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昔の国会論議はかなりマニアック、つまり面白い=専門用語に痺れました
 ちょっと調べ物があってネット検索してたらグーグル先生が昔の国会会議録を引っかけた。何気に読んだらハマッた(笑)。①政策主体の関係が想像を絶する(昔と今が違うのは当然だが…)②専門用語が飛び交い、しかも調節用語が混じって痺れた③委員会メンバーの表現がどきつい-ため。しばらく熱中するかもしれない。ところで、会議録を保管する国会会議録検索システムは凄いですね。これを作った関係者のみなさん、マジで感謝いたします。有難う御座います。
以下、ハマるきっかけとなった会議録の一部を紹介したい。

・第038回国会 大蔵委員協議会 第1号(昭和三十六年七月二十一日 金曜日)
大月説明員 「それでは当面の金融情勢と金融政策につきまして簡単に御説明申し上げます」
→大蔵省銀行局長が金融政策を説明とは…、銀行局日銀課だったんですねえ。感慨深い。

大月氏 「金融情勢でございますが、大体において引き締まりぎみに推移しております。すなわち、財政は外為会計が引き揚げ超過を示した。三百二十億円揚超であります。財政全体として約三百九十億円揚げになっている。この間、日本銀行券は八百五十億円増発になっております。その結果、この六月末の日本銀行券の発行残高は、一兆一千六百二十億円と、かなり高い水準を示すに至っておるわけです。その間、日本銀行の貸し出しは増加して、同じく六月末残高におきまして七千八百八十億円。最近における水準としては最高を示しておる。一方、全国銀行の預金、貸し出しの状況は、四月から六月までの間におきまして、実勢預金が二千三十七億円増加を示したわけでございますが、貸出金はそれを上回りまして、三千三百八十九億円の増加でございます。そういう意味で、オーバーローンの形が一そう大きくなる、市中金融は一段と引き締まりぎみに推移する、こういう状況であったわけでございます」
→金融政策の説明が資金需給の分析になっているのに驚き。まあ、馴染み深い用語なのである意味感動した。閉鎖経済に近いので、資金需給のひっ迫が金融引き締めなんであろうと思った(この辺は専門家でないので当てずっぽう)。全般に専門用語が多い感じである。質問も結構玄人な印象。「資金梗塞」という表現は面白い。外準運用関係の「自由円」って何でしょうね?

春日(一幸)委員 「あなた(大月銀行局長・筆者補足)の言うことは、たとえば、小児麻痺でどんどん死ぬ、どんどん死ぬようになったら一つワクチンを作ろうというものだ。私の言うことは、死んではいけない、殺してはいけないから、政治というものは予防措置、事前措置を講じなければいかぬぞ、こういうことを言っておる。そこに六カ月というこのディスタンスというものの価値があるわけなんですよ。どんどん中小企業が破産倒産するようなことになってきたら何か手を打とうというようなことは、どんどん小児麻痺になって死ぬようなことになったらワクチンを作ることを考慮するというようなことで、これは結局死んでから念仏を唱えておるようなことで何にもならない。政治というものはそういうものではない。それは坊主か墓場の死人焼きならそういうことを言うかもしれないけれども…」
→紹介をためらうようなどぎつい表現。でも、言わんとすることはビビッドに伝わる。春日委員の政府資金の民間預託の追及も読み応えアリ。内容も興味深い。

興味ある方は直接ご覧になった方が良い。全般に議論が濃いですね。歴史の勉強にもなるが、民間預託問題は今でも通用するトピックなので、インタバンク系を攻めたい方(そんな人いないか・笑)には参考になるかも。
ps 一万田日銀総裁の答弁を探ったら、これまた面白い。機会があれば紹介したい。
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by bank.of.japan | 2007-03-30 21:12 | 日銀 | Comments(6)
利上げに苦しむ地方金融機関の叫び=国債投資家懇談会より
 ドラめもんさんのところで見つけたネタですが、財務省の国債投資家懇談会における銀行関係者と思われる参加者の発言が興味深い。利上げが収益圧迫になる事情が率直に表れた発言だと受け止めた。具体的には以下の通りである。

