「ほっ」と。キャンペーン
カテゴリ:経済( 120 )
最近の色々な出来事に関する感想=日銀成長オペ、ユーロ、JGB
 ツィッターの方に行っており、こちらの更新が停滞した状況でありますので、この間に起きた幾つかの出来事について簡単な感想。というか、時間が経つとあまりコメントすることなくなりますね。まあ、物事というものは実は解説することはそんなにはなくて、取りあえず見守りましょうか、という程度のことなのだろう。

・日銀の成長基盤強化に資するオペ
 これは、矩を越えない、と言っているので、オペ自体は既存の供給手段とほぼ変わらないようなもの。なので、これ自体に関心を集めても意味はない。簡単にやるなら、特オペの名前を変えて存続させるのも手かな、と思う。といっても、それだとあまりに手抜きになるので、少しは工夫はしてくるのかもしれない。まあ、銀行は金余りで、担保もたくさんあり、ニーズはないようでもあるし。成長を願う日銀の気持ちを表すオペでしょう。

・ユーロ
 既に解説は出尽くしでありましょうか。現状、財政バラバラな中で、ユーロの接着剤はECBしかないので、ダメな国の国債は担保にせざるを得ないし、買わなきゃいかんという状況である。個人的には、全体として金融財政の規律を緩めるか、ダメな国は波乱を起こさずにユーロから離脱させる、という仕組みが必要であろう。理想的には欧州合衆国化なのだが、これはハードル高そう。統合にかける政治的意志が改めて問われるところ。当面は様子見。

・JGB
 で、ギリシャの次は日本、という論調が目立つのだが、これは時間軸の問題であり、目先の危機として論じるのはどうかな、という印象がある。もちろん、中長期的には問題になる話なのだが、足元では銀行貸出は減少傾向が続く一方、預金は増大中。つまり、国債買わないとしようがないよね、とホームバイアスは安定的であります。それに、ユーロ危機で株が下落するとJGBはやっぱり買われる存在である。世界の外貨準備は一時ユーロにシフトしたが、やっぱり基軸通貨として頼りないのが確認されたので、円で持つ国も少しは増えるのではないだろうか。

・景気(オマケ)
 景気循環のトラッキングレコードが優れているとされる景気ウォッチャー調査は5カ月連続で改善。特に雇用関連の指数は大きな改善を示した。雇用情勢の改善は安心できる材料で、景気は力強さには欠けるけれどもまあしばらくは良いのであろう。中国など新興国の好調さに感謝である。バブルが長持ちすることを願うしかない。中国については人民元切り上げ要求が強いが、インフレ圧力があるのなら、切り上げは中国にとっても必要なことで、中国が自らのために切り上げのタイミングを決めるだろう。これも見守るしかない。
[PR]
by bank.of.japan | 2010-05-13 17:07 | 経済 | Comments(2)
不況で二酸化炭素排出が急減=温暖化の脅威度と優先順位
 本日の日経朝刊(一面)に興味深い記事があった。ご覧になった方も多いと思うが、不況で二酸化炭素の排出量が急減したことを伝える記事だ。概略は以下の通り。

・主に国内生産部門のCO2排出量を各社の環境報告書を基に集計。
・鉄鋼大手4社は90年度比11%減少
・自動車5社、同39%減少
・いずれも不況による減産が主因
・07年度の製造業の国内CO2排出量は国全体の3割強だが、鳩山政権の掲げる中期目標「2020年までに90年度比25%減」は、自動社大手では達成された格好。
 現実問題として、エネルギー効率をいくら向上させても、プラス成長(生産増加)と同時にCO2排出を減らすのは無理なので、温暖化防止を最優先課題とするなら不況放置が最大の対策となる。で、問題は温暖化対策が本当に最優先課題なのか、ということ。
 言わずもがなだが、有無を言わさずに温暖化最優先となるケースは、温暖化によって人類滅亡とは言わずとも大災害などで大量の犠牲者が発生する可能性が高い場合だ。生活水準を落とさなければ死ぬかもしれない、となれば不況に耐えてCO2排出の削減に誰もが努力するであろう。
 温暖化対策の必要性に私がなお懐疑的なのは、経済的コストをかけるだけの価値があるかどうかが良く分からないからだ。不況がもたらす被害と温暖化がもたらす被害。後者の被害がかなり甚大であることが明確であるなら、不況に耐えるという覚悟が必要な気がする。
 それとこの関連では民主党政権が何をしたいのか分からない。よく言われることだが、CO2削減がそんなに重要なら、どうして高速道路を無料化するのか。むしろ値上げして温暖化対策に使うべきではないのか。まあ、そんなこと言っても、政権はドタバタ忙しそうで政策の整合性取る暇がないような感じである。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-10-16 22:37 | 経済 | Comments(8)
日経新聞のファーガソン教授インタビュー
 ニアルかニアールか、それともナイオールか迷うところだが、日経新聞にならってニーアル・ファーガソン教授とこれからは表記したい。土曜日にインタビューが出ていたので、個人用のメモとして要点を幾つか。経済的観点では、ファーガソン教授vsクルーグマン教授の論争は、後者に賛同するところが大きいのだが、政治的な観点では前者の主張も気になるところ。

