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「あるMBAの憂鬱」を「アリとキリギリス」で考察してみる、の巻
 あるところで、ある人と知り合いになった。民間大手に務めるその人は、厳しい社内選抜を経て米国へMBA留学し、帰国後は本部で働いている。最も脂の乗った働き盛りの(私から見れば)若い世代なのだが、ちょっと疲れて、ややブルー(憂鬱)な感じがあり、いろいろと話す中で「どっか良いところないすかね」とボソッと呟いた…。
 その人の仕事内容は以下のようなもの。
・偉い人に対する各種ブリーフィング(初歩的なものから難しいものまでレベルは雑多)
・偉い人が対外的に何か発言するときの問答作り(ありとあらゆる場面を想定)
・いろいろなところとの調整(対内的)
・いろいろなところとの調整(対外的)
 これを聞いて私は言った、「それって日銀で言えば企画局の仕事だよ」と。日銀の「金融士」、じゃないや(苦笑)、「企画士」らは上記の内容を日々黙々(多分)とこなしている。多くがMBAorロースクールor海外当局(機関)への留学を経験しており、まあ全員どうかは分らないが、ブルーな感じはない。でも、知り合った人はブルーであった。なぜなのか。ちなみに、早速コメントを頂いたので、その人のタイプだが、前向き&誠実&気配りよしのさわやか系の好青年(=私から見て若い)である。
 さて、アリとキリギリスである。限りなく同業?の匂いがするにしてはややハイブローの「奇奇怪怪さん」が「現代版アリとキリギリス」というエントリーをアップされている。詳しくはそちらを参照して頂くとして、「日本人はいつまでもキリギリスに貢いで余計に働く羽目になるアリであり続ける」ことを前提にMBA(orロースクールorPhdなど)留学を考えてみたい。
 アリ帝国の某アリ組織(官民含む)がキリギリス帝国に要員を留学させるのは普通に考えると「キリギリス帝国の手法を学び、社会・組織を改革する」ためであるように思われる。しかし、現実には留学後、辞めるケースが多い(日銀でも霞ヶ関でも民間でも)ようである。何人かに聞いたら以下のような感想があった。
・ある種のご褒美ではないか
・社員の見聞を広める、知識を高める
・リクルート対策かもしれない
・組織的な箔付け(優秀な人材を抱えることの誇示)
・行った人間はどんどん辞めるので、行かせなきゃいいのに、と思う
 私は留学の実情をよく知らず、間違えているかもしれないが(ご指摘を)、多くの感想を聞いた印象としては、留学後辞めるケースが多いのは、留学は「組織を改革する」ためではなく、留学で得た知識はともかくとりあえず何でもいいから文句も言わずに再びアリの一人として働いてもらい、としか思っていないのではないかと感じた(違う事例があればご指摘を)。
 ハーバード留学記で有名な岩瀬さんによればMBAは「資本主義の士官学校」であり、その洗礼を受けたアリさんらは「士官」としての能力を発揮したい、と思うのだろう。でも、アリさんの社会・組織はアリ的であり続ける(orキリギリス的になる意思はない)なら、アリさんのインセンティブは低下し、辞めてしまう例が後を絶たないのかもしれない。
 うがった見方をすれば、キリギリス帝国に留学しても再びアリ族の一員としてアリ的な労働に割り切って従事できる人材を養成しているようにも思える。何というか、限りない可能性を一度味合わせた後、どん底に落としてもくじけない精神を持つアリさんの育成である。だったら、アリさんの人生しか知らないまま過ごさせてあげた方が幸せな気がする。
 「さよなら絶望官僚」さんのプロフィールには「平成10年に某省に入省、一度の他省庁出向を経て、某国に留学。留学して外の空気に触れたことに加え、このところのバッシングの中で仕事を続け、帰国以後、絶望してばかり」という一文がある。戻ったところが「霞ヶ関ゲットー」と化しているなら、まあ普通は絶望する。「ガレー船の奴隷」と言った人もいた。いったん(留学という名目で)解放され、再び奴隷に戻る人生である。
 私は、知り合った人に日銀を辞めたケースを紹介した。その人に「辞めた方は後悔してませんか」と聞かれ、「していないよ」と答えたのだが、ちょっと失敗したかなと思っている。留学後も黙々と働いている「企画士」のことをよく話してあげた方が良かったかな。あっ、これも逆効果かもしれない。
 キリギリス帝国とアリ帝国の関係は当面変わらないと思う。だとすると、留学で目覚めたアリさんはキリギリス帝国の風土が合っているので、その世界での活躍を目指すのがやはり幸福かもしれない。後悔もないだろう。相次いで辞めるのにも関わらず留学を続ける組織は、キリギリス帝国(orその風土を持つアリ国の組織)に人材を提供している、ということだろうか。うーん、合理性がないような感じだ。
 
