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飛ばし的な自己落札的行為が可能ではないかと思ったが…
 表題は、ガイトナー財務長官の新たな不良債権対策を報道ベースで見た感想である。不良債権問題を一発で解決するのは方法論としては簡単であり、「不良債権の簿価買い取り」をやればいいだけだ(確か日本でも一度浮上したことがある)。ただ、これはロスの全額を血税で埋めることになり、納税者が納得しない。強行すれば、超厳しい経営責任の追及(刑務所にぶち込む、私財没収とか)が必要となり、政治的には難しい。というわけで、解決は簡単だけれども実現しない手段である。
 で、今回の米政府の案は「市場原理」を応用した不良債権処理である。問題は、市場原理を信じてよいのかどうかである。不良化した債権の適正価格を市場原理で発見できるのか。また、そもそも市場原理が公正かつ透明に働くのか。不良債権を売りたい金融機関(売り手)と不良債権を買いたいファンド(買い手)。前者はなるべく高く売りたい、後者はなるべく低く買いたい。現状はオファーとビッドがかけ離れた状態で歩み寄らない。そこで政府が体を張って歩み寄りを促したわけである。一番きれいなのは三方一両損で、それぞれが相応の負担で入札が成立することだ。
 政策スキームを見るとき、抜け穴を探る哀しい習性が身についた私がぱっと思いついたのは、売り手の自己落札的な行為である。一番汚い(or露骨な)方法は、売り手の金融機関がファンドを設立してそこに有利な価格で不良債権を落札させること。この方法を使えば、政府にロスを飛ばせるので自力で処理するよりも楽である。そこまで露骨な手段が取れないなら、協力してくれるファンドを見つけて水面下でキックバックを約束して高めの落札をさせること。まあ、入札の談合であります。
 こうしたモラルハザードを遮断する仕組みが盛り込まれているのか、細かく見ていないのでよく分からないのだが、どうなんでしょう。でも、モラルハザードがあったとしても落札されていけば見た目は不良債権は消えていくので、早期に問題を解決したい米政府としてはむしろモラルハザードは黙認するんだろうか。だとすると、問題の先送りになる。
 まあ、モラルハザードのリスクを内包しようがしまいが、どんな案でもとにかく市場が好感して楽観ムードが広がり、勢いが付いてそのまま気が付いたら景気よくなっちゃいました、となればメデタシ、メデタシである。墜落死したネコが地面に当たって跳ね返る途中で息を吹き返す奇跡を願うようなものかもしれないが…。景気悪化ムードで窒息感が強まりつつある中、何でもいいから一息ついてみたい気分であります。ガイトナー、さすがだ! 素晴らしい案だ! と連呼すべきでありましたかね(苦笑)。

ps もちろんモラルハザード的な行為が後から発覚して、また庶民が怒ってしまうとこのプランはスタックして、不良債権処理は滞ることになる。クルーグマン教授の焦燥感(or諦観)が深まろう。
by bank.of.japan | 2009-03-24 20:57 | FRB&others | Comments(15)
Commented by べっちゃん at 2009-03-24 22:25 x
 不良債権処理って、何だかマネーロンダリングと似ていますよね(爆)
Commented by べっちゃん at 2009-03-24 22:30 x
 金融機関と政府の間で不良債権を半分こして毎年キャッチボールするってのはどうでしょうか?どっちか片方がリスクを全部抱えるのは大変ですが、半分づつであれば堪えられるかもしれません。何ならもっともっとダミー会社を作って順繰りにしていくとか。

 マネーロンダリングの一手法です(笑)
Commented by bank.of.japan at 2009-03-24 22:31
昔、ケイマン関連の記事で「アセットロンダリング」というフレーズを使ったことがあります(苦笑)。
Commented by モンテカルロ・モナコ at 2009-03-24 23:17 x
Absolutely I say,
this is exactly what I would like to say.

Your pointing out is pretty right.

Today is two Ichiro's day.

Maybe soon,  another storm will be coming.

Hey Geithner, you will never be へいぞう.

I recommend you not to be impatient.
Commented by EURO SELLER at 2009-03-25 00:27 x
私は損失先送りにより損失が増大するような損失確定のインセンティブを盛り込むべきだと思います。将来時価がどの程度のタイムスパンで上がるか下がるかはわかりませんが,以下のような例で少しでも早く損失を確定しようとする動機付けにはなりませんかね。
例)
6月末までは:簿価と時価の差の3/4+時価での買い取り
9月末までは:簿価と時価の差の1/2+時価での買い取り
12月末までは:簿価と時価の差の1/4+時価での買い取り
それ以降:時価での買い取り
Commented by 崖っぷち at 2009-03-25 07:05 x
勝ち組みが生まれれば、負け組みを淘汰すれば良し、ではないでしょか。

GSは問題資産の80%以上を損失計上済の様子(84%だったか)。MSも同様。今回のPPIPで売却すれば利益が出ると言われている。なので、この2社は、強気のオファーを出せるだろう事から決定権があるように思います。ストレステストの結果次第ですが、更に淘汰を進めるなら安く(他社の淘汰を早める)、これ以上の淘汰をしないなら高く(国民に最大限ツケを回すなら)・・・でしょうか。

