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山下局長の売手解説は技術論として秀逸
 下の続きで、ゼロ金利を決めた99年2月の金融政策決定会合議事録より、山下金融市場局長の売手に関する解説が秀逸なので、ポイントを紹介したい。売手は従来は先進国では日銀しか持たない独特の吸収手段だが、世界的な金融危機では英、スイス、スウェーデンなどの各中銀が導入。米FRBも売手に相当する債券発行を検討中である。日銀幹部が売手について解説することは滅多にないので、この議事録における局長の解説は貴重であります。以下、山下局長の発言より。

・単純に売出手形(以下、売手)の部分を消したネットのみの供給しているのではなく、売手はそれなりの役割がある。それではマネタリーベースとは何かということだが、銀行券と準備預金、貨幣も含めて考えると、なぜ売手がそれほど迫害視されなければならないのか、と思う。例えば、マネーサプライにおいてM2+CDのCDが一応マネー性を持つなら、売手も準備預金とは違うにしてもマネー性を持つとは言えないのか。調節を行う立場からは無意味な形で流動性を供給しているのではないと認識している。
・売手が差別されているが、売手を行う一方で資産を積み上げるわけであり、売手を出さないことは供給しないことになる。我々は別に売手を打ちたくて打っているわけではなく、0.25%にコントロールするためにぎりぎりのところでやっている訳だ。是非売手を差別することなく、潤沢な資金供給のために必要な措置だと考えて頂きたい。

 解説 当時はまだ量的緩和の前であり、政策金利はプラスであった。ただ、その一方で流動性懸念を払拭するため、「潤沢な資金供給」をアピールもしていた。これは政策運営としては矛盾した面があり、金融調節において何が行われていたかと言えば、潤沢な資金供給がターム物で行われ、その結果として日々発生する余剰資金を売手で吸収し、政策金利(プラス)を維持していたわけだ。この売手が必要とされる構図がまだ政策委員会では十分に理解されてはおらず、局長は一生懸命に解説しているのである。
 潤沢供給が必要とされる場面で政策金利がプラスのままだと、金融調節はどうしても上記のようにツイスト化せざるを得ない。FRBも一時期同様の事態に直面したが、売手がない中でどうしたのか。FRBは潤沢な供給を行う一方、国債売却などを実施してしのいだ。これは資産構成が入れ替わる形で、B/S規模は変化しない。一方、売手があればB/S上は供給・吸収が両建てで膨らむ格好となる。汚い話だが、FRBは吐いて食うスタイルで、売手のある日銀は胃拡張というスタイルである。
 局長はまた、売手のマネー性に言及しているが、これはかなり深淵な議論でもある。利息の付く準備預金=吸収とみなしてベースマネーから除外すると、各中銀は実はベースマネーはさほど供給していない、とも受け止められる。マネタリスト的なアプローチで各中銀の対応を検証する際に、これはかなり重要な論点であろうと思う。10年前にこんな解説があったのは、正直感動物である。
by bank.of.japan | 2009-08-10 18:12 | 日銀 | Comments(6)
Commented by 星の王子様 at 2009-08-10 21:19 x
当時売手の入札に関わることのあったものとして懐かしい思いがしました。日銀や短資会社も当時相当考えて苦労していたと思います。
Commented by asd at 2009-08-11 08:12 x
物価より経済より金利第一の日銀としては至極当然の手段だと思いますね(吸収の是非と関係なく)。
Commented by EURO SELLER at 2009-08-11 20:47 x
あの議事録からして山下局長の説明が一回のエントリで流されるとは思いませんでした。私のざっと読みより売手の説明の一番大事なところをポイントしていただいています。それにしても,三木委員は堺屋長官なみに素人に感じました。(沈黙は金だったかな。)
Commented by bank.of.japan at 2009-08-12 20:12
星の王子様さん、どうもです。なるほど、関係者であったのですね。懐かしい日々です。みなさん、初めての事態に苦労されたと思います。

asdさん、どうもです。まあ、局長の立場としては、政策委が決めた金利水準の死守が義務化されますので…。

EURO SELLERさん、どうもです。まあ、金利プラスにおけるツイスト調節(売手を必然的に伴う)はなかなか分かりづらいとは思います。
Commented by かる at 2009-08-13 00:22 x
そうですね。午前中に予告された債券オペで供給した後に、図にのった某都銀が出しまくってヒンシュクかってた時代でしたっけ。もっと前か。その後怒りの当日オーダー手形オペ3000なんて時代でしたかな。すみません昔の話で色々時代考証錯誤してるかもしれません。
その前の低目誘導かも。でも昔も今も金利と資金コントロールは大変なことです。間違った世論形成は抑えないといけません。
Commented by bank.of.japan at 2009-08-14 00:15
かるさん、どうもです。「怒り」はかの有名な「怒りの積み下」でしょうか。これは旧法時代の末期かもしれません。色々な調節があった時代ですね。
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