・チャイメリカは中国の貯蓄と米国の消費が結び付く経済の概念だ。米中の相互協力を説く向きが多いが、明らかに利害対立があり、10年、20年では食い違いの方向にいく。
・中国の上の世代は争いを望んでいないが、若い世代は自信を持ち始めており、今後の中国は独断に走るようになる。
・ユーロはもう少し強くなって欲しいが、機能的には弱体なので、肩を並べていけると思わない。
・紛争を引き起こす3条件は変わらず存在する。①経済の不安定さ(より増している)②民族対立(特にイスラム世界)③覇権国家の衰退(米国の凋落)
・米財政がたどっている道筋は持続可能ではないことはクルーグマン教授も認めている。
・金融政策の量的緩和は有効だが、FRBの国債大量購入は長期金利の上昇を招きかねず、意図とは反対の影響が出る(流動性供給を狙った日銀型の短期物オペ中心の量的緩和が有効という趣旨?)

 インタビューの詳細に関心ある方は直接記事をご覧頂きたい。このエントリーに関連して本日の欧米ブログ巡回で気になったのはnakedcapitalismのリンクにあったDead Cats Bouncingの「America as Argentina?」でありました。ざっとしか読んでいないので、これからゆっくり目を通したい。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-10-04 23:15 | 経済 | Comments(4)
日銀短観、ここだけの解説=おまけ・クルーグマン教授の金融政策へのコメント
 日銀短観が出た。大方はマスコミが解説済みであると思われるので、ここでは細かいところを幾つか。
・DIが最も改善したのは大企業の「非鉄金属」 -62→-19 (+43)
・DIが最も悪化したのは大企業の「情報・サービス」 -21→-27 (-6) マスコミかな?
・DIがプラス圏なのは大企業「食料品」(+1)、大企業「通信」(+31)、中堅「通信」(+4)。 通信は何でこんなに好調なのだろう。
・DIが最もマイナスなのは中小「木材・木製品」(-73) 
 毎回好評?の金融機関の業況判断などはどうなっているのか。まあ、亀井モラトリアム織り込み前のものだと思われるのだが。
・銀行業はプラス圏に浮上。金融環境が良いからだろうか。
・証券業はまだマイナス圏ながらも25ポイント改善。相変わらずのボラです(苦笑)。
・貸金業・投資業等は-43のままでびくともせず。まあ、ノンバンキングは叩き潰されたので。酷いものである。
・このため、貸金業・投資業等の人員過剰超は強まった。
全体として、改善はしてもレベルは低いので、下げ過ぎの反動の域を出ない。設備投資弱く、まあ当分低迷色が強い感じが続くでありましょう。超低金利政策の出口は視界に見えない。企業金融支援策? そのままにしとくのが無難ではないかと…。「小さな下心、大きな失敗」。