by bank.of.japan | 2008-05-23 21:52 | マーケット | Comments(33)
Commented by Sさん at 2008-05-24 00:46 x
なんだか・・・どこでも一緒なのですね。
たまたまなのかそうではないのか、多分後者だと思うのですが。

続編も楽しみにしています。
Commented by EURO SELLER at 2008-05-24 04:12 x
どうもたまではないようです。キリギリス帝国系のアリ帝国支店から「士官学校」に行った方でも「士官様にお仕えするための気配りを学んできたのだから,勘違いするなよ。アリはアリのままだ。」という雰囲気を周囲から感じるそうであります。ガレー船に感じてやめる人が多いのもさもありなん。でも,帰国後すぐにやめると留学費用を返済する特約がある会社も知っていますよ。
Commented by 飛車 at 2008-05-24 09:18 x
仕官学校出ても、所詮少尉ですから、小隊長からジワジワ行くか、参謀本部付きで書類作成するかです。同じようなものではないでしょうか。

で、この年齢になって思うのは、若い頃に思っているほど、組織の上下関係なんて絶対的なものじゃないという事です。せっかく、裏で仕切る立場になったのに(ブリーフィングや想定問答集作りの類って、そういうものですよね)、まじめに考えすぎではないでしょうか。「自由にやって良いのだよ」と言ってもらえる組織じゃないと、自由に振舞えないだけなんじゃないかなと思うようになりました。
Commented by PK at 2008-05-24 10:44 x
日本にはハイリスクハイリターンはないですね。昔は中小企業がそういう機会を提供していましたが、中小企業がどんどん潰れてますから。
能力のある人は組織の中に潜伏して、状況が組織を揺さぶるのを待つべきです。あるいは、問題児になって組織の中で人事のたらい回しになるように自分をワザと追い込むべきです。案外適所を見つけたりします。
日本において、組織から離れるような選択は、私は勧めません。
Commented by カナリーワーフ at 2008-05-24 12:26 x
皆さんのご指摘は、実感としてよく分かる気がします。アリ帝国においては、キリギリス系組織という看板(あるいは外見、周囲の思い込み)でも結局は3σの範囲内で結局はアリ組織じゃないかと・・・。ただ、面白いのは、キリギリス帝国におけるアリ系組織は、本部の延長に過ぎない属人主義的つながりによるアリ組織とキリギリス帝国領土にあるがゆえの属地主義的つながりによるキリギリス組織とが同居していることかなと。
Commented by カナリーワーフ at 2008-05-24 12:27 x
(連投失礼します)で、MBAの扱いについては、キリギリス帝国におけるキリギリス系組織であったとしても、それがでかい組織であるならば、「飛車」さんご指摘の通り、敬礼してくれる下士官や兵卒よりも、敬礼しなけばならない士官の上官の方が数が多かったり(かつあたりも強かったり)と、巨大なヒエラルキーのボトムにしばらく据え置かれ、「bin」(=ボミ箱)などと揶揄されるMBA蛸壺でひたすらスプレッドシートを作ったり、上司の対顧客プレゼンテーションのパワポ作りを続ける毎日(しかもかなりくだらないことでケチをつけられたりしながら)を過ごしたりするわけです。あげくの果てに、そうやって使えてきた上司から、いきなり、「来期はこの部署は大幅縮小だそうだ。俺は今日からjob huntingをはじめるから、お前達にもそうすることを薦める。推薦状が必要ならいつでも言いに来い」なんて、いわれたりして。
Commented by カナリーワーフ at 2008-05-24 12:28 x
(これで最後です)要は、MBAでもなんでも、市場の潮目の変化と自分の飯の確保を常に気に留めることができないと、ある日いきなりただの失業者になってしまうかもしれず、この局面が複数回続くと(ネットバブル崩壊→911後の一連の局面で特にIPO系やLBO系から他の分野に目を向けることに時間がかかったMBA諸兄は決して少なくなかったはず)、極めてミクロ的には、その人生はハイリスク・ローリターン人生になってしまったりするわけです。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-24 22:07
Sさん、どうもです。アリ的会社ではよくある話かもしれません。みなさん、頑張りましょう。

