金融経済ブログで有名なThe Big Pictureがバブル生成・崩壊におけるマスコミ報道の見直しに関連し、テレビ経済番組の矯正方法を提案していた。矯正対象として槍玉に挙がっているのがCNBC。どんな報道をしていたのか、私は事情に疎いのだが、関連のエントリーなど参考にすると、眉をひそめるような煽情報道がかなり目立った感じである(詳しい方、ご教示を)。
矯正すべきポイントを幾つか紹介すると、以下の通り。 ①わめくのを止めろ。(話を)さえぎるな Jerry Springerの番組じゃないんだから。人々の引退生活や資産運用がかかっており、シリアスに取り組むべきだ。 ②滅多に会えない、アクセスのしにくい人物を出して欲しい 例えば、Warren Buffett氏などへの思慮深いロングインタビューは良い番組だ。こういうのがもっと増えて欲しい。 ③リスクについて十分に語れ すべてのトレーダーは潜在的なロスを肝に銘じる必要がある。ストップロスやリスク・リターンについて十分に説明せよ。 ④シグナルとノイズを峻別せよ 日々の動きの大半はノイズに過ぎない。長期のトレンドを見よ。一つ一つのデータやニュースの切れ端、うわさ、などといったものは重要ではない。そういったものをあたかも重要であるかのように取り上げるのは止めろ。 ⑤事実の確認 報道される多くの事象は権威付けがなされるが、大半はジャンクな作り話に過ぎない。事実を可能な限り、チェックしていくべきだ。 ⑥発言に責任を持て 多くの番組で金が失われるような場面がしばしば見られる。ゲスト発言をトラッキングしないのか。連中は万年ブルか、ベアなのか。銘柄選別はどうなのか。信頼できるのか。できないなら、誰がそうか教えてくれ。 ⑦効果音がやかましい。静かにしてくれ 場面が変わるたびにエグイ音が伴うのはなぜだ。テレビゲームじゃないんだ。音を消せ。 ⑧銘柄選別しても大抵負ける これは普通のことだ。そのことを視聴者に教えるべきだ。 ⑨ブルorベアの議論は止めろ マーケットには微妙さと移ろいやすさがあるだけだ。 ⑩視聴者は大人だ 無知扱いするのは止めろ 最後の項目は意訳だが、上記の指摘はことごとく正しい。ただ、The Big Picture氏はプロであり、マスコミにはハードルの高い要求であろう。この手の番組はショー化していた面もあり、ある意味では経済をテーマにした娯楽番組でもあったのかもしれない。上記の指摘は金融的には正しいものの、テレビに娯楽を求める視聴者にはつまらないもので、または売りか買いか、儲かる株はどれか、を指南されたい個人投資家には物足りないであろう。番組として成立するほどの視聴率を稼げるのか、かなり難しいように思う。NHKですらうざいと感じるときがある私自身は歓迎であるが(まあテレビはほとんど見ませんが・苦笑)。 なお、The Big Picture氏は経済マスコミの在り方については強い問題意識を抱いており、上記のエントリーのほか、あれやこれやと取り上げている。こういう動きがあるのは羨ましく思うと同時に、ウォッチしていきたいと思う。
by bank.of.japan
| 2009-06-11 20:58
| マスコミ
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Comments(12)
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grasppmacro2008
at 2009-06-11 22:26
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日本はもっとひどい状況なのではないでしょうか。Paul Krugman著の'Peddling Prosperity'のあとがきで、日本の翻訳者は、
、、、日本には大学教授、政策プロモーターの他に官庁エコノミストという人種がおり、1980年代までは官庁エコノミストが政策立案などの実務を担当してきたという伝統がある。、、、 しかし、この十年ばかりで日本における経済政策の事態は一変した。最大の変化は、二世三世の世襲議員中心となり、(中略)官僚に敵意を持つような政治家が台頭し、政策決定を政治主導で行うようになってきたということである。その結果、官庁エコノミストの立場は急速に失われ、その穴を埋めるかたちで政策プロモーターが成長してきたのである。大学教授が実践の舞台に飛び出すことはせず、政策プロモーターの台頭を押さえることが出来なかったということである。(中略)現実的な政策への大学教授の関心はそれほど高くなく、多くの分野で政策プロモーターが跋扈するようになってきているというのが現実である。、、、 と書いています。もっと自分の発言に責任を持った「エコノミスト」が多く育つことを期待します。なぜなら、Ideas are more dangerous than Vested Interests なので。
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デイトレーダー
at 2009-06-11 22:29
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私としてはこういう経済番組で相場心理学の解説を重点的にしたら面白いと思います。
そういえばトレーダー仲間でも以前話題になったことですが、日銀株の取引単位を1/100にして欲しいと常々思っています。 流動性とボラが出たら結構面白いのではないかと思っています。
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bank.of.japan at 2009-06-12 00:11
grasppmacro2008さん、どうもです。「政策プロモーター」の定義が分かりにくい面がありますが、学界からの実践への関与は期待するところです。野村総研の市場パネルにおける教授陣の意見などは非常に新鮮です。grasppmacro2008さんのご活躍を期待します。
デイトレーダーさん、どうもです。相場心理学はかなり奥が深いような気がします。いろいろある格言がどの程度通用するのか。私も興味あります。日銀株における売り・買い材料がどのようなものか、興味深いですね。
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grasppmacro2008
at 2009-06-12 00:41
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「政策プロモーター」は原書では、'Policy Entrereneur'となっており、文字通り訳すと「政策起業家」になります。また、本文中では、
政策プロモーターは、一般人だけを対象に書き、話す。その結果として、彼らの書くものは、学者的な自制心によって妨げられたりはしないのである。彼らは、学者の間で確定されていないことを非常に明快に説明し、また学者が簡単な答えが見つかるかどうか疑わしいと考えるような問題の答を、いともたやすく提供したりする。 と説明しています。とはいうものの、Krugman自身、過去デフレになった日本に対しては、「4%ぐらいのインフレ率をめざせ!」と提言していたのに、現在は自国に対してはそのような強い主張をしていないのはなぜ?自分自身が政治的になっているような気もします。 え?私?私は別に誰からも注目されてませんし、素人ですから、、、。今回の「Global ZIRP環境」によって「貨幣の本質」がむき出しになるという状況は、ちょっとどきどき、ぐらいしか言えません、、、。
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grasppmacro2008
at 2009-06-12 04:33
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追記です。
1、Krugmanの最近の発言については、本ブログ中で、すでに話題になっていたのですね。新しいネタではありませんでした。 2、「経済マスコミの在り方」を問題提起されていたのに、少しずれたコメントをしてしまったかもしれません。エントリーして頂いている内容を良く読んで、的確に意見を述べる、というのは難しいと思いました、、、。(考え過ぎですかね?)