今頃Goverment Sachsと逆さ絵のおっさんとホビット長官で、
ゴニョゴニョと相談してるんでしょうか。
Commented by A- at 2009-03-25 09:05 x
債権もお金も、どちらも裏付けなき「信用」で回ってた部分が大きいだけに「信用」が取り戻されるまで、2世代回るまでは政治的に解決するしかないでしょうね。

「信用」は積み上げるのは100年係るが崩すのは一瞬だから。
100年経ったら、僕も貴方も読んでる人もみんなこの世には居ない。
Commented by PK at 2009-03-25 09:11 x
アメリカ人が、大好きなポーカーをやっていたら、いきなりジョーカーがめくれて一同卒倒
しばらく茫然自失
気を取り直して、ババ抜きゲームに変更
日本人も欧州人も中国人も加わって、世界中が輪になって、未来の米国人も加わって・・・


通貨制度は、金本位制と管理通貨制のどこかに正解があるのだろうが
米国人には向いていない
もう2度も大失敗をやっているから
Commented by だいすけ at 2009-03-25 11:41 x
私はこのPPIPを評価します。
AIGの賞与問題やらなんやら犯人探しをしている内は何も進まない。
今までウォール街によっかかって経済が動いていたのに、金融危機が来るや手の平を返したように犯人扱いってのもモラルハザードかと・・・。


>もう2度も大失敗をやっているから
確かにそうですが、米国の失敗が人類の経験として生きている側面もあるので無駄ではないと思います。
失敗すると言うことは挑戦していると言うことで、反省することもできます。翻って日本はそもそもポーカーのテーブルにもついていないような気がします。
Commented by Teddy at 2009-03-25 16:10 x
何で、負の遺産のローン(簿価+ちょぼちょぼの貸倒引当金で、「金融・経済の回復を待てる」・「天佑を待てる」もの)を、こんなものに売るのかが理解しづらいですね。売っただけで、TCEに大打撃・・・
EURO-SELLERさんのような逆インセンティブがあればいいかもですね。
そこまで買い手がビッドアップするのでしょうか。

Commented by 39歳無職 at 2009-03-25 19:45 x
EURO SELLERさんのアイデアは面白いなあ・・・
そうですよ。ハリーアップ、ハリーアップ!
Commented by bank.of.japan at 2009-03-25 21:31
モンテカルロ・モナコさん、どうもです。評価は二分ですね。まあ、また混乱するという見方が強いような。

EURO SELLERさん、どうもです。アイデアとしては有効です。早期処理するほど負担が軽い。それでも処理できない金融機関は国有化して破たん処理ですね。

崖っぷちさん、どうもです。負け組が多過ぎるのかもしれません。ボーダー付近はどっちにも転がるので、淘汰作戦はかなり難しい可能性もあります。

A-さん、どうもです。ご指摘のように信用をなくすは一瞬です。再構築は大変です。まあ、時間がかかるとは思っておりますが…。

PKさん、どうもです。日本はゲームを主導するのが苦手なので、英米ゲームに受動的に参加する立場でしょう。
Commented by bank.of.japan at 2009-03-25 21:35
だいすけさん、どうもです。ご指摘通りです。ただ、世間は感情論で動くので、物事は合理的には進まないです。日本もそうでした。どこも同じですね。

Teddyさん、どうもです。売ったときに実現するロスに耐えられない価格では誰も売らないと思われます。一方、ロスの出ない価格では、買い手がつかない。両者をうめるロスを政府がかぶれるかが鍵ですかね。
Commented by お伊勢参り at 2009-03-26 12:34 x
こんにちは。
囚人のジレンマじゃないけど、モラルハザードにはインセンティブとコストという経済学的アプローチが有効ですよね。
EURO-SELLERさんの「逆インセンティブ」は大変よいアイデアと思います。
もうひとつ、ついでに不正へのペナルテイ(コスト)を高めたら、かなりキクと思います。
日本も金融庁の再生プログラムで、大手銀行は徹底的にたたかれて、最後は粉飾決済やった、大阪の”ピーブルズバンク”はあわれ吸収合併・・・、摘発者もでて、社会的に指弾され、でしたよね。
一罰百戒でマネーセンターバンクの1個を、多少の強引な理屈つけて血祭にあげれば、みんなビビって、裏でバックマージンやアセットロンダンリグしなくなるのでは?
だって、日本は今でも金融庁が検察以上の生殺与奪の権をもっていてニラミ利かせているので、勝手に比べれオトナシイもんでしょ。(オーバーキルの弊害は多々ありますが)
Commented by bank.of.japan at 2009-03-27 00:38
お伊勢参りさん、どうもです。見せしめ的な国有化&厳罰的処理はまあそれなりに効果あるかもしれません。ただ、処理すると倒れるところは身動き取れないままですが…。金融庁は今は逆の睨み(貸せ)のようです。まあ、これまたいきなりの豹変で困りものですが(苦笑)。
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