EURO SELLERさん、どうもです。どこも厳しいですね。留学費用の返還はもはや一般的のようです。ただ、移籍先が払うor報酬が大幅に増えて返還は容易、という状況で、返還義務は移籍阻止にはあまりなっていないようです。

人生さん、どうもです。ご指摘の通りですね。世に出る前の私自身の甘さを思い知ります。でも、子供に言い聞かせても馬耳東風(苦笑)。身をもって経験しないと分からない面もあるかもしれません。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-24 22:15
飛車さん、どうもです。少尉で任官しても、まあいずこも簡単には昇進は難しい、ということかもしれません。組織上の上下と、職務の重要性は必ずしも一致しない面は確かにあります。日銀各業務も課長クラスが実質的には重い面もあります。

PKさん、どうもです。私はたまたまだったのか、中小零細での経験はハードワーク・ローリターンでした(苦笑)。日本において、大企業からの離職は私も積極的には勧めないです。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-24 22:23
カナリーワーフさん、どうもです。詳しい解説、ありがとうございます。確かに「投資銀行残酷物語」でもMBAを出たばかりの士官らが馬車馬のように働かされており、聞いた話でもかなり激務なのはうかがえます。そこから上に這い上がるには、努力+運+人とのめぐり合わせ等が必要であり、戦死率は高いかもしれません。一般的には成功物語がクローズアップされ、その背後では多くのハイリスク・ローリターンが存在しているのでしょう。知り合いには早まるな、と忠告しておきましょう。今は地合いが悪いですからね。
Commented by べっちゃん at 2008-05-25 01:14 x
 慣行がなくならないのは、キリギリスの世界の智慧を持ち帰って、アリの世界の改善をしてくれる人の方が多いからでしょう。私の親戚にもそういった人がいます。

 そう言ったタイプはあまり外部と接触を持とうとしないので、アンテナに引っかからないだけでは?
Commented by ttori at 2008-05-25 08:48 x
なんとなく、”MBAは偉いんだ”思考が強すぎる気がします。
まあ、それが日本だと”エリート”だとされてるからかも知れませんが。
個人的意見としては”アリでなんにもできない”なんていってる後輩がいたら”てめーで考えられず、動けないばか者”としてたたき出しますが。
Commented by べっちゃん at 2008-05-25 09:32 x
 管理職のポストは限られているので自発的に出ていってくれるのは大歓迎、という面もあるのかも(笑)
Commented by すっとんきょ at 2008-05-25 14:41 x
結局、出てもそこで生き残れるのは1割もいないのが現実です。それは本人の実力の証左でもあり、運やめぐり合わせもあるのも事実でしょう。もももとキリギルスの世界は、いいとこどりの使い捨てが当たり前なのです。
Commented by Willy at 2008-05-26 05:10 x
MBA留学にリクルート対策や褒賞制度の側面があることは事実でしょうが、会社側としてはやはり、組織の空気を読みつつもキリギリスのやり方も取り入れられるようなバランス感覚に富んだ人材が欲しいのではないでしょうか。組織があまりに硬直的でMBA派遣留学組が辞めてしまうなら、投資が無駄になったという意味で単なる会社側の自業自得なので、外からとやかく言うほどの問題でもないように思います。費用返還義務は一定のペナルティとして合理的だとは思いますが、大した解決策にはならないでしょう。ペナルティを大きくすれば辞める人は若干減るでしょうが、「死蔵」されるMBAが増えて社会全体にはマイナスです。また、会社を辞めてから行く人も増えるでしょう。
Commented by 名無之直人 at 2008-05-26 09:29 x
MBAじゃないですがキリギリス世界の留学経験者です。
アリの世界よりキリギリスの世界の方が楽というのは幻想に過ぎません。

