カテゴリ:金融システム( 44 )
“バーゼルⅡ”雑感=誰の誰による誰のためルールか
 基本的に金融システムに課するルールは、人間の体に例えると「健康維持法」であり、もともと健康体の人が病気にならないようにするのが目的だ。元気な人が元気なままでいるためのルールである。ということは、体調が万全ではない、生活環境が悪い、といった人にはこのルールは害悪を及ぼす恐れがあり、医者(金融当局)は患者(金融機関)の体調および生活環境または性格をもよく考えてルールを処方しないといけない。
 2月27日付の日経新聞「大機小機」で真和氏が「新BIS規制と中小金融機関」について論じていた。日本橋ふぁんど日誌さんも取り上げており、ご参照いただきたい。さて、真和氏も日本橋ふぁんど日誌さんも指摘されるように、地方金融機関の置かれた状況は厳しい。活環境が悪い(景気が悪い・地元に資金ニーズ乏しい)、栄養が十分取れない(収益が上げにくい)ために体調はすぐれない。そして栄養不足を補うために市場運用に仕方なく傾斜せざるを得ない(これは昔からそうであった)。
 そこで登場してきたのが、国際健康維持方法・改訂版のバーゼルⅡである。このルールでは、例のアウトライヤー規制などで市場運用部門が制約を受ける。リスク管理体制の構築、人員育成にコストがかかり、健康維持方法は体を疲弊させていくのではないかと心配される。
 さて、問題はわが金融界のルールの受け止め方である。もともとルールに細かく、真面目に対処する性格であり、特に最近は金融処分庁の猛威もあって、とにかくバーゼルⅡ対応に懸命である。厭債害債さんの「近頃の金融庁さま雑感 」でも言及されるように法令遵守面では「金融界では最近熱狂的なコンプライアンスブーム」である。そして「バーゼルIIのリスク量判定において標準的手法ではなく『先進的手法』を選ぶ中規模地銀がいくつかあり、それに何十億円もかけてシステムを導入したという。ここですっかり忘れられているのは、地方銀行が誰のために商売しているか、ということである」というのは重要なポイントである。
 もちろん、先進的手法がうまく機能するなら、どんどんやって欲しいと思う。しかし、結果的にルールを守ろうとして疲弊する、ルールを守ることのみ注力し、別な問題・副作用(病気)が生じていることを見逃すようでは意味がない。
 しばらく前、日銀金融機構局のバーゼルⅡのスペシャリストを招いて勉強会をやったことがある。「検査・考査対応のためだけのリスク管理システムが構築され、それとは別に自分達の使いやすい管理システムがある例もある」と言っていたが、二重帳簿みたいな管理体制になるようでは元も子もない。
 私の理解では、バーゼルⅡは国際的な紳士協定であり、がちがち国内適用するシロモノではないと思う。身の丈ないしは体調に合った形に柔軟に適用すればいいのではないだろうか。そんなこと言うと、モラルハザード招くじゃねえかあ、と怒られるんですかね?