 「日本銀行の利上げに預金金利は連動しているが、貸出金利は上げにくく、また、銀行間の競争も激化しているため、短期的には利ざやは縮小傾向にあり、債券運用への収益プレッシャーが一層高まると考えている。したがって、低金利状態が意外に長く続く場合もあり、長期金利は上期で1.7%程度と見ており、来期以降は割り切って残高を増やしていくしかないと思っている」
 「資金繰りを見る形でFB、TBをある程度購入する一方で、預金のコストが上がっているので10年に近いところの長期債を買って、ある程度バーベル型のような形の運用に今後はなっていくのではないか。20年債を購入できればよいのだが、10年超の債券の購入には内部では否定的な意見もあり、10年債が限界だろう」
 「一部の不動産業を除いた中小企業の資金需要はほとんど見えておらず、なかなか貸出金利を上げにくい状態が続いている。そういった中で、日本銀行の金利の正常化に関しては、超低金利の是正はよいが、中小企業への配慮をどのように行っていくのかに関心を持っている。
収益的に非常に厳しいものがあるので、運用セクターにかかるプレッシャーはきつくなるだろう。そのため、逆に金利はなかなか上がってこないとも思う」

 参加者の顔ぶれを眺めるに、恐らくは地方金融機関の方の発言ではないかと思った。下の二つの発言は同じ参加者によるものだが、「預金コストの上昇で…、20年債を購入できればよいのだが」という部分には収益確保に悪戦苦戦する現場の心情がよく表れており、アウトライヤーの悲哀を感じさせる。 
 そう言えば、日経新聞の商品面にガソリンスタンドの苦境が紹介されていた。元売りの高めの卸値に苦しむ弱小スタンドの姿は、金利の元締めの日銀の高めの金利に苦しむ弱小金融機関に重なるものがある。懇談会で機関投資家系は金利上昇を見込む発言をするが、それは願望であって、実際には運用部門への収益プレッシャーからベアフラット化するのであろうと思われる。

ps 日銀の利上げに苦しむ地方金融機関に金融庁はバーゼル2の攻撃。一体どうしろというのだろう。座して死を待て?
 
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by bank.of.japan | 2007-03-29 18:33 | 金融システム | Comments(23)
“三無主義”者から見た“団塊世代”の経済的捉え方
 新聞を読んでいて「2007年は団塊世代の大量退職が始まる年だったのか」と改めて気付かされた。このブログは金融・経済が中心テーマなので、世代論とかにあまり踏み込むつもりはないが、個人的な感想を多少言わせてもらうなら、私は「団塊」を含む年上連中から「三無主義」と呼ばされた世代である。団塊世代もいろいろで、いい人もいればそうじゃない人もおり、これは世代に関係ないが、「団塊世代」という集団に対しては、三無主義と勝手に呼びやがって、という反感めいた気持ちがないではない。見出しにはそういう皮肉さを込めたものだ。
 さて、経済的な捉え方である。まず、「大量退職」が若い世代の「大量採用」につながったのはプラスであると素直に喜びたい。経済の安定上、雇用の安定は欠かせないもので、機械的な見方で申し訳ないが、先の短い世代よりも、先の長い世代の雇用がしっかり確保される方が社会の長期的な安定上は好ましい。願わくば、不況時に仕方なくニートやフリーターになった若年層の雇用が改善して欲しいもの。新卒集中型の採用がもう少しばらけないものかと思う。
 団塊世代に対しては、個人消費の面で期待をかける論調もあるが、私はこの点はやや疑わしいと見ている。高額商品の売れ行きがいいとしても、それはほんの一部であり、マクロ的インパクトのあるものではないだろう。団塊=お金持ち、というイメージがあるが、本当にそうかはよく分からない。まさか、団塊全体が優雅に遊んで暮らしていけるほど余裕があるとは思えず、推測するに、かなりの方々は節約的な生活を強いられるような気がする。ちなみに、金融広報中央委員会の「暮らしと金融なんでもデータ」(知るぽると)によると、50歳代の保有金融資産(中央値)は534万円である。優雅な老後はごく一部で、大半はつましい生活じゃないだろうか。
 読売新聞の一面トップに団塊退職のアンケート調査があった。これまた意外だったのは、退職が「支障となる」と答えた企業がたったの「6%」だったこと。「多少はある」の31%を加えて見出しは「4割支障」となっていたが、実態は「6%」でしょう。戦力として期待されなさ過ぎるのは困ったもので、経済安定上は退職後はなるべく再雇用された方がいい。企業が戦力としてあまり当てにしないと、公的負担が増えて三無主義の我われにもツケが回ります(トホホ)。
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by bank.of.japan | 2007-03-27 21:43 | 経済 | Comments(13)
議事要旨が出ましたね=内閣府の味方ではないが
 私は景気の先行きには慎重であるので、内閣府の言い分に共感を覚える。
 すなわち「先行きの経済・物価については上振れリスクよりもむしろ、世界経済の動向等が我が国経済へ与える影響や、企業部門から家計部門への波及等が今後の経済動向の鍵となると考えられ、そうした観点から、下振れリスクには十分留意する必要があると考えている」
 「現在は、デフレから脱却するかどうかの正念場であり、また消費も足もと弱いという極めて重要な局面であることに鑑みれば、責任を持って金融面からしっかり経済を支えていただくことが重要であり、利上げを急ぐ局面ではないものと考える」