キリギリスの世界からアリの世界に戻ってきた人達の内には、自分の身の置き所をどこに定めるか迷う人が少なくないかも知れません。私はそうでしたが、さりとてキリギリス世界に舞い戻るほどでもありませんでした。

結局は、自分が何をしたいのかという目標とそれを実現できる場所がどこかという認識によって帰属する場所が決まってくるのだと思います。
Commented by アングラ at 2008-05-26 10:07 x
日本の大企業が海外MBA派遣を大幅に増やしたのは20年くらい前かと思います。帰国してから転職・独立された方も大勢いらっしゃるでしょうけれど、残った方は20年後の今は40代後半から50歳くらいになるはずなので、自社のアリ帝国的企業文化を変えられるポジションにそろそろなってきたということではないでしょうか。
私も派遣でMBAを取っており、若干下の年代ですが、最近そんな感じがしています。
Commented by アングラ at 2008-05-26 13:16 x
連投ですみません。
日本のアリ帝国も、派遣留学が割に合わないことは学習しているようで、英米へのMBA派遣は近年すっかり減っているようです。私の母校も、多いときには1学年の中に日本人が2ケタいてその大半が派遣でしたが、今では1人いるかいないか(それも自費)という状況です。
Commented by EURO SELLER at 2008-05-26 15:01 x
そういう意味では今はキリギリス帝国への留学はBRICSやアジアのほうが多いですね。いまのMBAは外国の留学生の寄付金つきも収入源の一つですが,元を取る根性はDeveloping Contryのほうがしっかりしています。一般論ですが,彼らは日本よりアリ帝国改革に熱心で目的を持っていませんか?
Commented by アリとキリギリス at 2008-05-26 15:16 x
どうも、キリギリス組織に多分に幻想があると思います。「キリギリス」と言うと、なんか楽をして効率が良さそうなイメージがありますが、投資銀行を始め、アングロサクソンの企業風土の方が日本よりスーパーマッチョです。「ガッツリ稼げる代わりにそんだけ働けよ」という世界なので。
Commented by 通行人 at 2008-05-27 13:32 x
米国では、MBAなりロースクールは自費で行くはずです。スタッフ勤めをして、お金を貯めMBAコースに入り直す。MBAコース終了して、今度はパートナーとなる。
国家公務員で、公費留学。コースを終了したら公務員辞職とは、税金泥棒ですよ。休職して、公務員給与なしで、自費留学が原則でしょう。
キリギリスを目指すなら、まずはアリを廃業しましょう。
Commented by linate at 2008-05-27 21:32
邦銀出身ですが、MBAを得て帰ってきても、「留学行ったからっていい気になるなよ」とか言われて、MBA前と変わらない支店のドサまわり営業をやらされたり、NY支店に言ってくれと言われて喜んでいったものの、総務部配属で、頭取の出張のアレンジをやらされたりと、正直、銀行の人事政策が理解できませんでした。これでやめるなという方が無理。そういう人事政策をとるのであれば、学費のみならず留学中の給与というコストをかけてまで行員を派遣する意味って一体何? 5年も銀行の中にいましたが、銀行員のメンタリティやway of thinkingは未だに理解不能です。
Commented by 日本の将校教育 at 2008-05-27 21:41 x
そうなんですよ。銀行業界は滅私奉公の強制。新興コンサル(マー欧米系でも、プレゼンはノーベル賞受賞者でも担当はお勉強しかできないので、院に残った帰国子女)はな^即戦力でも使えねーし。このあたり先の大戦での経験をもとにちゃんとした将校教育やらんとな。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-27 22:11
べっちゃんさん、どうもです。知恵を生かすためなら納得の派遣ですね。そういった方々が目立たない形になっているなら、確かにアンテナにはかからないです。惜しいです。