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by bank.of.japan | 2007-03-02 22:15 | 金融システム | Comments(12)
地銀投融資に見る「問題の本質」=いびつな景気回復の症状
 本日の日経報道「地銀の投資、監視強化=ファンドなどリスク商品」を読みつつ、問題の本質は別なところにあるのではないかと思った。つまり、投融資行動の一部を監視強化するにしても、なぜ監視強化しないといけない投融資行動が発生するのか、ということだ。監視強化の是非論も問われようが、しょせんは金融庁のやること(ちなみに日銀が『監視強化』の方針を決めた形跡はない)なので、必要と判断したらおやりになるんであろう。ただ、「監視強化」は業界的には「自粛」と解釈されやすいので、記事で挙げられたリスク商品への投資にはブレーキがかかる公算が大きい(経営健全性の監視が得てして特定商品の規制になる問題もある=商品価格の変動性を高めるリスクあり)。
 さて、「なぜ監視強化しないといけない投融資行動が発生するのか」である。結論を言えば、資金(借り入れ)需要が乏しいためだ。この点は記事でも書かれている。最大の原因は「地方企業の資金需要の低迷だ」と。この結果、もともと預金超過の地方銀行は、貸出の代替として①国債を買う②ファンド系の商品を買う-しかない。そうしないと、まずバランスシートがバランスしないし、バランスさせた上でリターンを得るには単純に金利リスクを取るか、ファンド系の商品で収益を狙うしかない。もうお分かりであろう。監視強化の対象となった「投融資」は、資金需要が低迷した「結果」に過ぎず、マクロ経済との関係では言えば、資金需要を伴わないいびつな景気回復の症状が地方銀行の資産構成に表れているわけだ。
 これではいくら監視強化しても、「資金需要を伴わないいびつな景気回復」が続く限り、地銀資産には何らかの症状が出続ける。「症状」というとネガティブな印象を与えてしまうので言い方を変えるが、貸出以外でリスクを取ってリターンを得ないといけない地方銀行にとっては「自然現象」であり、監視は強化してもいいが、自然現象にブレーキをかけるものであってはならない(もちろんリスク管理が適切かどうかは把握すべき)。
 しかし、先に述べたように、監視強化は自粛を招きやすい。すでに金利リスクを取る方向に傾斜した銀行は「アウトライヤー」規制を懸念する。一方、ファンド系への投資も自粛ムードが広がれば、地方銀行のリターンを取る方向性は出口がない。これに加えて日銀は利上げし、さらなる利上げを目指す構えを崩していない。経済構造が分断化し、景気回復の恩恵が地方銀行に及んでいないという事実を踏まえない金融行政の対応、そして金融政策の舵取り。これで財政が緊縮化に向かい始めたら…。地方銀行(&地方経済)は体力をすり減らす方向にいくであろう。
 金融システムの置かれた状況は金融経済動向と密接である。金融・財政運営、それに金融行政がきちんとバランスの取れた形で運営されるのであろうか。日経記事は、この点に関して大いなる不安をもたらしている。大丈夫なんですかね、この国の経済運営は。

ps この問題に関しては日本橋ふぁんど日誌さんも鋭いエントリーをアップされている。ご参照あれ。
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by bank.of.japan | 2006-11-02 21:32 | 金融システム | Comments(8)
貸出統計を“基準改定”すると…=CPIショック的な下方修正だろう
 日銀が本日発表した「9月の貸出・資金吸収動向」によると、銀行融資残高の前年比伸び率(前月は1.9%)は1.6%に鈍化。これは都銀伸び率が前月の0.9%が0.4%に大きく減速したため。伸び率のチャートは腰折れた格好となっている。都銀融資の増勢が失速気味になった要因として個人的に面白いと思ったのは「公的資金完済によって経営健全化計画の縛りがなくなり、中小企業向け融資が減った可能性がある」というもの。
 基調的に資金需要が弱くなっている面もある気がするが、公的資金返済要因の貸出減少も確かにあり得る話だ。もとより、政府の圧力を受けた実績作りの中小企業向け融資は、過去にもSPC(中小企業扱いになる)向け融資や大企業の子会社向けなどが指摘されたりして、員数合わせみたいな側面があった。実体が伴わない“官製融資”と言うべきで、貸出の実力を知るうえでは統計から除外すべきものなのだろう。
