日銀は法律上、通常業務では株を買えない。ではなぜ買えたのか。日銀法43条を使ったのである。この条項は以下の通りである。
「第43条 日本銀行は、この法律の規定により日本銀行の業務とされた業務以外の業務を行ってはならない。ただし、この法律に規定する日本銀行の目的達成上必要がある場合において、財務大臣及び内閣総理大臣の認可を受けたときは、この限りでない」 この条文のうち、ポイントは「ただし」以下のところである。では株を買う目的とは何か。これは第一条の二項、すなわち「日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする」である。まとめると、日銀は「信用秩序維持のために株を買うことが必要である」と判断し、「株を買っても良いですか」と43条に基づいて財務大臣および総理にお伺いをたて、「オッケー」と言われて買ったのである。 株を最初に買ったのは、株式が暴落していた2002年秋。恐らく、実情は次のような感じだったのではないか。 株がやばいぞ、買わなきゃいけないんじゃないか。でも法律上買えないし、困った。そうだ、43条がある! 目的はどうする? 金融政策(一条一項)では買いたくないし…、信用秩序維持にしよう。 43条の「ただし」以下の文言がなければ株を買うには法改正?が必要であったかもしれない。法律は、すべてを予見できない。そこで、この手の「何でも出来ちゃう」条文があるのだろうと想定される(詳しい方、ご指摘を)。よく法令に「等」とかあるけど、これも定義を幅広にする知恵であります。日銀もよく「等」を使うが、これも予想外の事象に適用するためのヘッジである側面が強い(内部ではあまり使うな、と言われるらしい)。 ということで、日銀が使った「43条」はジョーカーのような条項である。以下のような応用も理論的には可能である。 ・信用秩序維持のために不良債権を簿価で買いたい。大臣、いいですか? ・デフレ脱却のために「石ころ」を買いたい。大臣、いいですか? ・空から金を撒くためにヘリコプターを買いたい。大臣、いいですか? ・ベルンハルト作戦を実行したい。大臣、いいですか? あとは大臣の答え次第である。 本当は、43条は使わないほうがいい、と日銀マンは思っている。なので、本件に関しては43条を軸に攻められるのが日銀マンは辛いのである。目的が、一条一項でなく、二項である、というところが何とも泣かせる、というかなんというか…。株価がさらに暴落して7千円割れ、6千円割れ、とかになったらまあ一条一項が目的になるかもしれない。 43条を考えた人は偉いですね。リーガル系の真骨頂とも言える。
by bank.of.japan
| 2009-02-03 20:09
| 日銀
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Comments(17)
しかし、さすがに、「ただし」書きを、余りに広義に解釈して、施策の合理性、効果を立証できないと行政訴訟その他で負けるんでは? 今回の件で、誰か、試しに訴訟を起すひとはいないですかねえw 「金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資する」ために日銀はもっと別にやるべきことがまだ残っているではないか?それなのに何故、今、リスクの高い株式の買い切りなんだ?とか、、、w
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基本要領を見ると、2002バージョンは「金融機関による保有株式の価格変動リスク軽減努力を促す。」2009バージョンは「株式保有リスク削減努力を支援。」となっています。今は株を持っていること自体がリスクであるような書きぶりですね。何故価格変動リスクではなく保有リスクに変えたのでしょうか。
生保から買った方がいのでは。
日銀も大変ですね....。
・デフレ脱却のために「石ころ」を買いたい。大臣、いいですか?
→「良いですけど、『石ころ』はやめて『ケチャップ』にしてください。」 ・ベルンハルト作戦を実行したい。大臣、いいですか? →「良いですけど、刷るのは7,000円札とかですか?」 ・空から金を撒くためにヘリコプターを買いたい。大臣、いいですか? →「良いですけど、急いでください。方々から注文が多くて価格が急騰しているらしいです。」 ・信用秩序維持のために不良債権を簿価で買いたい。大臣、いいですか? →「良いですけど、米国債は(ry。」
日銀法については、1条より2条を100回読んで欲しいと思ったりして。まあ、物価の安定の解釈で見解の相違になるんだろうけど。
>心理的な効果を一番意識すべき
確かに。心理的なものだけではなく、現実的な乗数効果があるはずで すよね。 いかに低くなっているとしても、限界消費性向が0だと考えている人は 流石にいないと思うのですが…。
これについては前から言いたい事山ほどあったんですが「石ころ」までたとえにし”かわりに(?)”