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PK
at 2009-06-12 05:49
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みのもんたやニュースステーションは、拙いよなあ。
経済は心理的要素が大きいのに、あれは拙いよ。 あと、NHKは完全に国営にして新華社のようになるべきだし、政府の立場を広報する機関になって欲しいし、人民日報などのように国営新聞も作るべきだ。 日本のような政治的力の無い国は、民間の報道だけでは、大国の思うままに操られるだけだ。米国のメディアが民間だというのも、半分は嘘だ。 米国はああいう国なので、ああいうメディアがあるというだけで、政治性は他の国となんら変わりが無いと思う。 元全学連関係も社会的な活動を自粛して欲しい。マルクス主義系の発言を封じると異様に静かになるだろうが、それが日本の知的空間の実力だと思う。
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Teddy
at 2009-06-12 14:08
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今や、愛すべき本ブログのようにオルタナなニュース・視点が、ちょっと努力すればいくらでも手に入ります。大手メディアは本当に苦しいと思います。
でも、大手メディアの人間も、Big PictureのRitzholz氏に復讐できます。 彼の話では(本石町日記で過去に取り上げられているかもですが)、金融危機の解説本を書いたら、「編集上の意見の相違」である大手出版社は出版を断りました。 なんでも、格付会社を「ポン引き-pimp-」と表現したのがいけなかったとか。その出版社はマグロウヒル・・・(なぁんだ、S&Pの親会社ですね)。
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通りすがり@東銀座
at 2009-06-12 15:21
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居間のカウチに寝そべって、リモコンのスイッチ押せばだれもが投資に有益な情報が得られる…。そんなアホなことがあっていいわけがありません。その昔、アメリカの雑誌かなんかで、「今がバブルかどうかを見分けるための手法」とかいう記事に、リサーチ手法の一つとして、「昼間からCNBCを見ているヤツが増えた」なんて項目がありました。見る人が見れば、ちゃんと投資判断に役立つテレビ局なんです。ワタシは好きでした。歴代財務長官からも愛されておりました。ティモシー長官はどうか知りませんが。
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PK
at 2009-06-12 18:35
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椿事件から苦節16年、とうとうやったね朝日ちゃん。
おめでとう! 小沢が反米かってのもあてにはならんね。攘夷派が実は米英の手先だったりするからね。 何事も陰謀論の視点を忘れるべきではない。 米国人は天皇制を残しました。正面には立ちませんよ。
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PK
at 2009-06-12 19:07
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とうとう戦前と同じく、新聞マスコミが政治を仕切る時代になっちゃったね。
読売も朝日も、頭は元共産主義者ですよ。 共産主義者というのは、日本という共同体の外の神様を信仰している人達です。「日本を必ず神の国にしてやろう」と信仰している人達です。 善と正義のためなら、日本人の血も厭わない。むしろ、そうえだってこそ神の国に到達できると信じている人たちです。 そういう時代に入りましたね 尾崎だなんだ新聞記者がのさばる政治よりも、中選挙区制の世襲制の政治の方が、はるかにマシ
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bank.of.japan at 2009-06-12 22:19
grasppmacro2008さん、どうもです。ご指摘のように、貨幣の本質を問うような状況であるのは確かです。管理通貨制度の限界が試されているのかもしれません。grasppmacro2008さん、院生として頑張っていらっしゃるとお見受けし、いずれは政策提言する学者さんになるのではないかと想像しているのですが。方向性、違っていたらすいません。
Teddyさん、どうもです。確かに現状のマスコミルートに乗るのは邪魔できますが、一方でマスコミも凋落しており、マスコミルートに頼らない情報発信が盛んになると、手のうちようはないかもしれません。 通りすがり@東銀座さん、どうもです。なるほど。詳しい情報、多謝です。CNBCも全部がダメというわけではなくて、これは受け手の問題ですね。米国も一般レベルの投資教育が必要ということかもしれませんね。
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PK
at 2009-06-13 02:20
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陰謀論の視点で批判的に考えてみるというのは、
例えば、日本の山村や漫才や小説やいろんなところでハーバード大卒がいることを何故と?と考えてみること あるいは、飲酒運転の厳罰化と飲み屋街の消滅の関係を考えてみること 一体誰が飲酒運転の厳罰化を進めたか?日本国内での推進部隊は? 興行ビザと人身売買の問題を地政学を絡めて考えてみる インフルエンザと人の移動や観光業の問題 小選挙区制、2大政党制、世襲批判・・・・
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