 除外すべきものはまだある。地公体向け貸出もそうだ。これなど公債みたいなもので、融資とはみなしにくい。それと、SPCを使った仕組みローンで、最終的に国債に金が流れるものも除外すべきであろう。市場金利が上がって借り入れに転換されてしまったCP(コマーシャルペーパー)分も外すべきだと思う。こうした貸出に見える非貸出を取り除く“基準改定”を行って貸出統計を作り直すとどうなるのか。恐らくはCPIショック的な下方スライドが起きると思う。
 貸出統計は旧CPIとほぼ同時期にプラス転換している。今“基準改定”すると、かなりの下方修正になるのではないだろうか。都銀の公的資金完済は今後も続く。“官製融資”のはく落は統計押し下げに働くはず。そして、私が挙げた除外すべき融資がほかにもあるなら、さらに統計は下にスライドする。みなさん、融資の姿を借りた非融資について情報あればご指摘を。
 私のイメージは、“基準改定”した貸出統計はマイナス圏に落ち込む、というものだ。うーん、マネーの世界ではデフレ下の利上げとなるなあ。預貸利ザヤ、圧迫される構図である。上期の収益が冴えなかった銀行、下期はアウトライヤー路線でありましょうか。
 
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by bank.of.japan | 2006-10-12 21:07 | 金融システム | Comments(8)
日経『経済教室』の「邦銀、債権流動化加速を」は正しいか
 本日の日経「経済教室」を読んで幾つか引っかかった。まず、見出しとなった債権流動化の加速論だが、流動化するかしないかの是非論に絞ると流動化はした方がいい。ただし、マクロ的な資金循環における「金融システム(銀行群)」が背負った機能(宿命)の観点では、必ずしも流動化加速が現実的な対応とは限らない。
 たびたび指摘することだが、銀行経営を資産側だけで論じるのは中途半端で、負債側の特性を考慮しない議論は不毛となる。邦銀の場合、預金に対して受け身であり、経済教室の筆者も指摘する「銀行部門に向かう家計(それに企業)の膨大な資金」は受け入れざるを得ない。
 この状態で貸出資産を流動化すると何が起きるか。その分、資産は減り、一方で負債は変わらないので、バランスシートはバランスしなくなる。従って、銀行は減った分を補う貸出を実行するか、別な資産を組み込むしかない。現状、借り入れ需要は弱いので、別な資産は「国債」となりやすい。筆者は「不動産融資」を問題視しているが、不動産融資を流動化させると、そっくり国債が資産に組み込まれ、イールドカーブはフラット化圧力が加わる。
 筆者は債権を流動化して「グローバル市場に移転せよ」と唱えるが、もともとわが国の貸出利ザヤは国際比較すると極端に低いので、欧米投資家は恐らく買わない。強引に流動化すると、流動化した分は国債が買われ、その分貸出金利には低下圧力が働く可能性があるので、ますますグローバル市場への移転は難しくなるであろう。それに流動化資産は国内で還流し、なんのことはない金融システム内で持ち合いになるだけかもしれない(多少生損保に流れるかも)。
 それとこれは筆者の誤解ではないかと思うのだが、「邦銀は中規模以下の企業への資金パイプが細い」、「大企業相手の貸出で主要な収益を得る構造が維持できた」などの指摘は事実と異なる。過去数年、大企業は有利子負債の圧縮に動き(資金循環上で企業は資金余剰に転換)、しかも融資は超低利(多分不採算)である。また、銀行貸出の大半は非製造業の中小・零細企業である(そして住宅ローン)。
 さらに言えば、筆者のマクロ的な問題の捉え方はずれている気がする。「不動産向け融資」を問題視しているが、むしろ「不動産ぐらいしか資金ニーズがない」というマクロの資金需要の弱さ(マネーの世界はなおデフレ的)が本質的な問題ではないのか。それに不動産向け融資が増えたとは言っても数兆円レベルであり、貸出資産全体のシェアから言って集中リスクを心配する状況なのか疑問だ。金融システムの効率性にも疑問を投げかけてもいるが、むしろ国内資金循環において銀行は集まった預金の一部を国債に振り向けることで最大の資金不足主体である政府に資金を流し、おかげでこんなに市場金利が低い(資金コストが低い)のである。筆者は高名な方のようだが、学界と実業(金融)界の距離が絶望的に遠いのだなあ、という印象を持った。
