BISのバーゼル銀行監督委員会が自己資本規制の強化で合意した。夕刊では各社報じているが、日銀仮訳のプレスリリースはこちら。予想された通りに優先株が多い邦銀には厳しい内容となったが、取りあえずは景気への配慮がなされたのは一安心であろう。具体的には以下のところ。
「実体経済の回復を阻害しないよう、これらの新たな措置を段階的に導入するための適切な実施基準が策定される」 これが景気が十分に回復して段階的に実施する、という意味であるならば邦銀への影響は大したことはないのではないか、と考えられる。景気が回復していれば株価も安定or上昇基調となっており、ブルマーケットであるならば邦銀の自己資本強化に伴う株式の発行も容易に消化される、と考えられるためだ。 ただ、個人的には今回の資本強化は、欧米監督当局のある種のポピュリズム的な対応ではないか、と思っている。各国とも金融機関に対する公的資金注入は国民から非難されており、特に英米では政権運営が厳しくなっている。金融規制は政治的パフォーマンスとして強化せざるを得ず、行政当局も監視体制が不備であったことが露呈しており、規制強化に動かざるを得ない。逆説的には、監督の失敗を規制強化にすり替えている面もないではない。 邦銀も国際基準行であるなら規制に従うしかないのだが、どうしても窮屈であるなら、いっそのこと国際基準行であることを止めるのも手であろう。国際業務といっても、投資銀行業務で上位を狙うのも非現実的でもあるし、海外業務をやっていないのは少し格好悪いけれども、現地で投融資やっても元々そんなに儲かるわけでもないし、当分海外経済は低成長を続けると思われるので、厳しい規制に耐えてやる意味があるのかどうか。国内回帰して足元を固める、というのも一案ではないかとも思うのだが。 本気で投資銀行業務(国際的なベースで)をやりたい人は、欧米有力投資銀行の本社採用を目指しましょう。 「儲けたい」というのは人間の本質的な欲望の一つで、欲望の総量を規制でコントロールするのは無理があると私は思っている。規制で押さえ込むと必ず規制の抜け穴から欲望が漏れ出し、金融を歪ませるものである。禁酒法でマフィアが増長したようなケースもあるし。いずれ規制が窮屈になれば、再び見直すことになるのではないか。まあ、そんな相場観である。
by bank.of.japan
| 2009-09-07 22:08
| 金融システム
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Comments(4)
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PK
at 2009-09-08 08:43
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欧米の欲望に対する態度には、自分で限度を決めるという発想が無い。
限度は、欲望を持つ他人との力の均衡で決まるというような発想。 こういう奴らと、この先何百年も付き合わなければならないかと思うと疲れがどっと出る。 日本人は力の均衡の当事者になることは、性として向いていない。 冷戦時代は、米ソが均衡してくれて日本は助かった。 危険なことだが、中国をもっと強力にして均衡させるしかないのでは。 最後は結局不毛しか残らないだろうが。 戦前の大日本帝国が生き残っていれば、世界にはまだ選択肢があったのに。
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通行人
at 2009-09-09 22:21
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国外の話より前に、国内の話をしないとヤバイ気がしてなりません。
来年の夏ごろには、信じられないくらい酷い状況になっていると予想します。
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karu
at 2009-09-10 00:46
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BISはビスケットを食わせた米銀はえらいくらいのアホな制度ですよね。バーゼルは常に永世中立であるがゆえに、日和見主義です。多分間違いなく、最高の自己資本を誇る銀行BOCでしょうは人民銀行かな。
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bank.of.japan at 2009-09-10 22:17
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