 おまけ クルーグマン教授が「Does unconventional monetary policy solve the zero bound problem?」で金融政策についてコメントしていた。簡単に。
・BB(ベン・バーナンキ)はいろいろ非伝統的なことをやっている。
・それでB/Sは随分と膨らんだ。
・けれども10兆ドルとかに膨らますつもりはないであろう。
・ということは、我々はどっぶりと流動性の罠にはまっているんじゃないか。
 これは流動性の罠から抜け出すには財政刺激策が必要なことを訴えたエントリーを受けたもの。金融政策より財政出動という持論の繰り返しだが、実際に米政府が財政刺激を強めるのは難しいと思うので、米国はデフレ基調が続くのではないだろうか。結果的には、暗黙のドル安容認となって円高基調を通じて日本もデフレっぽくなる、という相関でありましょうか。
 イールドカーブはフラット化傾向となりそうだ。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-10-01 21:24 | 経済 | Comments(7)
イキパンとバブル=コカインとドル札
 最近、電車の中でイキパンの広告を見る。正確にはガムの広告ですね。最初はパンツの広告かと思っていたが、パンツ(イキパン)はガムの景品でありました。紛らわしい。何気に興味深いのは宣伝コピーであった。
「ガムを噛む。イキパンが当たる。イキパンを履く。自信がみなぎる。笑顔が光る。鼻歌がこぼれる。名曲がうまれる。デビューする。スターになる。長者番付にのる。プライベートジェットにものる。石油王になる。ドバイの。とにかくモテる」
 最後のところの「石油王になる。ドパイの。」である。この商品は(主として若者を狙った)大衆向けであるので、大衆の購買意欲をそそるコピーライトなのだろうと思う。憧れ?の対象として「ドバイの石油王」が挙げられているのだが、これは一般に定着したイメージなのだろうか。ドバイの石油王をかっこよく描いたドラマ、漫画とかあったのですかね。
 金融経済的には「ドバイの石油王」はバブル崩壊の象徴といった感じで、決して良いイメージはないのだが、CM的にはまだイケてる存在なのだろうかな、という感想を持った。それともコピーライターがちょっとひねって入れ込んだ表現なんでしょうか。たかがガムのCMにバブルを重ねていろいろ考えてしまった出勤途上でありました。ところでイキパンというのは普及した表現ですか?

 「ドル札の9割がコカインに汚染されている」という記事があった。簡単に紹介すると、米大学研究者が5カ国で流通するドル札を調査したところ、米国内では約90%に微量のコカインが付着。日本は約12%だったとのこと。この記事で推測したことなどは以下の通り。
・日本は他国に比べて麻薬取り締まりが厳しい。
・従って、国内で流通するドル札でコカインが付着したものは、海外で付着したものが持ち込まれた。
・中国も同様かもしれない(コカインは南米産の麻薬でアジアへの浸透はそれほでもない?)
・コカインを吸引するときはドル札でないといけないのか?
・そもそも紙幣を使う必要はあるのか?
・日銀券でも同様の検査をしたらどんな結果になるのか。
・ゼロ%?
・付着した日銀券が発見されたら意外とコカイン汚染があるということか。
 イキパンと同様にこれも出勤途上で考えたことでありました。

まあ、雑感のようなものです。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-08-19 21:12 | 経済 | Comments(10)
短観、弱いですね=目に付いた項目(イエレンSF連銀総裁の追記)
 解説はいろいろ出るので、ここではあまり世に出ない項目について。もっぱら金融関係。

・証券業のDI 前回比47ポイント改善。 
相変わらずボラが大きいです。ただし、先行きの改善幅は8ポイント。DIボラの大きさを考えると、この程度の改善は横ばい圏?

・金融関係の雇用判断DI
 さほど余剰超に振れていない。ちょっぴりとプラスに出た程度。「信用金庫・系統金融機関」は先行き不足超への転換が見込まれている。現場は繁忙気味で推移しているのでしょうか。貧乏暇なしでないことをお祈りします。

・貸し金業・投資業の雇用情勢
 上に関連するが、足元の雇用は22ポイントのプラスと思いっきり余剰なのだが、先行きは18ポイント改善してプラス4になる見通し。投資環境改善でいずれ人を雇うぞ、というシナリオか。そうなればよいと思う。

・営業用設備判断
 信用金庫・系統金融機関、証券業、保険業はまだ不足超が続いている。どういうことだろうか。拠点が不足している、もっと出店攻勢したい、ということなのかな。計画対比で不足ということですかね。

