ドルに替わる機軸通貨として注目されるSDRだが、本当にそうなのか。この点について、野村総研の井上哲也主席研究員が論点をまとめているので簡単に紹介したい。結論から言えば、現状のSDRは機軸通貨としては不完全で、基軸通貨とするにはIMFを「世界の中央銀行」にする必要がある。議論は「第2次大戦直後のケインズの主張にまで戻ることになる」(井上氏)わけだ。
ポイントは以下の通り。 ①ドル相場に左右されない運用通貨としてSDRに期待しても、それ自体は主要通貨の合成で、だったら運用通貨を分散すればよいだけ。「SDRのウエイトは公表されている上に、SDRの構成国の資産(国債等)は総じて高い流動性を持つので、SDRと同じ通貨構成のポートフォリオを運営することは難しくない」わけだ。 ②米国の金融政策に左右されない外貨資産としてSDRを保有するのも、上記と同様のことが当てはまる。「SDRのように固定ウエイトで外貨準備を運用した場合、景気循環を通してみれば、最大限望みうることはパッシブに価値を維持することである。このこと自体の意義は小さくないが、景気循環の伝播を見ながらダイナミックに通貨構成を変えれば、より良いパフォーマンスを追及しうる」わけだ。 ③先進各国はそれぞれの中央銀行が優れた決済システムを持っている。SDRを決済通貨とするには新たなシステム構築が必要。また「先進諸国の場合、こうした(決済)インフラは厳しい規制の下に置かれているので、これらを国際的な資金決済にも活用することは、決済の安全性や安定性の面で大きな意味を持つ」と考えられる。 ④ドルはFRBが柔軟に供給することが可能。今回の危機においても、スワップを通じて各国にドルを供給することができた。SDRはそれが可能なのか。IMFは出資金の範囲でしかSDRを出せない。「資金は公的資金であるだけに、各国政府は事前に政府予算として議会の承認を得ている。従って、金融危機に対応するためにIMFが既存の枠を超えてSDRを供給しようとしても、円滑に実現する保証はない」のである。 冒頭述べたように、SDRをドル級の機軸通貨とするにはIMFを世界の中央銀行としないといけない。これは超ハードルが高い問題である(というか空想?)。井上氏も言うように「(むしろ)別の国の通貨が国際通貨の地位を得る方が蓋然性の高いシナリオかもしれない」のだ。 まあ、SDRは超マイナーな分散通貨でしかないのでしょう。当分の間は。ケインズが世界通貨を創出しておればまた別だったのでしょうが。
by bank.of.japan
| 2009-07-29 00:25
| マーケット
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Comments(3)
今回のSDR配分は、2500億ドル相当の規模です。
IMFは、SDR配分という小槌を封印してきましたが、小規模とはいえ、一振りした。これは、ケインズのバンコールの精神ですよ。 但し、不均衡に関する規制がない所が、成り行き任せということでしょうか? 井上氏の論点は、2500億ドルの配分決定以前のフレームで分析しています。
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中央銀行同士の通貨交換と、エネルギー食料の先物市場と、各国の決済システムの進化・状況への適応が、注目点だと思います。
日本の大阪化を招く民主党政権に断固反対 アジアの近代化教室の「学級崩壊」を招く、事実に基づかない歴史への政治介入である民主党外交に断固として反対
leonrosaさん、どうもです。世界中銀まで行くのか、まあ個人的にはかなり懐疑的ですが、引き続き基軸通貨動向は焦点となりやすいでしょう。もっとも、世界中銀を目指すにしても、それをバックアップする国家体制(集合体)が機能するのか、ECBみたくなるのか、いろいろ考えるにかなり難しいだろうなあ、とは思いますが。
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