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クルーグマン教授vs小林慶一郎氏
 茶話会続きの前にクルーグマン教授の「Japan’s recovery」についての感想を簡単に。このエントリーで、同教授は小林慶一郎氏の主張(日本の不良債権問題の教訓)に深く賛同している。ただ、小林氏の主張のある部分に引っかかってしまった。
 「りそな銀行を国有化し、再生機構も設立し、邦銀が不良債権処理に全力を尽くしたことで、やっと株が上がり、人々はようやく景気回復を迎え入れることができた。それまでは政府が何をやっても苦境を一時しのぐ程度の効果しかなかった」という部分である。クルーグマン教授は、03年以降の景気回復は輸出が主導したものであって銀行は関係ないのではないか、と言っている。まあ、私もそう思う。
 不良債権問題の処理は景気回復の必要条件ではあるが、十分条件ではない。日本は不良債権をほぼ処理して身軽になった。ちょうどそのころ海外は経済がブームになり、不良債権の重荷がかなり取れた日本は輸出主導でフワッと浮いた、そんな感じですかね。もっとも浮いたとは言っても、平均的なものではなく、非製造業は浮揚感乏しかったですが。小林氏も上記のところには回復の条件が整った、という意味を込めたのではないかと私は思っております。
by bank.of.japan | 2009-04-03 22:24 | 金融システム | Comments(5)
Commented by PK at 2009-04-04 07:05 x
企業のB/Sは、5・10日に決済をしていくことで、時間軸上に存在し続ける保証を得ることができる、というのが平常時のルールであるけれども、金融機関が痛むと、決済をしても保証を得られないという不確実性が高まります。だから金融機関を元に戻すことは重要です。
しかし、「次の5・10日」を考えると、決定的に実物経済の動向に依存している。日本経済の事情とは「独立している」輸出需要は、その不確実性を払いました。(結局はトヨタも騙されるバブルだったわけですけど)
何が不確実性を払う本当の需要なのか?
金融機関と企業が、これを掴んでいないといけない。
ドルとユーロの2つの準備通貨と、各国通貨にまたがった、江戸時代の「両替商」(三井、住友などの日本の古い財閥の出自)のようなものが、米銀が独占している世界的な決済利権を奪う形で、ドル基軸体制が変容するでしょう。
Commented by ubon2k at 2009-04-05 13:38 x
一般人の体感では、橋龍の改革解放路線と金融ビッグバンの後、99年あたりから飛来し始めたハゲタカが死体処理活動を行い始め、その土台の上で不良債権の大枠が確定されて解消が進みバクテリアが土壌改善効果を生んで最初に芽生えた作物は都内の巨大再開発事業と新興成金・ヒルズ族など。輸出は遅れて04年中頃~郵政勢選挙以降に活性化したと思います。そして内需は06年でピークを迎え輸出が主役になったか?と。

この間は外資主導だった印象が強いので確かに邦銀の役割は大した事は無かったかもしれませんが、「代役」はいたと思います。

私自身の体感で考えると、そもそもの原因のサブプライム惨禍に目処が立ちハゲタカが死体処理を始める環境が整うまでは本質的な土壌回復は厳しいかと思います。また、「代役」の存在も必要かと。

2000年頃にプリンストンで日本研究をやっていた連中にこのような分析眼を持っているとは思えません。恐らく日本の学者がきちんとレポートしていないので知る由も無い?という気がします。
Commented by カナリーワーフ at 2009-04-05 14:53 x
本石町様 ご無沙汰しております。今回の金融危機のあおりを受けて、今は、アジアの某片隅でひっそりと息をついております。場違いとは十分承知の上で、あえて、今般の北朝鮮のミサイル事件について。例の「誤報道」がマーケットオープン中だったらどうなっていたかなぁ~とちょっと思いました。日本のマスコミの報道振りは各社のサイトから窺い知る以外にないのですが、自衛隊の「誤探知」に端を発する政府による「誤情報」をあげつらう論調(という表現をあえて使わせていただきますが)が多いあたり、「太平の眠りをさます蒸気船」の川柳を読む思いがしました。もしこれが平日の日中であったら、はたしてマーケットはいったいどのような反応をしたのだろうかと。
Commented by カナリーワーフ at 2009-04-05 14:54 x
連投失礼いたします。私の以前の為替の上司に軍とはおおよそ関係のないインド系の南ア国籍の上司がいたのですが、彼いわく、安全保障系のリスクプレミアムというのは、こうした「誤情報」リスクが他のリスクファクター対比著しく大きい(というのは、誤情報に基づいて軍が反応してしまうことは国家の安全保障という物事の性格上避けることができないことがしばしばあるため)ものなので、それを織り込み損ねたことを軍や政府のせいにするのはディーラーとしてただの笑いものと、そんなことを言っていた記憶があります。そのときは、まだ911より前でもあったし、私も経験が浅かったので、いまひとつピンときませんでしたが。とはいえ、今回の一連のミサイル事件は、こうした安保系のリスクファクターはやや特異な特徴をもったものなのだということをより幅の広い日本の市場関係者が共有できるきっかけになったに違いないと思いました。
Commented by bank.of.japan at 2009-04-05 20:58 x
ubon2kさん、どうもです。不良債権処理は邦銀のバルクセールの頃から本格化し、ご指摘のように外資が回復基盤の端緒を作っていったと思います。米国も同様の形を取るはずで、まだかなり時間かかります。その間、FRBはひたすら金融システムを生かし続けるしかないです。

カナリーワーフさん、どうもです。ご無沙汰しております。金融マンのサバイバルは難しいご時勢ですが、頑張ってください。ご健闘お祈りします。ミサイル誤探知の件、これが(少なくともマスコミベースで)大騒動になるのは先が思いやられます。全体的な風潮として、暴発リスクが高いのはその通りです。扇情報道、揺れる政府、いざというとき冷静さを保てるのか。かつての戦争突入の風潮が思い起こされます。

PKさん、どうもです。決済通貨としてのドルは揺らいでおりますが、なかなか代替がない、従って基軸決済通貨として使わざるを得ないのでしょう。
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