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「バジョットルール」と「流動性の罠における金融政策」に関するコーン副議長の見解
 FRB首脳陣が興味深いスピーチを行っている。シカゴ連銀・エバンズ総裁の「The Great Inflation 2.0 Debate」はデフレ懸念vsインフレ懸念の論点で面白いのだが、ここではコーン副議長のコメントを取り上げたい。オリジナルのテキストはFRBのこちらだが、Calculated Risk「Fed Vice Chairman Kohn on Monetary Policy」がポイントをまとめてくれているので、それを使います。金融政策ウォッチャーの方々はぜひオリジナルのご一読を。
 コーン副議長のコメントは、コロンビア大学のRicardo Reis教授の論文に反論したものと思われる。Ricardo教授は、日銀マンらによると、マンキュー教授の有力な弟子で、学界では若手ホープの一人のようですね。教授の論文には当たっていないのだが、コーン副議長のコメント内容から察するに、FRBに対しては以下の二点を指摘ようだ(違っていればご指摘を)。
①流動性対応はバジョットルールをかなり逸脱して財政当局への依存を余儀なくされ、中央銀行としての独立性が損なわれているのではないか
②流動性の罠における金融政策として高めのインフレーションターゲットを採用すべきではないのか
 手抜きで恐縮ながら、Calculated Riskが太字で強調した部分などからコーン副議長の見解を簡単に。
①について「金融危機における我々の流動性対応は、いずれもその中味は前例のないものだが、バジョットルールにほぼ沿っている。我々は、適格な担保を取って資金を融通しているし、適切な掛け目を設定している。危機を通じて我々が負ったクレジットリスクは非常に小さい」(バジョットルールは後述)
②について「流動性の罠に陥った際の金融政策は、理論的には高めのインフレーションターゲットを設定して景気が回復してもある程度続ける、というもの(リカードの認識ではそうだ)。だが、モデルの世界はともかく、現実にはインフレ期待の安定化を図るのは難しい課題であり、(物価の)安定性を当然のことと思うべきではない。中期的に一時的に高めのインフレを狙う政策は、望ましい期間を超えてインフレ期待を変化させる可能性があり、そうなったらインフレ期待を元に戻すコストは非常に大きいものとなろう」
 この見解をバーナンキ議長も共有しているかどうかは不明だが、インフレターゲットに否定的な考えとしてはかなり踏み込んでいるのではないかと思った。

バジョットルール=金融危機時でも、①優良な担保を前提に、②ペナルティレートで、③あくまでも健全な銀行を対象に流動性を供給する。
 まあ、実際はルールを突破しているんじゃないか、というのが大方の見方でありますが。それに財務省のバックアップがあるにせよ、結果的には国債も買っており、財金融合状態ではないかとも思われる。日銀もバジョットルールをやや踏み外しているんじゃないだろうか。
by bank.of.japan | 2009-09-11 21:54 | FRB&others | Comments(4)
Commented by PK at 2009-09-12 09:09 x
日本とアメリカは違う。
インタゲ論は、日本ではもう止めてほしい。
財政政策を実際にやったよりも少し多く、需給ギャップを少し超えるくらいで7年ぐらい持続すれば良かったのかもしれない
円高にもっていくにしても、もっと漸進的にすすめれば良かったかもしれない。
いずれにしても、もう財政赤字は巨大であるし、円安にして海外をあてにすることも難しい。(韓国のような歴史にも学ばない恥知らずな国がすでに通貨安政策に突っ走っているので、日本が円安政策をとれば、大変な混乱を招くだろう。)
こんな状態で、日本でインタゲ論というのは空しい。
どうせ冒険をするなら、預金課税をしてほしい。
Commented by Cru at 2009-09-13 23:06 x
PK さん。
インフレで実質円安なら混乱少ないのでは?
(それで国際収支の黒字幅拡大するとダメですけど。インフレに通貨安が追従すれば黒字幅はむしろ縮小しそうだし)
Commented by a-kun at 2009-09-14 00:35 x
日米ともに「バジョットルール」を踏み外していると、私も思います。ただ、それよりも深刻なのは、そこまでやってもインフレにならないことでしょう。かつて財政政策が「中立命題」よって否定され(かけ)たように、金融政策無効論まで出てきてもおかしくないかと思います。
もっともそのような具体的な政策の無効が疑われるような状況下においては、中央銀行が物価に働きかける強制力を失っていると考えられるので、インフレターゲット論の前提も崩れていると思います。個人的にこの10年の日本の経験を考えるとき、このように理解した方が素直に納得できてしまう自分がいるのです。
Commented by bank.of.japan at 2009-09-14 22:41
a-kunさん、どうもです。ご指摘に同感するものです。まあ、反論としては、もっと色々な物を買えばインフレになる、というものですが、色々買ったFRBがインフレリスクの否定に躍起でもあり、ある意味、ほどよくインフレにするのが難しい、ということかもしれません。
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