90年代前半の欧州通貨危機の経験で私は典型的なユーロ懐疑論(Euroscepticism)になり、このブログでもシニカルなスタンスであります。今回のエントリーは、「烏合の(欧)衆がやっぱり不安」の続きであるが、最近の情勢については厭債害債さんの「英国の状況が示唆するシナリオ」が詳しい。ぐっちーさんの「グレート・ブリテン」もご参照を。
で、烏合の欧衆である。これまでは「ECBは利下げが遅い」、「やっぱりブンデスバンカーのタカ遺伝子が健在なのね」と思っていたが、単純タカとは言い切れない面もあるなあと考え直しえている。まあ、基本はタカなんだろうが、財政主体がバラバラであることの弊害をECBは意識しているのではないか、と推測される。日銀、FRB、BOEは「質的緩和」に舵を切りつつあるが、ECBの場合かなり難しそうである。以下、幾つか問題点を。 ・CP・社債買い切り→格付けで機械的に基準作っても、各国それぞれ救いたい企業は多いはずで、調整が付かない恐れがある。 ・政府保証→ECBがリスク資産を買う際に政府保証を付けてもらう場合、各国負担の調整が大変になる可能性がある。 ・財政マネタイズの輪番オペ→各国債券を差別できない(全部を優良ソブリンとして買う羽目に=掛け目で差別したら外交問題)。市場では既に選別化が進み、ドイツとスペイン、ギリシャなどの国債は格差が拡大している。輪番オペやったら売られた国債が打ち込まれてECB資産はダメダメ国の債券比重が増大。ユーロ劣化を招く。つまり、悪貨が良貨を駆逐する輪番オペになりかねない。 ということで「質的緩和」が困難だとしたら、ECBに打てる手はあまりない。さほど残っていない緩和余地をちびちび使うしかないだろう。また、烏合の集団財政が勝手に暴走するリスクもあるので、利下げしにくい面もあるかもしれん。いずれにせよ「一通貨・たくさん財政」の擬似帝国の金融財政はまあ無理があるということだ。 なんてことを日銀マンや市場関係者といろいろ話をしていたら、やや無理筋ながらも東部戦線・西部戦線との比喩を思い付いた。デフレと戦う金融・財政のポリシーミックスは国家総力戦。国家の統一的な意思の下、うまくコーディネートさせないといけない。 金融政策を西部戦線、財政を東部戦線としたら、西部方面はECBを頂点とする指揮命令系統が確立されている。一方、東部方面は指揮官がたくさんいて、しかも多数指揮官を統率する基準が緩みつつある。船頭が多い戦線を維持するには決めたルールの遵守が必要だが、不況襲来に耐えかねて勝手に戦線後退する軍も出始めた格好だ。伸びきったドイツ軍東部戦線がスターリングラード攻防戦で後退を余儀なくされる局面と似ている。同盟枢軸軍が勝手に後退し始めると、戦闘序列が崩れて壊走(財政暴走)しかねない情勢だ。 烏合の欧衆が生き残るには、堅い契りを交わした独仏枢軸兵(独仏)で守りを固めるか、烏合の欧衆のデカさだけで虚勢を張るか。または、枢軸に息苦しさを感じるCLUB MED諸国がさよならを告げる、もしくは市場圧力によってたたき出されるか。アディオス、チャオとか別れの言葉がそのうち響くことになるのかも…。
by bank.of.japan
| 2009-01-22 21:39
| ユーロ
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Comments(17)
いつも金融政策関連の話題で参考にさせていただいておりますが、ちょっとネタズレで申し訳ないのですが、日銀の時系列統計データのダウンロード方法が「時系列統計データ検索サイト」にリニューアルされていました。正直面倒になっていて、以前の方が使いやすかった気が。。。。
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
時系列統計データ検索サイト・・・以前の形式の時系列ファイルをベースに、エクセルとか組んでいると、確かに不便ですよね( ̄▽ ̄;)
検索サイトも、一応、データ系列の並びは以前と不変みたいなので、 何とかダマシダマシ使っております。失礼しました。
ユーロ頑張ってもらいたいなあ
ドル基軸の代替は、複数基軸通貨で相互に牽制、だろうと思っているので。
日本は、今、恐慌が起きているという認識で対応した方が良い。
覆水は盆に還らず。 昨日の事は綺麗サッパリ忘れることだ。 連合のように過去に固執すると、それが負債となって未来を失うことになる。先月の給料が何十万だったかは忘れることだ。 今の給料が幾らであるかだけを考えるべきだ。 信用の崩壊前後で、時間の連続性は無い。 計算の基礎になるのは、雇用だ。 なるべく多くの人を雇用し、対外的な政治的摩擦を極力回避して、 社会的共通資本を破壊しない。 そうすれば人間の価値は維持される。
今だから告白(?)しますが、90円台の頃のユーロでその後優に1.5倍は上回ったって経験があります。
といってもユーロ換金時日本円でたかだか1千万にも満たない額でしたが。東京三菱(当時)など その直前(即ち90円台より以前)どんなこっぴどい目にお遭いになられたなんかも 全く意に介さず(超汗)...ぃゃマ知らぬとはげに恐るべき事かなと今更ながら思い返すたび 「超身がすくむ」 思いです。唯一の救い(?)というか、それよりも以前株の方で「光通信」で大儲けした経験。と いってもこちらもたかがしれてるんですが、利食った直後のITバブル崩壊が前述の為替ユーロでも 「追い買い躊躇させてくれた(!?)」 んでは ないか等とも。。。あと手数料無しのノーロード型投信でユーロ→ドルも可能だったというのも ラッキーだったかもしれない。(円と同様かなりのドル高で行えた)、ちなみに今現在そうした投信 殆ど見当たりません、しかも私のは、何でもモーゲージ債ふんだんに入ってたらしいブルブルッ... 官民限らず 株為替債券限らず「繰返し」しかも ”他人のゼニで” 可能な限り売買せざるを得ないお立場の皆さん本当にお気の毒で...言葉も見当たリマセヌ...