追記  CalculatedRisk氏がイエレン・サンフランシスコ連銀の講演を紹介しているのだが、以下のような前置きをわざわざ書いている。
「San Francisco Fed President Janet Yellen has been rumored to be one of the front runners to replace Chairman Ben Bernanke (although most consider Larry Summers the front runner, assuming Bernanke isn't reappointed)」
 CalculatedRisk氏、イエレン議長にご執心なのだろうか…。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-07-01 20:47 | 経済 | Comments(3)
日銀人事罫線がブル転(冗談ネタ)
 本日、日銀ではたくさんの人事が発令された。あるポストにおいて、ある人が去り、ある人が来た。これは景気循環を人事ジンクスで占う場合には、雨が去り、晴れが来た、というシグナルである。罫線的にはブル転。個人的には「キター」という感じ(笑)。まあ、偽りの夜明けかもしれませんが…。
 当エントリー、10人ぐらいにしかウケない本石町界隈の超マニアックネタでありました。
行った先で大雨になると、大変なことになるんですがね。罫線上のだましのブル転、地獄の二番底相場。まあ、それはないと都合よく解釈しましょう。
 具体的なご質問には答えられません。すいません。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-05-25 20:27 | 経済 | Comments(12)
正社員は長期雇用を享受するのか=私的な労働観です
 正社員と非正規雇用の格差解消のため、前者の権利を弱めるべきである、という議論がある。正社員の首を簡単に切れるようにすれば、労働のパイは広がるのかもしれない。または、会社がここぞとばかりに首を切って、雇用が一段と悪化する可能性もある。これは景気次第であろう。パイが広がっても、それは労働市場全体のワークシェアリングで、社会の不安定化をある程度軽減するだろうが、マクロ的に所得は増えるものではない。
 で、ここから先は私的労働観である。
 正社員・非正規雇用の格差問題では、終身雇用または長期雇用とかが正社員の特権みたく言われるが、この特権を享受できるかどうかは、労働者それぞれの価値観と会社の社風や労働の中味次第であって、中小零細企業を転々とした私自身は長期(or終身)雇用という概念は念頭になかった。
 食うための仕事についてちょっと書いたこちらのエントリーにも通じるのだが、長く働くことはむしろ絶望感を深めるケースもあり、精神的臨界点を覚えると自ら辞めることになる。労働そのものより精神的束縛がきつかった。社運のために「名前を変えろ」とかマジ顔で言われたりしたこともあった。
 必ずしも正社員=長期雇用とは限らず、少なくとも数社を渡り歩いた私の経験上、身の回りに長期(or終身)雇用を目指していた同僚はあまりいなかったように思う。実際、2年もいれば古参社員となるようなところがほとんどであった。たまたま私の経験した会社が入れ替わりの激しい職場だったのかもしれないが…。
 仕事はまず「食うため」にあり、形態として正社員が有利だからそちらを選ぶ。ただ、正社員になった後、その仕事に長期に従事するかどうかは別で、いろいろな事情で辞めるケースが多く、雇用はもとから流動的になっている、というのが私の印象である。
 企業規模によって雇用の流動化状態はかなり違うような気がする。終身雇用が前提になるのは、あくまでも公務員か大企業に限った話で、労働人口の大半を占める中小・零細企業はかなり労働は流動化しているのではなかろうか。この辺をうまく捉えた労働統計とかないですかね。

追記 新卒のみなさん、職場はいかがですか。仕事がつまらない、理想と違った、としても、長期安定職場であれば、とりあえず居た方が良いです。大抵の仕事は最初はつまらない、またはつまらなく見えるものです。ある程度大きな会社はいろいろな仕事があるもので、その中からもしかしたら面白い仕事が見つかるかもしれません。そんなものです。変な先輩・上司がいても、大きな組織であれば定期異動でどっかいっちゃいます。我慢しましょう。強烈にやりたいことが見つかった、向上心に燃えている、という状況であるなら辞めるのも手かもしれません。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-05-20 23:05 | 経済 | Comments(18)
クルーグマン教授の悲観は続く=大統領との会食は手応えなし?
 クルーグマン教授は相変わらず米経済の先行きに悲観的であるようだ。ロイターを引用したCalculatedRiskによると、クルーグマン教授は訪問先の北京で一部記者団に対して以下のように述べている。

"We're doing half-measures that help the economy limp along without fully recovering, and we're having measures that help the banks survive without really thriving," Krugman said.

"We're doing what the Japanese did in the nineties," he told a small group of reporters during a visit to Beijing.
...
"I'm mostly worried that the U.S. and the euro zone will have Japanese-type lost decades," he said.
...
"It's clear the administration won't take radical action to strengthen the banks any time soon," he said.