ttoriさん、どうもです。キリギリスでもアリでも仕事をする上でもちろん重要なことは資格などよりも実力なのだと思います。アリはそれぞれ役目はありますので、それはきちんと果たさないといけないですね。

すっとんきょさん、どうもです。キリギリス国の使い捨てはドライなのでしょう。かの国でもリストラされた人が復讐の事件とか起きたりしますので…。何処も楽はできないのだと思います。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-27 23:28
Willyさん、どうもです。合理的にはご指摘の通りだと思います。難しいのは「組織の空気を読む」ことでしょうか。また、バランスを取るのも容易ではないかもしれません。これは会社によって色々なので、置かれた立場で判断するしかなさそうです。

名無之直人さん、どうもです。貴重なご経験をされていらっしゃいますね。目的と所属組織のポジションニングは一般論としても通用する話ですね。目的に強い意識を持ち、それが組織内で実現できないとき、選択肢として転職が浮上するのだと思います。悩みますけど、最後は自分の判断ですね。

アングラさん、どうもです。情報ありがとうございます。企業派遣のMBAがかなり減ったという声は聞いたことがあります。多く行かせればよいというものでなく、会社によって色々な判断があると思います。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-27 23:54
EURO SELLERさん、どうもです。確かにそうかもしれません。社会・文化の風土も合っているようにも思われます。私の大学の同期が繊維関係をやっており、出張で中国内陸部の工場に行ったら、幹部の多く(しかも若い)がMBAだったとのことです。

アリとキリギリスさん、どうもです。他の方もご指摘のように、キリギリス帝国も生き残りはシンドイのでしょう。

通行人さん、どうもです。公務員で休職し、自費留学だと、かなり行く人は減るように思われます。復職後も昇進スピードに影響があるでしょうし。行くにはご指摘のようにアリ廃業の覚悟が必要です。

linateさん、どうもです。ご指摘の事例は少なくないような印象もあります。むしろ派遣されない方がいいようなケースで、辞めるパターンが定着するはず。辞めた方々が活躍すれば社会的にはプラスですが…。それが狙いとも考えにくいです。