 一方、日銀側は「生産・所得・支出の好循環のメカニズムに変調は生じておらず、物価安定のもとで、息の長い成長を続ける蓋然性が高い」とし、そのうえで「現行の政策金利水準を維持した場合、金融政策面からの刺激効果は次第に強まっていくと考えられ、仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、行き過ぎた金融・経済活動を通じて資金の流れや資源配分に歪みが生じ、息の長い成長が阻害される可能性がある」との見方であった。やっぱり「第二の柱」で利上げした感が強い。
 なお、物価との関係では「(利上げは)1~2年先の経済や物価の姿を展望した上での、フォワード・ルッキングな視点に基づくものであること、いいかえれば、目先、消費者物価が弱含みに推移し、場合によってはマイナスとなることは十分念頭に置いた上で、その先を展望したもの」だそうである。
 この物価面のフォワードルッキングを重視するなら、岩田副総裁が「 2008 年度を含めた物価の先行きについて、『展望レポート』などで説明した上で、政策金利の引き上げを行っても遅くないのではないか」という主張の方が正しいように思う。

財務省は長期金利が上がらなければいいや、という感じである。もしかして利上げ継続・超ベアフラット化→極めて低い水準での逆イールドを期待している、とか? 
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by bank.of.japan | 2007-03-26 21:14 | 日銀 | Comments(14)
価格の不適切性の見極めは難しい=「本石町さんへ」さんのコメントの感想
 下のエントリーに対し、「本石町さんへ」さんから金融庁の考えについて意見が述べられた。細切れに私の意見を述べると読みにくいので、このエントリーでまとめてみたい。
 まずは以下の部分(引用はカッコ内。文意を損なわない範囲で校正してます)。
「今の状況を見逃すと、中期的に日本経済のためにはなりません。なぜなら、実体以上に資産価格が形成されてしまい、資産価格の安定性を欠くことになるからです」
 今後の資産価格がどうなるかは読みにくい。ご指摘のように急騰し、結果として崩壊に至る可能性もある一方、米住宅市場が崩壊して日本の不動産も打撃を受けるかもしれない。相場は水物であり、今後の方向を予め決め付ける必要はないと私は思う。なお、不動産の実勢は既にピークに達し、あまり上がらないとの見方もあるようですね。

「一部に見られる『不適切な』価格形成に関する規制をしていこうということです。例えて言うなら、本来は25%しか上昇しないはずの地点で、38%の上昇が起きて、実体以上に価格がつりあがった13%分が『インチキ』だとした場合、金融庁が目指しているのは、違法行為を取り締まることで、実体どおりの25%の価格上昇を目指そうということです」
 うーん、価格の不適切性を見抜くのは難しい気がする。例えば、金融庁がわが国最高の不動産スペシャリストであり、不動産価格のインチキを見抜ける力量があるならまだしも、現実はそうはいかないのではないだろうか。もちろん、「法に抵触する不適切な行為がないかを彼ら(金融庁)は見ていく」のは「本石町さんへ」さんのご指摘の通りだと私も強く同意するものだが、価格自体のインチキ性(不適切性)は証明が難しい。また、証明できたとしても、それを罰する権限(規定)があるのだろうか。この点、どなたかご存知ならご教授を。
 日本国内の不動産取引に不透明性(インチキ)があるとしても、そのインチキ分を上乗せした価格に対し、外人投資家が国際比較で割安だとみなして買っていったら、インチキ性は消滅してしまう。価格の妥当な水準はやっぱり難しい。
 月並みな考えかもしれないが、価格のインチキ性を排除するには、透明性の強化しかないような気がする。売る側と買う側の情報ギャップを埋める透明性の向上が図れると、インチキの余地は狭まるのだろう。ちなみにこの点については日銀総裁講演の以下を紹介したい。
 「ディスクロージャーの透明性が向上したとは言え、金融イノベーションが進む過程では、相対的に開示規制を受けにくい新たな取引手法やプレーヤーが出てきます。また、いくら資産価格を経済価値から計算すると言っても、90年代末の世界的なハイテク株の高騰にもみられたように、計算の前提を甘く見積もり過ぎてしまう「判断の誤り」は、どの市場でも起こりえます。地球上のどこかでのミスプライシングが、複雑なデリバティブや投資スキームを通じて、想像しにくい場所にまでリスクを運んでくる可能性は、国際的な連関の強い時代にはとくに意識しておく必要があります。こうしたリスクを最小限にとどめるには、金融イノベーションの進行や市場プレーヤー層の変化などに合わせて、ミスプライシングが炙り出されやすい透明な市場環境を、整備し続けていく努力が要ります」(新たな時代を迎えた日本経済と金融、大阪大学金融・保険教育研究センター設立記念講演 2006年11月27日)