要約すると、経済政策は中途半端で景気は十分に回復しない。90年代の日本と同じだ。米国や欧州が(日本のように)失われた10年になるのが心配だ。米政権が抜本的な銀行強化策を早急にやろうとしてないのは明らかなんだよね。

 クルーグマン教授は実はしばらく前、オバマ大統領主催のホワイトハウスでのディナーに呼ばれている。この事実もCalculatedRiskで紹介されている。それによると、呼ばれたのは政権の対応に批判的な同教授とスティグリッツ教授。大統領は二人に質問し、その意見を拝聴したようだ。
 CalculatedRiskで大統領との会食をばらされたクルーグマン教授は自身のブログで「オフレコだから。何も言えないよ」と述べているのだが、北京で相変わらず悲観的な見解を示しているのは、大統領との会食にあまり手応えがなかったのかもしれない。マーケットの楽観もそろそろ一服というところでしょうか。まあ、そんなに落ち込むことはないとは思うが、ぱっとしない状況が続くのでしょう。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-05-11 22:31 | 経済 | Comments(9)
「“百年に一度の危機”と騒ぐのは平和ボケだ」について=日経夕刊コラム
 先週の(日付は忘れた)日経夕刊コラム「あすへの話題」で、確か安野光雅氏(画家)だった思うが、興味深い主張をしていた。簡単にまとめると、「現在の不況を“百年に一度の危機”を騒ぐのは平和ボケであって、国全体が焼け野原になり、金もなかった終戦直後を思えば大したことはない」というもの。経済危機に対する覚悟の決め方としては「最強」であるが、この「最強の覚悟」が試される場面で一番困窮するのも安野氏の老年の方々ではないか、と危惧してしまった。
 都市部を爆撃で破壊され、校庭に芋を植えて蔓を食べて飢えをしのぎ、終戦直後は預金封鎖・新円切り替えで金を失った経験を持つ世代にとっては、現代の世界不況は「何が危機なの?」といった感じは受けるかもしれない。安野氏も指摘していたように、とりあえず見渡した風景は、まあ普段通りに見えるし、新聞やテレビは相変わらず消費を煽る広告を出し続けているので。少なくとも、この危機では爆撃機が上空を飛び回って焼夷弾をばら撒くことはないので、「終戦」との対比では全然危機ではない。
 この危機がもたらす最大の脅威は、可能性は小さいと思うが、政府・企業・家計のバランスシートの焦土化である。すなわちハイパーインフレーションによる通貨価値の喪失、帳簿という形而上的な世界で焼夷弾が降り注ぎ、債権・債務が蒸発してしまうことですね。
 で、この状態になったとき、一番打撃を受けるのは、金融資産の大半を抱えている団塊世代以上である。債権・債務のほぼない若い世代が最も打撃はない。債務超過の人々(例えば私)は恩恵被るけれども、中途半端に年を取っていたら(例えば私)、体力ないので生きていくの大変です。いずれにせよ、若者の特権である「体力」が最大の財産となるはず。窮状から抜け出すために戦争を求める、という過激な意見(赤木智弘氏など)もあるが、戦争まで行かずともハイパーインフレはかなり不平等構造をチャラにする面がある、とは言えるだろう。
 この場合、年金も価値をどんどん失うが、これは若年層の負担もどんどん軽くなることになると思われるので、最高の年金改革かもしれない。ただし、実生活は餓死を避けるのが最重要という悲惨な状態になっているので、年金なんてもはやどうでもよい問題なっているかもしれない。この状況、どういう企業が生き残れるのか、よく分からないが、恐らくは生活必需品を提供する企業、その資源を持っている企業などが最強なのだろう。また、田舎で農業を営む体力ある若者が勝ち組となる。

 その他、幾つかの考察点
・終戦時の食糧危機は①鉄道網破壊、商船喪失などによる輸送インフラの麻痺②大量の復員・引き揚げによる人口増③外貨枯渇による肥料などの輸入難-によってもたらされたもので、現代では仮にハイパーインフレになって食糧難がぼっ発しても、短期的なものにとどまるのではないか。
・日本がハイパーインフレ化する場合、欧米など先進国でもぼっ発している可能性が高く、実際にはコモディティに対する各通貨の同時的価値の喪失である可能性が高い。
・もっとも、その場合は資源を持つ国家(カナダ、豪州)は優位となり、米国は資源もあり、軍事力もあるのでドルは意外に強いかもしれない。
・まあ、でも当面はデフレ基調でありましょう。

追記 終戦後まもなく田舎の肥料会社に務めた私の親父いわく、「最初は儲かって笑いが止まらないほどだったが、そのうち輸入制限とか緩和されてブームは去っていった」そうだ。
[PR]
by bank.of.japan | 2009-04-30 21:55 | 経済 | Comments(19)


無料アクセス解析