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金融市場パネル第12回議事概要(野村総研)=今回は話題多し
 日銀の宮尾審議委員もメンバーだった「金融市場パネル」(野村総研主催)の第12回の議事概要が公表された。場所はこちら(pdf)です。臨時会合(8月30日)の翌日に開催されるというタイミングの良さから今回は話題てんこ盛りであります。
・参加者以下の通り。
内田和人(三菱東京UFJ 銀行企画部経済調査室長)
加藤 出(東短リサーチチーフエコノミスト)<欠席>
高田 創(みずほ証券金融市場調査部長)
根本直子(スタンダード・アンド・プアーズ社マネージング・ディレクター)
福田慎一(東京大学大学院経済学研究科教授)
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科准教授)<欠席>
渡部敏明(一橋大学経済研究所教授)
井上哲也(野村総合研究所金融市場研究センター主席研究員<オーガナイザー>)

・各発言と感想
<追加緩和について>
福田氏 国際協調の面でも、日本銀行が金融政策決定会合を開いた直後に、米国がFOMCで緩和姿勢を示すというように、日本に不利に回っている…
→と言っても、会合をそろえると、日銀はTOKYO連銀と化してしまうわけで。
高田氏 海外では、金融政策を巡る議論の焦点は量的緩和にある。しかも、中央銀行のバランスシート規模の変化に基づいて、金融緩和度合いを判断する向きが多く、…、FRBは、こうした考え方が存在することを前提として、金融市場に対して金融緩和姿勢を上手くアピールすることができているのも事実…
→決定的なのは、日銀はアピールが下手である、ということ。
根本氏 日銀が8月中旪の金融政策決定会合では情勢判断を変えず、かつ金融政策を情勢判断に基づいて運営する枠組みを維持するのであれば、ここへ来て追加緩和に踏み切った理由が分かり難い。
→いわゆる「第二の柱」による緩和発動で、「第一の柱」(景気判断)を維持しているため。2本柱の政策運営は日銀内でも分かりにくさが指摘されているところ。
福田氏 日銀の組織には官僚的な側面もあるだけに、金融経済情勢が急に変化した場合も、情勢判断を柔軟に見直すのが難しい面があるように感じられる。
→官僚中の官僚と言われることもある。
渡部氏 市場が政策運営にとって意味のある情報を発信していると考えるのであれば、もう尐し機動的な対応を可能とする仕組みを作っていくことも必要…情勢判断における実体経済のウエイトが大きいことによるのかもしれないが、楽観の方向にややバイアスがかかりやすいように感じることもある。
→前段は円環性の問題をはらむかも。後段は然り。
内田氏 FRBは、経済指標の悪化に呼応する形でダウンサイドリスクに関する言及を徐々に増やしたり、政策手段が限定的という日銀と同様な制約の下でも、これらの活用可能性を明示的に示すことで、市場の安心感を引き出すことに賭けたりするといった機動的な対応を採用している。
→日銀には真似できない芸当。FRBはそれで失敗リスクもある。多分、日銀が真似ると気持ち悪いかも。
高田氏 現在の日銀の情勢判断は、「景気回復」を前提にしていることがポイントであり、だからこそ、新興国の経済拡大に伴う恩恵といった要因を強調しないと、シナリオの整合性を維持できなくなっている面も…
→鋭い。
福田氏 かつては、日銀の審議委員の中にも、執行部とはかなり異なる意見を発信されていた方がおられた。日銀の執行部がフラストレーションを感ずる機会もあったかもしれないが、こうした意見発信がなかったら、例えば、量的緩和は実現したかどうかも考えてみるべきであろう。ただ、現在は、審議委員の間で意見の著しい相違はみられないように感じられる。
→タカ・ハトの分布が狭い(モノトーン化)ことのデメリットはある。
<成長基盤強化オペについて>
根本氏 地域金融機関の中には、成長基盤資金オペへの対応に苦慮する先もあり、顧客企業が来年計画していた投資案件を前倒しして実施し…
→まあ、色々言われております。
内田氏 日本では、1998年以降、度重なる円高圧力の中で日銀が対策を繰り返したが、結果的には、金融市場での資金偏在を助長したし、民間金融機関もこうした歪みを深刻化させた。成長基盤資金オペも、銀行貸出に依存するだけに問題を共有している。本当の意味で「経済成長の基盤」を作るには、スタートアップ企業の資金需要を満たす必要がある。政府や日銀がこうした企業を対象とする投融資ファンドに資金を供与するといった抜本的対応が求められる。逆に、キャッシュフローが予見しうる段階の企業になれば、政策措置がなくても、銀行は容易に貸出を実行できる。1970年代の米国は今日の日本に似た課題を抱えていたが、1981年のERISA法によって年金基金によるベンチャーキャピタル投資の道が拓かれ、1991年の中小企業技術革新制度(SBIR法)で政府によるベンチャー企業への開発委託と開発製品の買い上げ等ベンチャー企業を発展させる基盤作りが着実に進められた。日本でも、こうした政策措置と一体で資金供給するならば、より確実に「成長基盤」の整備に結びつく。
→堂々の正論。
by bank.of.japan | 2010-09-06 20:50 | 日銀 | Comments(0)
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