投資は自己責任原則なので、あまり当局が一つの価値観を持ってミクロで介入するのは良くないと思う。上り過ぎたものは下がる、という市場機能に委ね、上げ下げがマクロ的な問題になりそうなら日銀の出番であろう。もちろん、違法行為はあってはならないのが前提である。
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by bank.of.japan | 2007-03-23 22:15 | 経済 | Comments(15)
公示地価、出ましたね=平均プラスでも中味は…
 マスコミ的に喧伝されるのは「全国平均、16年ぶりのプラス」であろう。中味は、都心の一部の急上昇、地方圏はなおマイナスの継続という二極化の進展ではないかと思った。手元にBNPパリバ証券のレポートがある。分析内容の一部をちょっとお借りします。
「3~4割と高い上昇率を示した地点もあり、バブルを懸念する向きもあるとみられるが、こうした地点が域内に占める割合は、住宅地が0.2%程度、商業地は3%程度」
「都市圏の地価回復は、都心部へのヒト・モノなど経済資源の集積が進んだ影響が大きく、生産性ひいては土地の収益性を高めているため」
「これはバブルとはいえないだろう」
「国土交通省によると、東京都心部の地価水準は、上昇したといっても、1984年の水準に過ぎない」
 もちろん、一部ではバブル的な価格形成もあるかもしれないが、全体として見た場合の地価は「下げ過ぎからの正常化」ではないかだろうか。しかも、地方圏では下落が続いており、「平均でプラス」というのは資産面からのデフレ脱却と言うにはまだ距離がある。ほんの一部の過剰な動きを心配するのではなく、全体的にもっと地価は持ち直して欲しいと期待するのがいいように思う。日銀「第二の柱」として地価がリスク要因として現実味を帯びる事態は、困ったというよりも贅沢な悩みでしょう。
 なお、金融庁が取引の公正性・健全性に注意を払うのは正しいと思うが、地価そのものに関心を向けるのは、私はちょっと目的が違うのではないかと言いたい。資産価格をコントロールしようとするとろくなことにならない。それがバブルの貴重な教訓と思う。

ps 城山三郎さんがお亡くなりになった。哀悼に意を表明したい。世間的にはまだしも、本石町的には「小説日本銀行」は名作であり、あの中で描かれた日銀特有の遺伝子はなお続いている面があるのではなかろうか。世代交代が進み、遺伝子が薄れるのを期待したい。
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by bank.of.japan | 2007-03-22 22:00 | 経済 | Comments(16)
このブログの使い方=日銀志望の学生さんへ
 大分前だが、日銀志望の学生さんから無事入行できた後に、このブログが参考になった、とのメールを頂いたことがある。実際にお会いしてないので、どの程度参考になったのか具体的に分からないのだが、恐らくスマートな使い方をされたのだろう。つまり、予備知識の予備知識として利用するにとどめ、面接などではこのブログの匂いを出さなかった、ということだ。
 まあ、そういう風な使い方をする学生さんが多いのだろうなあ、とずーっと思っていたので、特にガイドラインめいたことなど書くつもりもなかったのだが、この間、知り合いの日銀マン(中堅)が「(志望者の中に)このブログを読んでいる人がいるなあ」とボソッと言った。こりゃ、ちとマズイというわけで、言わずもがなかもしれないが、使い方の講習です(笑)。
 このブログは日銀関係者の多く(人数は不明)が読んでいるという感触はあるが、必ずしも全員が好意的というわけでもないだろう(と私は思う)。従って、このブログに反感を持つ日銀マンがたまたま面接官になる可能性もあるわけで、やっぱり匂いは出さないほうが安全です。匂いを出してもいい相手は、気心の知れた先輩であるとか、よく知っている人に限った方が無難だと思う。基本的には自己責任です。頑張ってください。

