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ECBの決定を伝える各紙報道についての雑感
 朝日新聞の報道が一番素直で好感が持てた。
別な報道では「これにより日米欧は『量的緩和』で足並みを揃えた」という解釈がなされていたが…。まあ、マスレベルの報道で経済を専門的に知ろうとする人(あまりいないと思うが)にとっては量的緩和だろうが何だろうが、どうでもいいことなので、私も会社が「量的緩和にしちまえばいいじゃないか」と言ってきたら、書く記事がマスメディア向けならそうします。日銀のピュアな量的緩和時代はいろんなロジックが整理されてよかったなあ…。

 それから三菱UFJ証券のリポート(デットリサーチ部シニア債券ストラテジスト、中沢剛氏)がなかなか良かったです。一部引用させていただきます。
 「(トリシェ)総裁は、カバード・ボンドの買い取りについて『量的緩和に乗り出すわけでは全くない』と言明。特定の市場の機能回復を意図した『強化型信用サポート』の一環で、『信用緩和』と言ってもいいと述べた(注:日本のメディアは今回の措置を「量的緩和」と呼んでいるが、明らかな誤り)」
 補足説明も良いです。以下の通り。
 「『カバード・ボンド購入は不胎化するのか、マネー増発で行うのか?』との質問に対する答えとして出てきた説明。不胎化は『出口戦略』とも絡み、非常に重要な問題だと総裁は述べている。ビーニスマギECB理事は4月28日の講演で、『信用緩和』は特定資産のリスクプレミアム縮小を目指すもので、民間資産の購入はその典型、『量的緩和』は市場全般のリスクフリー金利低下を目指すもので、国債購入がその典型と、明確に定義した。ECBがやろうとしている『信用緩和』も最終的に信用創造(→マネー拡大)につながるため、『内生的信用緩和(endogenous credit easing)』とも呼べるとしている。日本のメディアは、欧州で行われているこのような議論とは無関係に今回の措置を『量的緩和』と呼んでいるが、欧州でそのような報道はない。『量的緩和』は定義の問題でもあり、かつての日銀の定義(目標を定めた中銀準備の拡大)なら現在の英・米・スイスも『量的緩和』ではない」
 まさしくその通り。

 ところでカバードボンドとは。日本では馴染みがないので、ピンとこないが、日銀筋によると「ある程度資産の裏付けがある金融債のようなもの」らしい。ABCPと金融債(or銀行社債)のハイブリッドような債券なんですかね。日銀は金融機関債務はほとんど取らない方針なので、似た買い取りは今のところ超ハードル高い。まあ、いざとなれば先祖帰りして極悪非道「いわゆるCDオペ」とか、幻に終わった「金融債(銀行社債)買いきり!」とか踏ん切ればよいのだが…。
by bank.of.japan | 2009-05-08 21:24 | ユーロ | Comments(15)
Commented by 害債 at 2009-05-08 23:46 x
カバードボンドとは、ノンリコースではない資産担保証券(つまり発行体が最終的に責任を持つ)とということで本石町さんのご理解でよろしいのではないでしょうか?発行体の信用補完に加え、担保の価値維持義務があるので格付けはもともと高いものです。これの買い取りはまさに量的緩和ではなくクレジットクランチ(市場閉塞)への対策と考えるべきです。
Commented by 小野(東京都港区) at 2009-05-09 00:05 x
全く関係無いと思いますがゴールドマンサックスのカバードワラント(商品名Eワラント)を
ふと思い出してしまった。一応債券、=ワラント債(新株予約権付社債)だしカバードワラントと
同様「原資産」なんて単語もみられる(汗)。もっともコチラは「滅茶苦茶ボラ(ティリティ)高い」
ってことで一般にはもっぱらとおってますけどね(笑)・・・ほんと全く関係無いよね?
Commented by kamakura at 2009-05-09 00:08 x
「素直」=「盛り上げないで事実を淡々と書く」ということですね。あれを盛り上げようとするとやっぱり「量的緩和」と書くよりないかと。
Commented by bank.of.japan at 2009-05-09 00:46 x
害債さん、どうもです。解説、ありがとうございます。クレジットクランチを解消すべく、個別市場に介入する、という感じですかね。最初は、ユーロ各国の国債を裏付けとするボンドを新たに発行して買うのかな、とか思ってしまいました(笑)。