言ってくださり本当にどうもありがとうございます!m(_ _)m、「信用売り規制」等というのも確かあったはずだが、 あれも「売りが減る一方買いもまた減る(売り買いの比率じゃ前以上?(笑))」なんてぇのも昨年10/8、10/28 (=株投資家の皆さんならよく知ってる2日)前後むしろ目立つ感じもするんだが。(しかもその2日以降は売り買い 数もまた以前と同じか ”それ以上”???)。話はちょっと外れるが、野党が官の埋蔵金(=内部留保)より 民間企業の内部留保の追求にもっぱら躍起の様なのは 、”民間の財務データが正確だから”、 ではないだろうか?やっぱり(というか、少なくとも官のそれよりはw)、あと、 共産党が私有財産認めたのは役人天下り「わたり」等々で、 「私有財産みとめぬわけにはいかない(いかなくなった)」から、ではないンですか?ね、PKさん。 日本金融学会で「日本銀行法の再改正論議」について論じたページがあります。 *******引用******* 1.中央銀行の完全な独立性はあり得るのか。なぜ独立性が必要なのか。 (回答)「三権」は分立しており、中央銀行の完全な独立性はあり得ない。中央銀行の独立性は、政府ないし議会からの独立性である。日銀の場合もそもそもその創立理由は、国の財政と銀行券の発行を切り離すことにあった。 すなわち政府債務の貨幣化を避けることに最大の理由があった。 さらに、中央銀行の独立性は、一国の通貨は、本来自由な貨幣契約によって生まれ、何人もその自由を侵すことができず、政府によってさえもこれを勝手にすることができないという「不可侵性」(S.H.フランケル「貨幣の哲学」)に根ざすものである。 ttp://wwwsoc.nii.ac.jp/jsme/kinyu/pdf/02s/02skamagae.pdf ************ ヨーロッパ文明の中央銀行と日本の中央銀行は本当に同じパラダイムで運営してよいかどうか。現代中国の中央銀行は中国共産党の支配下にあるのですから・・・巨額の米国債を持って・・・
前回の2兆のつまりは半分の1兆円ってことは「前回はもちろんいまいじょう”株価下落する」って
まるで ”暗 示”しているようなもんだわ(笑)(Re:心理的効果...??)
麻生氏も白川氏も政府紙幣発行論に対してNOと言いましたが、どうして駄目なんでしょうね?
円の信認やインフレを懸念してるようですが、今はそれどころじゃないと思うんですが・・・ 10-12月期のGDP予測値は2ケタ減、1-3月期もそれくらいになると予想されてます。 結局、円高も手伝って先進国のどこよりも酷い状態なんじゃ無いでしょうか? 日銀の独立性うんぬんより国民・国家の方が大事なんじゃ無いの? 国債買い取りに関しても自主規制枠を設けてるそうですが・・・
お疲れ様です。
それにしても 一体全体 どなたのご指示なんでしょうかねぇ~
平ちゃんさん、どうもです。拡大解釈の反論はかなり難しいかもしれません。日銀の判断にお任せです。
植田日銀総裁さん、どうもです。価格変動だとボラに限定されるので、もっとも捉え方を広げた、ということらしいです。 株を買うなら、、、さん、どうもです。生保は取引先ではないので、制度上は難しいかもしれません。生保として取引先になりたいかどうか。今度聞いてみますね。 Phanaticさん、どうもです。大変な様子です。
774さん、どうもです。なかなか面白いです。これはお付き合いすると、きりがなくなりそうですね(苦笑)。
飛車さん、どうもです。ご指摘の件はよく分かります。 それいゆさん、どうもです。まあ、やろうと思えばそうですかね。やられる前に自分でやる国があるかもしれませんが。 小野さん、どうもです。ありがとうございます。 ノン日銀さん、どうもです。興味深い論点です。これはなかなか簡単には論じにくいところです。引き続き考察したいと思います。 まるさん、どうもです。政府紙幣論についてはよくフォローしておりませんが、日銀の国債買い入れは銀行券残高を上限としております。まだ余裕あるので、もっと買えると思います。 O山Oさん、どうもです。総裁&政策委メンバーの指示という形になります。まあ、総裁なのでしょう、恐らく。
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