日経金融で英FSAの前理事長、ハワード・デービスがメガバンク復活が本物かどうかに疑問を投げかけている。同調するところは大きいが、コスト削減が甘い、との指摘は考察が必要だ。もちろん、コスト削減余地が大きいのは確かで、それはきっちりやらないといけない。問題は、コストを減らしたからと言って銀行の収益性が劇的に改善するわけではない、ことだ。ざっくり計算で恐縮だが、全銀全体の業務純益が10兆円として、人件費をゼロにしても業務純益は2-3兆円しか増えないだろう。欧米並みの預貸利鞘を確保するには業純を倍以上にしないといけない。収益性向上の面ではコスト削減の効果は知れているわけだ。貸し出し金利が低い意味を本質的に考えていかないと、やたらコスト削減方向にバイアスがかかり、銀行員は「ボランティア」になっていく。別に銀行員の味方をするわけではないが、銀行が儲けられない責任は現場にあるのではなく、経営、行政、マクロ構造に起因すると思われる。
ときどき銀行の支店にいくが、誰もサボっていない、視界に入る行員の多くは忙しそうだ。しかし、待ち時間は長い。これに対し、欧米商業銀行の窓口(私が海外にいたとき)。待ち時間は長いが、空いている窓口は少なく、しかもテラーはちんたら(札勘が遅い)し、ときどき手を止めておしゃべりに興じるやつもいる。少なくとも前線において、邦銀はまともだと思う。 どこぞの銀行では、行員に立って仕事をやらせ、お辞儀の仕方を学ばせていた。そういう報道がしばらく前にあった。行員が座って仕事していたから経営が悪化したのか、お辞儀の角度が足りんかったから、経営が悪化したのか。と、問い詰めたくなった私はおかしいのだろうか。再度言うが、銀行員の味方をする気はさらさらないが、金融改革を進めるなら、もう少し現状分析と実務の積み上げをきっちりやった方がいい。
by bank.of.japan
| 2004-11-22 14:15
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