<   2010年 03月 ( 5 )   > この月の画像一覧
「レバレッジ規制の有効性に関する一考察」の考察=有効性に懐疑的なのが良し
 上記の日銀ペーパーが出ていたので、メモ的に内容を簡単に紹介したい。もっぱら個人用の資料としてこちらにアップしておきます。レバレッジ規制はもともと無理筋なものと私は思っていて、バブルに激しく酔った欧米諸国が悪酔いに苦しみ、強制的に飲酒量を制限するようなものであろう。酔い方というのは個人差があって、飲むと悪酔いする人もいれば、ほどほどで済ませる人もいるし、まったく飲まない人もいる。金融システムも同様に国別に違っているので、レバの国際的な一律の規制は現実的ではない。どうしても飲みたい(リスク取りたい)人は、闇物(簿外とか)に手を出すものでもあるし。ということでペーパーからいくつかポイントとを。

・レバレッジ規制は、いくつもの「副作用」を伴う点に留意が必要である。第1 に、レバレッジ規制は、確かにレバレッジを縮小させることができるが、それと同時に、資産の質を劣化させる

・レバレッジ規制の第2 の副作用は、銀行の活動範囲を狭めることによって、資産選択を非効率にする

・G10 諸国の上位商業銀行について、ギアリング・レシオと資産の安全性指数を比較すると、それらの水準に相当ばらつきがある

・金融環境やビジネス・モデルの違いにもかかわらず、世界統一基準でレバレッジ水準に規制をかけると、資産選択が非効率になる

・レバレッジ比率には、オン・バランス項目だけではなく、オフ・バランス項目等を算入することが不可欠である。その際、どのオフ・バランス項目をどのような形で組み込むか、幅広い検討が必要である

 結論的には、オンオフ含めて幅広く効率的に規制をかける(しかも国際標準の尺度で)のは現実的には無理だし、このペーパーでいろいろ指摘される副作用を考えると、レバ規制はまあ止めた方がよい。なお、紹介したポイント以外の数式などテクニカルなところは私の手には余るので、ご関心ある方はペーパー(以下のサイト)を直接ご覧いただきたい。
 http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp10j06.pdf
[PR]
by bank.of.japan | 2010-03-25 21:14 | 金融システム | Comments(2)
新型オペの供給を強化しましたよ=日銀金融政策決定会合
 いろいろ論点はあるが、とりあえず箇条書きで本日の決定について。
・政策運営は二重制
①翌日物金利による金融政策→現状維持が継続中
②ターム物低下を促す金融政策→新型オペの残高を20兆円に倍増→緩和強化
 新型オペの固定金利期間が3カ月物なので、この部分の重しが強まる形となる。当座預金のニーズが一定だとすると、新型オペを打ち続ければ、その他の短期物オペが減っていく。つまり、短期供給における新型の比率が高まっていく感じ。もちろん、期末要因などで当座預金残高は上下動はするだろうが。

・景気判断は据え置き
 つまり、景気判断に基づく金融政策の変更ではない。この点が分かりにくいところ。広い意味でのインフレターゲット政策の色彩が強まりつつある。当面、景気判断とは無関係に緩和強化となる可能性が高い。

・今後の展望
 海外経済の動向(&市場動向)
 政治情勢
 などの環境が好転していけばいつか正常化するかも。よく分からない。その間の政策対応もよく分からない。

・緩和姿勢を示す
 姿勢とは何か。気合いのようなもの、理力(フォース)? 相手(政治?)がこの姿勢に何を感じとっているかは相手の心でないと分からない。政治であるなら、政治自体が意味不明なところもあるので、姿勢をめぐる対話は基本的には意味が不明なところがある。姿勢、お辞儀の角度とかなら分かりやすいが。

・コミュニケーションポリシー
 狭義の量的緩和は「数字」があったので、分かりやすいが、この方法は禁じ手になっているので今のところ使えない。私自身は「数字」だけでの対話はバカっぽい手段だとは思うが、使い勝手はいいように思う。
[PR]
by bank.of.japan | 2010-03-17 22:01 | 日銀 | Comments(5)
日米密約の「無利子預金」=米国側の利益処理は…
 沖縄返還に伴う密約自体にはさほど興味はないが、無利子預金では米国側がどんな利益処理をしていたのか気になった。利益をリアルに現実化するには、FRBのシニョリッジの一部を切り分け、連邦政府に納付するときに識別する必要がある。これ、本当にそんなことしていたのか疑問であり、仮に隠れ補填みたいなものだったにしても、計算上の「利益」に過ぎなかったように思う。
 まず、無利子預金というのはFRBが常設しているファシリティ。特段珍しいものではなく、各国の預金を受け入れるスキームは中央銀行としては一般的なサービスだ。日銀も各国の預金を受け入れている。営業毎旬報告の負債側にある「その他預金」である。直近では280億円ぐらい。過去見ると、ちょこちょこ変動しており、どこの国だか知らないが、出し入れはしているようだ。
 で、この預金からの利益計上である。シニョリッジはB/S全体から計上されるもので、一部の負債から特定の利益を捻出して別計上するものではない(と思う)。日本が無利子預金から米国に利益を献上するなら、FRBは毎年、一億ドルの負債に見合った利益を金利変動に応じて別立てで連邦政府に納める必要がある。これ、決算はどこも透明にやっているので、別計上したら、これ何?という騒ぎになる。そもそも密約に基づく利益補填を決算上で分けたらバレてしまう。
 実際に預金は無利子で存在したが、そこで生じる利益は計算上のものでしかなく、しかも金利で変動し、いくらになるのかも分からない。返還当時の金利がそのまま続くと仮定したらいくらになるね、まあ気持ちして受け取っておきます、とその場限りで話した程度のことで、リアルに毎年ありがたいと思って受け取っていたわけではないだろう。
 FRBから上がってきたシニョリッジの一部が日本の協力預金をネタにしたものだと米政府で感謝していた人はほとんどいないのじゃないのか、と思った。それにしても金額がやけに小さいのが肩透かしであった。現在、外為特会で100兆円以上の大量の米国債を買っているのに比べると1億ドルとは…。
 ちなみに今でも無利子預金していると、短期運用で計算するとほぼゼロ金利なので、利益的な貢献はほぼないですね。
[PR]
by bank.of.japan | 2010-03-14 18:03 | その他 | Comments(7)
最近の金融政策情勢の雑感
 ご無沙汰しておりました。なぜか金融政策の辺りが騒がしくなってきたので、簡単に雑感を。と言っても、特にはないのですが、まあそれでは身も蓋もないので、思うところを幾つか。