 なお、金融界が直面し、しかもファイナンス的にも喫緊の問題とは日本橋ふぁんど日誌さんがご指摘されている実情である。ご参照あれ。私が個人的に願っているのが、日本特有の金融風土における監督当局の規制の在り方において、学界のファイナンス理論の有識者が生きた助言を行ってくれることなのだが…。
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by bank.of.japan | 2006-10-11 21:30 | 金融システム | Comments(23)
邦銀は本当に儲け過ぎなのか=「バブル期以来の収益」とは言っても
 大分前だが、「バブル期以来の収益を挙げた邦銀は儲け過ぎ批判を気にしている」との新聞記事があった。邦銀収益のカラクリについては、引当金の戻りが大きく寄与し、「貸出増大・預貸利ザヤ拡大」という健全なものではないことは過去のエントリーで何度か書いたとおりである。ここでは、収益規模を過去と単純比較することが正しいかどうかについて考えてみたい。
 まず、バブル期と今とで違うのは、会計基準が透明化したことだ。不透明な時代の会計基準に基づく「収益」と、透明になった基準による「収益」を比較する場合、隠れた部分の収益を勘案する必要があるのではないか。
 ご存知のように、バブル期の銀行は「膨大な土地・株式の含み益」を抱えていた。この「含み益」を力の源泉として邦銀が海外市場に低利融資の攻勢をかけ、シンジケートローンなどの利ザヤが叩きつぶされたわけだ。「(邦銀のせいで)儲からないからやめる」と言ってシンジケートローンからの撤退を宣言した米銀(シティバンク?)がいたのを覚えている。
 その後の邦銀はどうなったのか。バブルの崩壊で含み益は吹き飛び、あらゆる手を使って不良債権を処理した邦銀はもはや余力はなく、自己資本の不足で公的資金を注入される結果となった。現在の会計基準が体力状況をほぼガラス張りにしていると仮定するなら、海外市場を荒らし回れる「含み益」などないことが分かる。
 「収益」規模がバブル期と同じとは言っても、実力ベースで体力比較するなら、今は情けないほど非力であると言えよう。なお「儲け過ぎ」を正しく解釈するなら、本来は取ったリスクに対して不当なリターンを得ている、という意味で、非常に低い預貸利ザヤは儲け過ぎではなくて、儲からなさ過ぎとも言える。もっとも、低い利ザヤであることは、私も含めて住宅ローンを背負った家計は助かるのだが。預金金利上げるぐらいなら、貸出金利を下げて欲しい、と願う次第だ(笑)。

 大量に人を採用している邦銀はリテール強化が念頭にあるようだ。これについて思うことがあるのだが、この問題ではvon_yosukeyanさんが非常に参考になるエントリーをアップしているので、そちらをまずご参照願いたい。
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by bank.of.japan | 2006-10-06 20:41 | 金融システム | Comments(16)
銀行“便乗気味”利上げの行方
 ゼロ金利解除に伴い、銀行間では「普通預金」の金利引き上げが相次いだ。そして、短プラも引き上げられそうである。前者については、ほぼ0金利を一部は0.2%に、多くは0.1%に引き上げる。一方、短プラは0.25%の引き上げ幅となる見込みだ。「預金」を「融資」する際の単純なコスト計算をすると、0.1%のコスト上昇に対し、0.25%が融資金利に転嫁される格好となる。利ザヤは結果的に0.15%広がるわけで、この分は便乗気味の利上げである。
 「気味」としたのは、本当に便乗できるかどうかが不透明なため。預金サイドについては、リテール顧客獲得のために大半の銀行は金利を上げざるを得ない。一方、貸出サイドだが、資金需要はそう盛り上がっていない。何度もエントリーで取り上げたように、貸出増加で目立つのは激戦商品である住宅ローンや擬似国債である地公体向け融資などで、企業からの借り入れニーズは低調。そういう中で、短プラ引き上げ分を簡単に転嫁できるかどうかは難しいように思う。
 ここで問題となるのは、大企業は借り入れ依存度がかなり低い一方、中小企業は依存度が高いこと。短プラ引き上げは、大企業ではなく中小企業を直撃する公算が大きく、利上げは弱い立場ほど直撃されるという逆進性が生じしてしまう。日銀の利上げロジックは、潜在成長率に対して高過ぎる現在の成長を潜在成長率以下に抑制すること。そして高過ぎる成長の原動力は設備投資であり、利上げは設備投資を抑制しないといけないわけだ。
