人気ブログランキング |
山河氏の「大機小機」はマクロプルーデンス論として必読=中銀が監督機能を担う問題点
 23日付の日経新聞「大機小機」で山河氏がマクロプルーデンス論のあり方として非常に参考になる論点を提示していた。山河さん、なかなか鋭いご指摘で、感銘を受けた次第です。さて、山河氏の主張だが、これは中央銀行に金融監督の権限を委ねる場合の問題点を整理したものだ。
 現在、米政府は金融監督体制を見直しており、大手金融機関の監督をFRBに委ねることを想定している。このアイデア、中央銀行が最後の貸し手機能(LLR)を果たし、個別の資金繰りもモニタリングしていることを考えると、金融システムにおいて大きな存在である大手金融機関の監督を担うのは合理的にも思える。
 ただ、監督機能を担うことは、金融システム安定の責任をフルに背負うことを意味する。ところが、この責任を果たすことが金融政策運営の目的と齟齬をきたすことがあるわけだ。山河氏が指摘したのはまさにこの点である。例えば、インフレが高進している局面で大手金融機関が破たんしたらどうなるのか。金融システムが不安定化すると、結果的にマクロ経済は打撃を受けてインフレは沈静化するとも考えられるが、実際にそうなるかはよく分からない。
 中央銀行はいずれにせよインフレ高進に対応して利上げして良いのか、金融システム安定化のために利下げすべきか迷うはずだ。場合によっては利下げしたものの、結果的にインフレ率を加速させてしまうかもしれない。一方で、インフレ対応の利上げに踏み切ったものの、結果的に金融システムを一段と不安定化させてしまい、マクロ経済に打撃を与えることも考えられる。
 また、中央銀行は一般的に資産の健全性を重視する存在であり、金融システム安定化のために無担保・無制限の融資が必要な局面でありながらも、これを渋る可能性もある。一方で、無担保・無制限の融資を過剰にやってしまって通貨価値が激しく劣化する事態も考えられる。
 山河氏は結論として、この問題は中央銀行の独立性に大きな影響を与える、との認識を示しているのだが、これはその通りである。

 補足として。海外では盛んにマクロプルーデンスの在り方が議論されているが、これは従来の対応が不十分であったことに対する反省によるもの。一方、日本は既に金融危機を経験しており、マクロプルーデンスは一歩進んだ状態にあると考えられる。ある意味、海外はやっとマクロプルーデンスの重要性に目覚めた段階で、日本に追いつく段階にあるわけだ。従って、海外のマクロプルーデンス論がどういう形になるにせよ、日本は日本のやり方を追求すべきで、必ずしも海外論調に左右される必要はない。心配なのは、民主党が政権を取った場合である。それなりにうまくいっているマクロプルーデンスであるにも関わらず、脱官僚のノリで従来のやり方を台無しにして、海外論調に盲従するリスクがあることだ。民主党の先生、この問題、よく考えた方がよいと思う。
by bank.of.japan | 2009-07-24 23:19 | 大機小機 | Comments(11)
Commented by karu at 2009-07-25 01:19 x
どうでもいいのですが、元受ける側としてMOF険とBOJ考査を二回受けるのはなー政策上の一貫性としてなしでしょ。かたやそれも不良債権処理の厳格化なんてハイって、その後景気悪化した後数ヶ月後に入られ貸し渋りするななんて指導うけて、馬鹿な本部の指示で右往左往する現場は哀れです。景気悪化は現場で起こってるだー。
Commented by bank.of.japan at 2009-07-25 01:31
karuさん、どうもです。ご指摘の件はよく分かります。システム全体は混乱を回避できていても、ミクロの指導がうざくて現場が疲労するパターンですね。天は二物を与えない、のでしょう。
Commented by かる at 2009-07-25 01:37 x
早々コメントありがとうごさいます。このあたりミクロの行動パターン読んだ2当局のすばらしい政策運営期待してます。
Commented by 飛車 at 2009-07-25 04:30 x
民主がどうとかは正直どうでも良いけど、金融政策と、金融調節と、金融行政の区別がちゃんとつく人に、金融政策を語って欲しいなと。心から、そう思います。
Commented by asd at 2009-07-25 10:24 x
金融システムの番人なのかマクロ経済の番人なのか、なぜあやふやになるのかといえば、中銀に対する国民の関心があやふやだからなんじゃないかな、と。
中銀という絶大な権力を持つ機関に対して国民は関心なさすぎだと思うんですよね。
Commented by PK at 2009-07-27 12:40 x
現在の一国の集計バランスシートは、70年代までの借方実物資産:貸方負債資本という素朴な形と違って、借方国債:貸方預貯金が大きなサイズで追加されたバランスシートになっている。
金融技術は、負債資本側に市場を作り出して流動性を生み出すことを目的とした手段の開発が、その本質です。商業銀行制度は、最初の金融技術でした。最近の金融技術が、影の銀行制度と呼ばれるのは、そうした形式の類似性があるからです。問題なのはキャッシュフローの経路がシステムとして安定していないということです。商業銀行は貸出したものを返済させて回収する業務を安定して継続できるシステムですから、預金全体としての流動性は確保できる。ところが影の銀行システムは、そういう手間を省く、努力しない、汗をかかない、汚れない、スマートなウォール街が担っていたわけですから、キャッシュフローは確保されず安定せず、銀行制度の体を成さないわけです。
だから、新しい金融技術が生まれた時に、キャッシュフローの経路が社会インフラとしてしっかりと成り立っているかを監視しなくてはいけないです。

このタイミングでの民主党への政権交代に 断固として反対する!
Commented by bank.of.japan at 2009-07-29 00:27
飛車さん、どうもです。理想を言えば、そう願います。

asdさん、どうもです。確かに中央銀行に関心のない人が大半であろうと思います。
Commented at 2009-08-02 22:22 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2009-08-04 21:06
非公開さん、どうもです。コメント多謝です。こちらこそ、ありがとうございました。
Commented at 2009-08-31 14:04 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2009-09-01 00:09 x
非公開さん、どうもです。貴重なご意見、ありがとうございます。ご指摘のような難しさがはらむと思っております。引き続きよろしくお願いします。
<< シュワルツ女史のバーナンキ議長... 日銀総裁は気軽に「白川さん」と... >>


無料アクセス解析