・ポリティカル・コミュニケーション・ツール
 そんな感じに金融政策運営のフェーズが変わった、ということであろう。これは去年12月から始まったことで、騒がしくなるのが少し早いかな、という印象。もとより、対話先は市場ではないので、市場(その先の経済)を見ていても解はない。過去何度か、こういうフェーズはありましたね。堂々巡りがまだ続いております。

・で何をするのか。
 さあ。テクニカルには、新オペの3ヶ月を6ヶ月にするとか、これだと今の規模・頻度を維持すれば、それだけでオペ残倍増。「広い意味での量的緩和」の強化。期待値が高いのは輪番の増額。あと演技じゃなくて実効性の高い方策は、個人的にはアイデアはあるけれども、日銀、それにも増して財務省、場合によっては外務省、もしかしたら米国がノーでしょう。なので、とりあえず書くのは見送る。

・で、やるの?
 さあ。いったん見送って市場ボラを上げる(そんなには上がらない)という楽しい手もあるが、そのリスクを冒す意味はあまりないかもしれない。マーケット的には、一つの材料が浮上してきたので、やる・やらないでトレードするしかないですね。もちろんインタバンクは素通りしますが。

・その他
 一連の騒ぎでもっとも驚いているのは白川総裁かもしれない。ちょうど海外に出張していたときであろうか。いきなり報道が出たので「えっ!」と思ったかもしれない。まあ、どの中央銀行も昨今はポリティカルに翻弄されているので、日銀だけが苦労しているわけではないと思う。バーナンキ議長なんて出口政策は全然急ごうと思っていなくても諸事情で「バーナンキsan」と呼ばれてしまう状況だし。

 それにしても政治情勢、前進しませんね。いろいろ消耗戦続くような印象。どうしてこういう状況になってしまったのか。個別に頑張るしかないです。とりとめないですが、こんなとこで。日々はもっぱらツィッター方面に出没しております。
[PR]
by bank.of.japan | 2010-03-10 01:53 | 日銀 | Comments(2)
米財務省の代理吸収についての雑感
 やや古いネタで雑感。FRBが公定歩合引き上げによる正常化を始めた直後、米財務省が「Supplementary Financing Program」(意訳・補完吸収プログラム=SFP)の再開を発表した。過剰流動性の吸収を財務省がお手伝いする、という構図で、最初は「そうなのか」と軽く受け止めたが、若干違和感もないではなかった。FRBはそれなりに吸収手段を整えてきており、吸収作業もそうは急ぐ必要はないため。つまり、逆説的には、財務省の手助けを必要とするほど何か切迫しているのかな、と思ったのである。
 海外ブログを見渡すと、あまりこの件は話題になっていない。かなりテクニカルな話なので、スルーされてしまったのかもしれない。唯一目に付いたのは、Econbrowserで、「Treasury Supplementary Financing Program (SFP)」をアップしていた。疑問はやはり財務省が唐突に手伝う理由で、「But why? If the goal were indeed to drain reserves, the Fed could do this by selling some T-bills out of its own holdings…」→、つまりFRB自身がリバースレポやらマッチドセールやらターム預金ファシリティなどを駆使すれば、そう急ぐ必要もない限りは回収は可能のように思える。
 特にターム預金ファシリティは、「長めの売手」のようなもので、FRBとしては初めての負債発行型の吸収のはず。これはそれなりに機動性は高く、負債発行→国債のようなもので、財務省のSFPと重複してしまうイメージがある。まあ、この手の話は裏があるように見えてしまうが、基本的に裏のある話はバレてしまうので、財務省は吸収する必要があるからSFPを再開させたと素直に受け止めるしかない。
 で、マーケットインパクトである。もとより、FRBの吸収は市場から見れば「運用」である。財務省のSFPも「運用」である。運用ニーズがあれば運用金利は上がらない。ニーズがなければ、金利が上がる。つまり、FRBの吸収する際の金利、またはSFPで発行する国債(のようなもの)の金利が上がるのである。
 一般的にバブル崩壊した経済の金融システムは、①景気が悪いので資金需要がない②(金融機関側に)信用リスクを取るインセンティブが薄れる-などが特徴。端的には、バブル崩壊後の邦銀のように短期債ニーズが強まる傾向となる。なので、FRB吸収&財務省SFPはある程度こなされるとは思うが、それ以上に吸収&SFPが多いと、多分ターム物金利が上がってしまう可能性が高い。
 それと、財務省がSFPで調達した資金は政府預金(FRBの負債側)に回り、この預金には多分金利は付かないはずなので、SFPの発行金利が高くなると、財務省は逆ザヤで損をしていく。そこまでしてやるのか、という気がしなくもない。
[PR]
by bank.of.japan | 2010-03-01 22:10 | FRB&others | Comments(5)


無料アクセス解析