ユーロ圏の経済苦境が深まり、ECBのゼロ金利&量的緩和を予想する向きが増えてきた。ここでECBが非伝統的手段として国債買い入れを行った場合、その難しさを日銀に例えて考えてみた。結論から言えば、国家の財政的統制を外れた地方自治体の債券を日銀が買い切るような構図であろうか。
ユーロ圏の財政は国ごとに独立している。各国の政府債は流通市場で大幅な格差が生じている。ドイツ国債を基準にしたスプレッドはスペイン、ギリシャ、アイルランドなどは100-300bpの間のどこかにそれぞれ散っているようである(詳しいチャートとかあったらご教示を)。 一般的に中央銀行が債券を買う場合は市場実勢に応じた掛け目がつく。高品質の債券は掛け目が高い(最高は100=値引きなしで買う)、ダメな債券は掛け目が低い。ECBが各国債券を買う場合、市場実勢に応じた掛け目を機械的に適用できれば良いが、もし各国が掛け目の差に「仲間じゃないか。ドイツと同じにしろ」と文句を言ったら、厄介なことが起きる。 まあ、やり方次第だが、全ユーロ債の掛け目をドイツ並みにして、金額のみで買い入れをオファーしたら、流通市場で売られている国債がバンバン打ち込まれてしまう。この結果、ECB資産サイドはどんどん売られた債券が増大していく。つまり、悪債が良債を駆逐していくわけだ。 日本の例に例えると、国家の財政規律から外れて勝手にファンディングし始めた地方自治体の債券を買い切るような構図となる。国債買い入れ対象に、国債と同じ掛け目でこうした地方債を入れたら、最も暴走した地方債が日銀オペに叩き込まれることになる。顔の悪い地方債が円の裏付け資産として君臨するわけだ。 地方債の買い切りは日銀にとっては悪夢である。国家の統制が効いている今でも、掛け目で差を付けると大変な騒ぎになるからだ。ECBも同じではないかと想像される。不況のときは国内外みんな気が立っているので、差別的処遇は感情的反発を招きやすい。マスコミもこの手の反発は煽るので、理性的な対応はやりにくい。 まとめ。 ユーロを安定化させるには、①政治的統合を目指す(欧衆合衆国)②ダメな国を切り離す(独仏枢軸の原点に戻す)③ECBのやることに文句を言わない-などの条件が必要であろう。
by bank.of.japan
| 2009-02-02 22:34
| ユーロ
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Comments(4)
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at 2009-02-02 22:49
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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bank.of.japan at 2009-02-03 00:40
非公開さん、どうもです。ネットベースではなかなか見当たらないです。情報、ありがとうございます。
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PK
at 2009-02-03 09:27
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経済調整は、順調に進むなら、人間の価値が等しくなる過程だと思います。通貨圏は、その範囲で平均へ収斂されると期待されている範囲でしょう。そうすると、次の3つの意思決定の軸があるように思えます。
(1)ユーロの範囲、(2)ユーロの内部の調整、(3)ユーロの外部との調整 (1)は地政学的食料・エネルギー的な戦略意思決定で決められるだろうから、ユーロの分裂は無いと思います。但し、拡大のスピードの問題はありますし、ユーロの外側に緩衝的な第二ユーロというのもありだと思います。平均の平均戦略。 (2)は、ユーロ圏内の調整機能の確立問題 (3)は、ユーロ安誘導などの問題 たぶん、(2)と(3)の折衷になるでしょう。
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ノン日銀
at 2009-02-03 19:47
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*****引用**** ヤフー/フィスコ 1月16日 【要人発言】 佐藤金融庁長官 「強化法の申請を検討する金融機関は先を読む経営をしていることの表れ」 トリシェECB総裁 「流動性の罠に陥ることから回避することを望む」 米上院本会議 「米経済は恐慌入りしていない」 ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090116-00000003-fis-brf ********* やはり、日本とアメリカよりもヨーロッパは陰気ですね....(笑えるところが少ない)。
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