以下、半分冗談ながらやってはいけない、聞いてはいけない事項リスト。
・歓心を買うつもりで「バブルになるぐらいなら不況の方がましですよね」と言ってしまう
・慰めのつもりで「金融政策ってしょせんは運ですよね」と言ってしまう
・三〇兆円高地攻防戦の登場人物を詮索すること
・雨男(女)への興味を示すこと
・ウケ狙いで「替え歌」を歌ってしまうこと

ps 若手クラス(数年前入行組)からのマジなアドバイスとしては「最近の公表文ぐらいは読んでおいて欲しい」というのがありました。→日銀文学で妙な突っ込みは入れない方が無難。
個人的には面接官が何を聞くのか興味深い。
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by bank.of.japan | 2007-03-20 21:53 | ブログ紹介・お知らせなど | Comments(9)
金融庁幹部インタビューの感想=笑った点、疑問と違和感覚える点
 日経金融「不動産はバブルか」のシリーズで金融庁幹部のインタビューが出ていた。いくつか感想を箇条書きに。
・笑った点 念のために、これは幹部に向けたものではない。思い出し笑いである。さて、どこで笑ったのか。具体的には、「収益還元(DCF)法は必ずしも合理的とは言えない面がある」、「願望を織り込んでいるなら価格の妥当性を疑わざるを得ない」との部分だ。
 私はそっくり同じことを日銀考査局関係者に言い寄ったことがある。2002年秋、「不良債権問題の考え方」をぶち上げた日銀はDCFの活用を訴えた。あたかも、それが不良債権問題解決の魔法の計算かのように。「邦銀はDCF知らないから不良債権が処理できないのか、違うだろう、きちんと計算したら倒れちゃうからだろう、DCF使っても将来収益なんて願望じゃねえのか」と私。同じような言い分、まさか今日の当局者発言で目にするとは思わんかったです、ハイ。
・疑問と違和感覚える点  「今の不動産は通常の状態ではない」。そうですか、とは言いにくい。そもそも通常の状態は定義できるのか。地方圏はまだマイナスではないかと思われるが、それが「通常ではない」と言うならまだ分かる。では都市圏が「通常ではない」→「異常になりつつある」のだろうか。バブルと言いたいとしても、バブルかどうかは破裂して分かるものであって、予見的に言えるものではないと思うが…。
 また、金融庁が地価形成の通常・異常に興味を持つのはどうも違和感を覚える。ある銀行が特定案件ないし同種案件に突っ込み過ぎ、それが焦げ付いたら当該銀行の経営が傾く、という観点において、その案件(例、不動産関係)への個別的な興味を持つのなら違和感はない。金融庁の仕事として当然だ。
 
 そう言えば、日銀金融機構局も「バブルは繰り返すな」、「次のバブルは形を変えて忍び寄ってくる」と言っておる(笑)。金融庁もこのインタビューではマクロ的に不動産の異常(バブル化)に懸念を抱いている感じだ。とても困るのは、そして最悪は、日銀含む諸官庁が寄ってたかってバブルつぶしに奔走することだ。そうなってはバブル崩壊の最大の教訓(潰すより、潰れた後のケアが大事)がまったく生かされていない。「バブルへGO!!」は過去に飛ぶ必要もなく、今のこの瞬間が時代設定としてふさわしい気がする。
 諸官庁さん、そんなに不動産のバブル化に関心があるなら、一度集まって協議したらどうですか。日銀企画局が音頭取った方がいい。このままだと潰し合戦始まるんじゃないかと心配である。米国の不動産が怪しいというのに…、大丈夫なんだろうか、わが国の官庁は。