...と、まぁ以上のような経験から(も?)、「ユーロ=財政主体バラバラ」を
”強く意識した” わたくしでござぃましたm(__)m 前述の東京三菱様(当時)も確か「ユーロの将来性(複数基軸etc!?)」、信じての ものではありませんでしたでしょうか? 今現在の農中とどちらが凄い!?!?...マそれはともかく(汗)...「農中脳卒中」、 にワロタ ( あと「今、日本国内で最も健全なのは半国営(!?)のりそな位じゃないか」も。) 額面われ地銀株まで救済してくれる麻生政権ほんとサイコーっ 「農中に公的注入」って話でも出ぬ限り(額面われ地銀も)余裕で(?)売買できそうなもんで♪ ただ、そうはいってもやっぱりオーバーバンキングかつ 額面割れ~増資等々での公募価格等も恐らくは下回ってるんでは?~の銀行ゾロゾロ、て冷静に 考えるとマジ凄い(ヤバぃ?)...
もし現在が(世界的)恐慌ならですが、米国新政権の何とかディールは史上初めて「戦争無しで恐慌脱せるか?」
の挑戦ではないか?↓ > ...太平洋戦争が無くても成功したという意見と最初から太平洋戦争の開戦が無ければ成功しえない政策であったという意見が対立... と、いうか「戦争無しにある(基軸)通貨体制終焉有得ぬ」って気も正直してる私だけかもしれないが?つまり それまで混乱(or困難)続くだけというか。ローマにしろ何にしろ世界的貨幣消滅後はその繰返し...じゃ確かありませんか? イスラムシャリア等も貨幣流通極度に無い当時の中東で形成されてた。 核保有後大規模な戦争不可能というのも極めて大かもしれない。ちなみに太平洋戦争時米国は武器兵器の「稼働率」 突出し世界一だったそうだ、修繕し再使用~は当時から日本の方が優れてた様に誤解しがちだが日本も高かったがそれをも 遥かに凌駕!でもそうした工業技術今の米国にはたして可能か?脱工業化...しかも皮肉にもそれは日本の雇用にも全く当てはまる! 戦争はともかくとにかくよそ=海外に売らぬ以上見通しも立たぬ国だ。国内需要だけで少子高齢化といえ1億数千万 生かせられると思いますかPKさん
小野さんの体験談・ご高説すばらしいですね。是非ともご自身でブログをやってみてはいかがでしょうか。
blue^2さん、どうもです。私は使ったことないので何とも。北の書生もどきさんがフォローされている通りなのでしょう。書生もどきさん、ありがとうございます。
非公開さん、どうもです。ユーロ統合では政治的意思が先行した感が強いです。発足当時はまだしもその後は好調な経済で矛盾が生じにくい状況だったと思います。先行例としてはペッグ制に失敗したアルゼンチン、かつてのアジア危機が該当する気がします。差別化が可能かどうか。今の地中海方面の国債の対独スプレッドをそのまま当てはめると、ジャンク扱いになるような…。
PKさん、どうもです。この試練もまたユーロの壮大な実験の延長でしょう。どうなることやら。
小野さん、どうもです。他の方々のご指摘もあり、もう少し短めにしていただくと助かります。ないしは御自身のブログを始められるとか。TBはOKです。
ユーロ紙幣は製造国が判かるようになっていて、紙幣に記載されている番号の先頭のアルファベットで製造国が判明するらしいですね。例えばドイツ発行であればX、イタリア発行であればSなど。そしてホントかどうか分かりませんが、製造国別に、既に交換比率が違うというようなことを聞いたことがあります。(もしかして有名な話ですか?)本当だとしたら、交換比率に興味があります。どうやって決めるのでしょう。
北の書生もどきさん、ありがとう御座います。確かに順番は一緒ですが、Data-Mining-erの自分としては、データの注記にある系列の大分類、中分類、小分類が分かりにくくなったのはかなり不満です。これまでは、統計一つをダウンロードすると、系列それぞれの包含関係が見て分かりました。それと、系列を100までしか選べないのも少ない様な気がします。
それでも、欧州統計局や英国統計局のダウンロード用データベースよりはマシかもしれません。
植田日銀総裁さん、どうもです。ユーロ紙幣が製造国によって額面に差が生じているのだとすると、実質的なユーロ分裂となりますね。マーケット的には何らかの裁定取引が可能なような気も。安くなったスペイン製ユーロをドイツ連銀に持ち込むとドイツ製ユーロを満額で交換してくれるとか? リテールベースの内国為替介入となるのでしょうか。交換比率の件、ホントかどうか知りたいところです。
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
非公開さん、どうもです。情報有難うございます。FTのは興味深いインタビューですね。今後、チェックしてみます。まあ、ここでの指摘は当たらずとも遠からずだったということでしょうか。
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