったように記憶する。うろ覚えだが、「トンチみたいなことを一生懸命勉強している」とか、「国際会議に出ても経済の知識がないから通用しない」とか。何か強いトラウマようなものを感じさせる口調でもあった。 日銀の場合、審議委員制度になって企画局など経済学部が優勢になったと言われる(最近、中堅は法学部が多いが)。文学部出の私から見て不思議なのは、日銀にはリフレ派教授の教え子達もいるのに、リフレ派の主張(インフレターゲットなど)に同調しないこと。もちろん、理論はともかく日銀ではまず実務が重視されるからだが、それにしても学界リフレ派との距離が遠いのは残念な気がする。実践的金融政策論なるものは学問的には認められないのかなあ。どっかの大学がやったら多少は人気出そうな気もする。 以前のエントリでは揶揄的に経済学部と法学部の比較をしたが、日銀幹部らと話していて学部の違いを感じたことは実はほとんどない。いずれにせよ実務ベースで議論を展開しないと話にならないし、そうなると学部の違いなど基本的にはどうでもいいわけだ。林教授の法学部批判は分からないではないが、それ以前に教授が同コンファレンスで問うたプライスレベルターゲット(中原伸之前審議委員が提案していた)を日銀がなぜ採用しないのかという、経済学内での相違の方が興味深い。伝統的に日銀は学界とはなじみが薄い存在なのだろうか。別に法学部が日銀を支配しているようには見えないのだが。日銀法という法律を法学部出が作り、それによって政策が制約されている、というわけでもないしなあ。
by bank.of.japan
| 2005-02-25 21:50
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Comments(3)
東大法学部を卒業したものです。
実態は林教授の指摘よりももっと悪いです。 林教授の「ケーススタディ」というのが何を指すのかわかりませんが、法学部の学生が受けるトレニーングは「現在の法律を所与として」というものばかりです。ところが、行政職により必要な、「ルールはいかにあるべきか」というフレームワークのデザインの教育はほとんどありません。 合理性が失われた既存のルールに固執し続け自縄自縛になるというのが法学部の思考・行動パターンの一つの欠点です。そういえば総裁も、比較的頭はやわらかいほうだとはいえ、法学部出です。
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学部に限らず、ルールのあるべき姿を改めて柔軟に考えるのが苦手な面がわが国の特性かもしれません。私の所属するマスコミ(マスゴミと言われているようで面目もない)も旧態依然でして…。ところで福井総裁ですが、法学部出にしては、頭の柔らか過ぎる政策運営ぶりに見えるのですが(笑)。昔の印象からすると、別人になって戻ってきたような。在野時代、一度インタビューしたことがあるのですが、「量的緩和」という言葉を使ったら、「誰がそんなこと言っている。日銀はそう言っていないぞ」と怒られたことがあります。あの福井氏と今の福井氏のギャップにどうも悩むのですよ、私は。
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