日本の将校教育さん、どうもです。銀行業界はもちろん滅私奉公型のところは多いです。それでうまく組織が回り、収益も確保できればよいのですが。大戦から学ぶことは多いと思います。
Commented by テキサスロングホーンズ at 2008-05-28 00:06 x
linateさんのコメントを読んで、ちょっと思い当たるふしがあります。日本の企業ならびに官公庁という所は、まぁ、多かれ少なかれ人事部(官庁であれば官房)が人事のローテーションを組むわけですが、問題の核心は、この人事部の人たちが外の世界の情勢に相当疎いことにあると思います。企業内部のことは、それはもう社員のプライベートまで含めてよく把握しているわけですが、こと外の世界のことになると、興味がないのか単なるignoranceなのか、まるでダメですね。MBAの制度もよくわかってない、海外のどこの大学が優れているかわかっていない、そもそも海外に行ったことがない等々、いつの時代に生きているのかという人種が人事部には多いのではないでしょうか。人事政策は企業の要諦であり、むしろ外の情勢、経済環境の変化を肌で知っているMBA取得者こそが人事部にいくべきだと思いますね。もしくは、人事部なんてものはなくして、企業内部に透明な労働市場を作って、市場原理に任せてみては。
Commented by 飛車 at 2008-05-28 00:48 x
MBAの件、官庁とマスコミの「良いこと論」で一時的にブームになっただけではないかと思ったりします。僕も、本来は自費で採るべきものだと思いますが、企業側に需要が無いのに自費で採ろうとする奴はいないわけで、そのまま放置していたら日本企業にはMBAもいないのかカッコウ悪い&MBA採った優秀な奴は外資に行っちゃうと・・・そんな中で起きた一過性のブームみたいな。まあ、ブームのおかげで、MBAの供給も増えて、それなりに流動性のある人材市場が今できているわけで、最初のとっかかりとしては必要だったのでしょう。そのうち自費の人が増えるのでは?
Commented by 飛車 at 2008-05-28 00:50 x
続いて、キリギリス帝国というのが何をさすのか、いまいち定義が判然としないのですが、例えば人材の流動性が高くヘッドハンティングして成果報酬をとる企業のことを指すのであれば、僕は専門職・管理職の人件費の比例費化だと思います。不況で非正規雇用が増えたのは、投入人員を可変化できるからというのと同じです。

経営側とすると、「景気が悪い→成果も出ない→解雇・減給が簡単にできる」「景気が良い→高級が出やすい→簡単に人員を増やせる」という願っても無い制度でして、人材を簡単に集められる大企業では、理想的な姿ではないでしょうか。その代わり、アリ帝国ではそれなりのラインのトップの人間ですら、権限が限定されて、簡単に交代できるような統治制度になるかと思います。

で、むしろアリ帝国の方が立ち回り方次第で、大きな権限を手中にしやすいのかなと。それはそれでコンプラ上大変に問題ですが、キリギリス型みたいにどこの馬の骨が従業員となるかわからん会社と違い、ある程度長期間雇用してもらう前提なので、よっぽど近視眼的な人に権限をやっちゃわない限り、比較的コンプラ問題が起こりにくいのかなと。
Commented by 飛車 at 2008-05-28 00:52 x
連投すみません。間違い修正します。
二段落目後半)アリ帝国では→キリギリス帝国では
Commented by 水田X at 2008-05-28 11:38 x
いつも勉強させていただいてありがとうございます。MBAの件、利点はMBA学校で作る人脈が将来生きてくるようなの読んだ記憶あるのですが実際のところどうなのでしょうね。ここまでのコメント読ませていただく限りではあまり事例がなさそうですね。
Commented by at 2008-05-28 22:43 x
>これを聞いて私は言った、「それって日銀で言えば企画局の仕事だよ」と。日銀の「金融士」、じゃないや(苦笑)、「企画士」らは上記の内容を日々黙々(多分)とこなしている。

バカな金融庁や一部マスコミの戯言に付き合わされる民間大手より、組織の独善が通る日銀のような職場にいた方が仕事が楽しいのは当然だわな。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-28 23:25
テキサスロングホーンズさん、どうもです。人事部が出世コースとみられるほど中枢組織とみられるのは日本独特のものかもしれません。かつてに比べると人事部のあり方は柔軟化してきている感じはありますが、まあ引き続き中枢を占めるような気がします。

飛車さん、どうもです。MBA留学が自費、というのは正論であろうと思います。強いインセンティブがあれば、自費で行くものでしょう。あと、キリギリス国とアリ国の違いが、基本的に労働市場の柔軟性の差異に基づくものであろう思います。この点、日本で非正規雇用が増え始めたのは、ややキリギリス化してきた感じかもしれません。

水田Xさん、どうもです。国際部門で活躍できる場が与えられると、人脈は生きそうです。ただ、うまくそういう場にはまるかどうかは企業によってまちまちで、何とも言えないです。

あさん、どうもです。楽しいかどうかは分らないですが、黙々とやっています。
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