 間接金融を通じた金融政策(利上げ)の波及メカニズムでは、先に記したように中小企業を直撃し、大企業の特にキャッシュフロー内で設備投資するところはほとんど影響を受けない。短プラ引き上げを貸出にフル転嫁すれば銀行収益は増えるが、中小企業の収益が移転するだけとなる。さらに移転を分解すると、銀行は移転された所得の半分弱を預金者に還元する構図である。預金・貸出ルートで見た利上げの実像はマクロ経済的にはあんまり筋が通らない感じだ。
 なお短プラ引き上げが貸出に転嫁できないと、銀行は業務純益が減少すると考えられる。短プラ引き上げの行方、一体どうなるんでしょうね。
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by bank.of.japan | 2006-07-19 22:10 | 金融システム | Comments(0)
金利リスクをばら撒く国家のアウトライヤー規制とは
 アウトライヤー規制に関して、以前から“そもそも論”としての疑問点があった。簡単に言えば、ミクロで正しいことがマクロ的な不安定化をもたらすのではないか、ということだ(一言で言うなら、合成の誤謬)。金融行政上、バンキング勘定の金利リスクが過大にならないように規制をかけるのは一般的には正しい。だが、日本の財政事情、および国内資金循環における金融システムの役割などを考えると、辻褄が合わない側面も浮かび上がる。
 金利リスクを取るとは、国債を購入することだが、日本ではご存知のように政府が大量に国債を発行している。金利リスクを国内に大量にばら撒いているわけだが、金融システムの銀行群がかなり吸収しているため、財政リスクプレミアムが強く顕現化するには至っていない。
 銀行群が金利リスクを取っている(国債を購入している)のは、そうしないとバランスシートのバランスが取れないからだ。これを国内資金循環(ストックベース)で見てみたい。資金過不足の充足状況だが、政府の不足は企業&家計の余剰で賄われている。余剰が不足を埋める大きなルートは郵貯を除くと金融システム(銀行群)であり、具体的には余剰は銀行負債側の預金となり、銀行はその見合いに国債を保有する。近年、企業が負債(借り入れ)圧縮に動き、その反対の動きとして銀行資産における貸出が減少してきたが、一方で預金は増大してきたため、負債(預金)増大に対して受け身である銀行はいや応なく国債保有を増大させてきた(バランスシートをバランスさせてきた)
 上記の構図は、ホームバイアスが強い(お金が国外に出にくい)わが国の特性としては、当たり前の資金循環であり、銀行は資金を余剰のところ(企業・家計)から不足のところ(政府)に回すうえで金融仲介機能を果たしてきたと言える。銀行資産の構成上、信用リスク(貸出)が減った分が金利リスク(国債)に振り替わったに過ぎず、これはある意味日本経済における自然現象であると考えられる。
 アウトライヤー規制がどの程度厳しく運用されるのか不明だが、国内資金循環の一断面に過ぎない金融システムにこの規制を強くかけ過ぎると、資金不足の主体(政府)に資金を回す機能が弱まるリスクがある。起こり得ることは、銀行群はバランスシートをバランスさせるために国債は保有せざるを得ず、金利リスクを最小化させるために短期債シフトを強め、イールドカーブのスティープ化を招いてしまうことかもしれない。
 日本において、子供(銀行)がならず者(アウトライヤー)だとしたら、それは親(政府)が超ならず者(巨額の財政赤字=金利リスクの超バラマキ屋)だからであって、子供らを取り締まっても意味はない。取締りを強化しても、親(政府)が悲鳴を上げ、悪い金利上昇となって国民に降りかかってくる。政府にしても、好きで超ならず者になったわけではなく、家計・企業が金を使わなくなって不況になったから財政支出を拡大(金を使う)せざるを得なかったからだ。
 日銀が利上げし、金融庁がアウトライヤーを取り締まる。財務省、何だか気の毒である。
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by bank.of.japan | 2006-05-08 23:21 | 金融システム | Comments(10)
リスクを取らねば生きていけない、リスクを知らねば生きる資格がない