kamakuraさん、どうもです。真剣に興味持つ人はマスコミをスルーしてネットで情報を取りにいく(それが可能になった時代でもあります)ので、ここは淡々と書いたほうが後もフォローが楽な気がします。本物の量的緩和やったとき、どう表現するのか難しいです。
Commented by PK at 2009-05-09 07:32 x
ネットはコンセンサスをつくるのが難しくて。
2chの「まとめサイト」がそういうものだと思いますが、専門家の人たちのブログを回って、まとめサイトをつくれる能力ある暇人は、大学の院生ぐらいなのでしょうか?
テキスト化をして、リンクを張って、論点と論説とそれへの批判点をまとめておく、というような。
Commented by 通りすがりのエコノミスト at 2009-05-09 09:52 x
おはようございます。
日銀内部でどのような議論がなされているのかを情報収集するために拝見しています。その意味ではこのエントリーは大いに参考になりました。今回のECBの政策変更が日銀の定義するカギカッコ付きの「量的緩和」ではないと解釈し、日銀に対する「量的緩和」の圧力を減じようとする意図がよく感じられます。
でも、ECBの政策変更が日銀の定義する「量的緩和」に当たるかどうかも重要かもしれませんが、日本経済の現状から、ECBも含めて何を参考にするか、何が必要なのか、を考えるのも重要ではないかという気もします。そういう意味ではこのエントリーはあまりに露骨な意図が見え隠れして、参考にはなりませんでした。
お気に召さないコメントであれば、管理者の権限で削除ください。
Commented by 348ts at 2009-05-09 11:28 x
私はこのニュースをみて別の視点で疑問が生じました。
欧州共同体ということなので、どこの国の(金融機関の)ボンドを買い取るかでもめないのかなぁ?という点です。
というか、逆に日英米のような国債買入れに踏み込めなかったために、ある程度ボーダレスに活躍する金融機関のボンド購入にせざるを得なかったのではないかと素人ながら勘ぐっていたりします・・・。

共同体の特定国の国債をECBが購入してしまうと、当該国家の財政ファイナンスをしていると批判されるかも?という考えは、先日の白川総裁の説明とリンクするようで、しかし当の本人に聞けば「ECBとは別です」とそっぽ向かれそうですがw
Commented at 2009-05-09 21:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2009-05-09 22:15 x
通りすがりのエコノミストさん、どうもです。いつもご覧頂き、ありがとうございます。貴重なご意見です。参考にさせていただきます。

348tsさん、どうもです。恐らくは民間格付け等を参考に買い取りしていくと思われます。国の差別化はいろいろ摩擦生みそうですが、民間の場合はまあ何とかなるように思います。
Commented by bank.of.japan at 2009-05-09 22:18
非公開さん、どうもです。ご指摘のような事情があると私も思います。「意義付け」は、わが業界的には当然のサービスながら、専門化していく人々にはむしろ邪魔になりがちな面もあって、難しいです。
Commented by bank.of.japan at 2009-05-09 22:21
PKさん、どうもです。ご指摘のようなサービスがビジネスとして成り立つ可能性があるかな、と思ったりしますが、どうなんでしょう。

小野さん、どうもです。ワラントとはちょっと違うかもしれませんね。
Commented by 元U at 2009-05-10 10:44 x
カバードボンドで調達してたのは…、原資産の債務者は…、マーケットメイカーは…、プライスは…、主な投資家は…。

なるほど、ですね。
Commented by EURO SELLER at 2009-05-10 12:08 x
今回ほど質疑応答に興味が沸いた回は最近はなかったです。あらかじめ発表事項が配布されていないとしたら,その場での質問としては記者の人たちのGJですね。
Commented by 通りすがりの市場参加者 at 2009-05-10 15:55 x
通りすがりのエコノミストさんの強引かつ失礼な論理展開に笑わせてもらいました。

>日銀に対する「量的緩和」の圧力を減じようとする意図がよく感じられます。
トリシェ総裁自身が「量的緩和ではない」と否定しるように事実を述べたのに日銀の意図ですか。

>日銀内部でどのような議論がなされているのかを情報収集するために拝見しています。
bank.of.japanさんを日銀の腹話術人形呼ばわりですね。
Commented by bank.of.japan at 2009-05-11 00:34
元Uさん、どうもです。なるほど、な事情があるようですね。

EURO SELLERさん、どうもです。報道の流れを見る限り、これは推測ですが、事前配布された上でエンバーゴがかかった感じです。今度、調べてみますが。

通りすがりの市場参加者さん、どうもです。まあ、フラットな気持ちでエントリーを書いても、いろいろな受け止め方があるのだろうと、思います。いずれにせよ、フォロー感謝いたします。ありがとうございます。
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