ps 考査関係者もまあ分かってはいたようです。DCFは不良債権処理を少しでも促進するためのスローガン的フレーズですね。ところで、日銀の景気見通しも「願望を織り込んでいる」のではないですかねえ、と嫌味を言ってみる。
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by bank.of.japan | 2007-03-19 21:25 | 経済 | Comments(18)
サブプライムローンが「住専」に見えるのは…
 私だけかと思ったら、取材先の中にも何人かいた。みんな大問題にはならないとみているのだが、(日本の)不良債権問題の記憶がなお生々しいためにサププライムの劣化がプライムに波及するイメージが拭いきれないわけだ。
 90年代前半、「住専を処理すれば終わり」と知り合いのMOF関係者は言っていたが、むしろ住専後が本番であった。米住宅市場の問題を日本の経験にそっくり重ねるのは正しくないが、この手の市場調整は終わってみないとマグニチュードが分からないので、個人的な性格(心配性です・笑)もあるが、どうも悪い方に考えがちである。
 この問題、私の巡回先ではぐっちーさんが早くから取り上げて、玄人筋の読み方をご披露されている。また、新しいところでは、厭債害債さんが関係者に直撃ヒアリングを試み、マスコミにはなかなか出てこない現地の事情を紹介している。興味ある方はご参照ください。
 しばらく前に届いた金融専門誌(私の会社の会員向けレター紙)で、MU投資顧問のシニアストラテジストの森川央氏がサブプライムローンの問題を取り上げていた。森川さんの警戒スタンスは私も同意するもので、この問題の「影響力が過小評価されているように思われる」との見方は納得できる。
 幾つかポイントを紹介したい。
・FRBが四半期ベースで実施する貸出担当者調査(07年1月)では、審査基準を強化したとの回答は16.4ポイント(前期は1.9ポイント)に急上昇。これは前回住宅不況の最中であった91年4-6月期以来の高い数値。
・サブプライムが急成長したのは低金利時の04年。しかも、初期の金利は低く、その後高くなるステップアップ型が多い。今年は高金利に転換される借り入れが相当あると推定される。
・商務省データによると、空室の売り物件は昨年末で210万戸。率では2.7%だが、65年以来、2%を上回ったことはない。
 不良債権問題が短期間で収束するのか、それとも深刻化するかどうかは読みにくい。日本のように間接金融にリスクが集中したのに対し、米国は分散が効いているとは思うが、分散が裏目になることもあるかもしれない。「薄く広く」が「やや厚くやや狭い」なら、リスク集中的であり、金融セクターの信用収縮がきついとマクロ経済への悪影響も起こり得る。
 大過なく終わって欲しいと祈るのみだ。これから世界的リセッションに突入すると、復活するのは何年も先である。私はこの商売になってついに一度も好況なるものを経験せずに現役引退と相成るであろう。ああ、私の老後は…。
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by bank.of.japan | 2007-03-16 18:33 | マーケット | Comments(14)
「金融システムリポート」のボスキンバイアス?=内輪ネタです
 下記エントリーの続編として、表題ネタを思い付いた。半分は内輪向けのシャレです。なぜそう思ったかと言えば、下記で一応は評価した「利上げが銀行収益に与える影響の分析」だが、実態はもう少し厳しい損益状況になるのではないかと考えられるため。つまり、損益実態を過大評価している可能性があるわけだ。
 これだけだと「ボスキン」につながらないが、同リポートの担当総括は白塚重典企画役。白塚氏は、ご存知のようにCPIボスキンバイアスのスペシャリストである。銀行収益の分析が過大評価される部分があるなら、それはある種のボスキンバイアスではないか、とひらめいた。
 さて、利上げした場合の銀行収益だが、私は①ベアフラット化は想定よりも強い②預貸スプレッドは想定よりも狭くなる-とみている。従って、ベースラインシナリオの収益シュミレーションは大手行・地域銀行とも実際のラインは下にずれるのだろうと予想している(多分)。
 まあ、統計はある程度ずれるもので、ずれが想定以上に大きいと「ショック」となる。白塚氏が昨年の“CPIショック”でどの程度のショックを受けたか不明だが、銀行収益が大きく下に振れたら二年連続のショックになるので、FSRにボスキンバイアスがないことを祈りたい。
 もっとも、米サブプライムローンが大問題となって、グローバルなマクロショックとなれば、FRSのボスキンバイアスなど超些細なショック。マクロ級のショックに見舞われるより、FRSのボスキンバイアスが注目されるのはむしろ平和であるかもしれない。まあ、収益分析の過大評価が目立つほどなければ私の負けです(笑)。
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by bank.of.japan | 2007-03-15 23:00 | 日銀 | Comments(2)


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