 平成18年度の日銀考査方針が12日発表された。この中で、前年度考査を踏まえ、全体として「不良債権処理の進展や与信コストの減少から収益は大きく増加し、経営体力も回復している」と評価されたが、一方で「リスク管理や経営管理面では、なお課題も多く、収益力の向上という面でもさらなる改善の余地がある」との厳しい状況も浮き彫りとなった。
 リスク項目での問題点は以下の通り。
<信用リスク>
・債務者企業の将来キャッシュフローの見積もりが不適切
・地価下落の続く地方を中心に、担保不動産の処理見込み額が実勢からかい離
・債務者企業の経営改善計画の検証や経営指導が不十分
・シンジケートローンや不動産ノンリコースローンの将来キャッシュフローの見積もりや担保評価で問題のあるケースがみられた
<市場リスク>
・大手行ではリスク計量手法の精緻化を進めつつ、金利リスク制御方向で慎重な運用スタンスを継続する一方、地方金融機関は収益面の要請から、総じて有価証券運用を拡大し、市場リスク管理の重要性が増しているが、管理体制の整備が遅れている先が少なくない
・多くの金融機関では、運用利回り確保の観点から、仕組み債、不動産ファンド、ヘッジファンド等への投資を積極化しているが、リスク管理やリスク量の把握の面で問題のある事例が少なくない

景気回復、日銀利上げ、などが話題になっているが、金融システム周りはちょっと違う風景にある。収益増大とは言っても、与信コストの減少によるもので、貸出増加&貸出金利の上昇によるものではない。むしろ貸出は、増やそうとすると、金利が下がりやすい(or上がりにくい)、という構図で、利上げ懸念で急騰する市場金利とは別世界にある。
 特に、上記の問題点に透ける地方金融機関の経営状況はなお厳しいように思われる。もとより、金融業はリスクを取らないとリターンがない。地方においては、貸し先は乏しく、リターンを得るには、金利リスクを取る、高金利の仕組み物に手を出す、ぐらいしか手がない。適切なリスク管理、高度なリスク管理は、つまるところリスク管理の厳格化であり、結果的にリスク回避的になりがち。当局の言うままにリスク管理をがっちりやれば緩慢なる死を迎える恐れがある。
 仕組み債など売れているのだろうと思う。しかし、見た目おいしそうだが、毒も含む食い物であり、毒性の低いものなら苦い程度だが、毒性が強いと激痛が走ったり、悶絶したり、痺れまくるもものある。本当に景気がいいなら、目の前にはおいしくて栄養価の高い食べ物が並ぶはずだが、残念ながら、安全だがリターンがない(栄養価が低い)、おいしそう(高金利)だが毒があるものしか並んでいない。
 無理なリスクを取らないと生きていけない、無理なリスクを知らないと生きる資格がない、というかなりしんどいハードボイルドな状況に金融システムは置かれているように思えて仕方ない。こういう心配は杞憂ですかね。
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by bank.of.japan | 2006-04-13 19:42 | 金融システム | Comments(10)
金利上昇と銀行収益の相関に関するコメント紹介
先のエントリー「利上げと銀行収益の相関」に対して、銀行関係者の方からメールでコメント頂きました。利上げで収益が増大するシナリオについての考察で、実務的な観点で非常に参考になり、エントリーとして紹介したいと思います。いくつかの条件付きですが、確かに収益増大の可能性はありそうです。投稿者さん、ありがとうございます。

以下、メール内容(ママ)です。
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金利上昇と銀行収益の件、
キーワードは 預超への転換と思います。 97-8年当時とは違い、現状はほとんど全てのメガバンク (地銀はもっと以前から)が預超に転換していて、 確かに試算してみると、金利上昇で、銀行全体では収益が向上することになります。

当然、
①金利に反応して流動性預金が思い切り流出して預超が再転換してしまえばこの前提が崩れること、
②市場部門が金利ポジションを過大に取っていれば市場部門の収益悪化が流動性預金の収益向上を上回り、収益向上は望めないこと
③何れにせよ、金利上昇→銀行全体収益向上は、金利上昇前→金利上昇後に直接行く、その意味で静態的に見ているわけですが、その間、銀行全体はともかく「市場部門」は、 投資済みの国債やSWAP RCVの評価損で死ぬことは事実。

といったことはあります。

ただ、②、③は、そこを(市場部門が)うまく立ち回れば、との漠然とした前提以上にストレートに試算してみると、座視していても、(市場部門の評価損は膨らむが)銀行全体はやはり収益が上がるようです。

そう、要するに、我々は、全体としてみればそれでも 「ショート」のようです。
(最後の前提は、①流動性預金が想定を大きく超えて流出しない ということです。個人的に、これについては Big If つまり 結構怪しい前提とは思っていますが、一方で金利がつく世界といってもいっぺんに3%程度にならなければ、意味あるほど顧客性預金の金利は上げないでしょうし、であれば極めてゆっくりしか流動性預金から流出しない、もありかなと、正直なってみないとわかりません。)

不思議な感じではありますが、要するに、負債(預金)から収益を組み立てる、そういう時代になっているのかもしれない、などと思っています。

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本石町日記の補足 全体が「ショート」で、利上げがあっても「普通預金」など流動性預金の利息が上がらず、しかも流動性預金が流出しないなら、収益増大は見込めそう。ここで焦点となるのは、普通預金の利息が上がらないことに社会的な批判が起きかねないこと。そして、採算割れ決済口座の切り捨てが出来るかどうか。シナリオとして成立しそうながら、ハードルは高そうな感じです。みなさんも、ご意見あればどうぞ。
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by bank.of.japan | 2005-08-31 18:01 | 金融システム | Comments(10)
利上げと銀行収益の相関
 一般的には、利上げ局面において銀行収益は減少し、利下げ局面で増加すると理解されている。あくまでも個人的な大雑把な解釈だが、前者は、利上げに伴って資金の調達コスト(市場性資金の調達や預金金利)はすぐに上がるが、貸し出し金利の引き上げに時間がかかるため。後者は、逆の動きで、調達コストはすぐに下がり、貸し出し金利の低下が遅れるため(違ったらご指摘を)。私の記憶が正しければ、1997年度の決算見通しにおいて、多くの都銀は「利上げの可能性」を前提に業務純益減少を見込んでいた。この中で、業務純益の増加を見込んだ都銀は一行のみ(利上げ対応のALM運営を行っていたはず=スワップで活発にペイする)だったと思う。
 最近(と言っても先週前半)、銀行株の上昇に関して、日銀の量的緩和解除で(短期金利が上がると)銀行収益が増加することが期待されている、との解説やアナリストのコメントを見た。どういうメカニズムで収益が増加するのかは書かれていなかったので、解説・コメントのロジックを断定的に論評するのは難しいが、利上げ→収益増大との見方は???だった。強いて収益増加のメカニズムを推測すると、①融資の大半はスプレッド貸しになっている②従って簡単に貸し出し金利を上げられる③そうなっても貸し出しニーズは落ちない-といったことであろうか。または、利上げに伴って急激に借り入れ需要が発生し、一気に貸し手優位となり、利上げ分以上の大幅な貸し出し金利の引き上げが可能になる、といったことが起きてしまう、とか。
 ちなみに今日、ある地銀の方と話した内容。
「景気が良いようですが?」
「企業決算が良いだけ。それだけですよ」
「資金ニーズは?」
「ない」
「住宅ローンは伸びているようですが?」
「でも融資条件を緩めている。他行に借り換えされるのが不安だ」
「景気が良くなれば資金ニーズは増えるのでは?」
「そんな気配は感じられない」
 私の行ったいわゆるオフサイトモニタリング一件だけで状況を判断するのは危険だが、利上げすると収益落ちそうな気がするのだが、特に銀行関係者の方はどう思われるだろうか。私の知る限り、収益が増えると見る向きはほとんどいないのだが…。債券ポートも巨大化し、フルヘッジは不可能であろうから、やはりダメージを受ける面が大きい気がする。
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by bank.of.japan | 2005-08-29 21:31 | 金融システム | Comments(3)


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