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日銀ドクター・リサーチャーの有効活用論=調査統計局TK氏に賛同です
 しばらく前のエントリーで、「ある経済学者」さんから「日銀の内部での研究の位置づけ、及び経済学系の人々の扱いがどうなっているのかに興味があります。私は在米なのですが、ご存知のようにFRBやBank of Canada、ECB、Bank of Englandと比べると、本当に経済学理解してるのかなという局面が多いので。。。(研究のアウトプットは言わずもがなですが。。。。)」というコメントを頂いた。関連ではかなり前にこちらのエントリーがあるが、ここではさらなる人材の活用論について簡単に触れてみたい。
 日銀と経済学会の距離が他国に比べて遠いように見える一因には、上記コメントでも指摘されるように①経済関係のアウトプットが相対的に少ない②リサーチ関係の人的資源(例えばドクター)が少ない-といったことが挙げられよう。もちろん、日銀は昔に比べるとドクターはなるべく増やそうとしているが、恐らく先進各国の中銀に比べると少ないのだろうと推測される(数字がないので、具体的は比較は難しいが)。
 私は日銀と学会の距離は近いほうが良いと思うし、そうなるように人材がよりうまく活用されるのが望ましいと願っている。この間、日銀のホームページ(採用関係)で以下ようなメッセージが紹介されていた。
 「自分の将来を方向づけるうえで節目になったと思うのは、米国留学時代です。『君のような若い人が日本銀行の新しい1ページを開くべきだ』。ある高名な経済学者からの言葉に、私は改めて自分の目標をより高いレベルで捉え直すことができたのです。すなわち、かねてより私が抱いていた「科学的な経済学に基づいた政策形成ができれば」という思いが、この一言で更に強くなったのです。
 米国では多くの学者がFRB (米連邦準備制度理事会)に進み、高度な経済学を駆使して活躍しています。FRBの現議長もプリンストンで教鞭をとった人ですし、その専門性を政策形成に活かしています。一方、日本ではアカデミズムと政策との間に架け橋が弱いと思います。金融政策と経済学との融合を実現し、日本銀行の新しい1ページを開く。それが今の私の目標です」
 調査統計局でリサーチを担当している方(TK氏)の“抱負”だが、激しく同意でありますね。こういう方が増えて欲しいと期待したい。略歴を拝見するにドクターを取得されたのだろう。この方の同期か、その前後かちょっと年次は分らないが、例えば加藤涼氏とか活躍されていると聞くし、取材でも優秀なリサーチャーは何人か知っている。
 では、どうやったら例えばアウトプットが増えて、「ある経済学者」さんの疑問が解消されるのか。現状、何人かに聞いた感じでは、研究・リサーチは業務に関連するものが多いようだ。まあ、経済研究機関ではないので、仕方ないが。ただ、研究・リサーチに興味ある人は、それぞれやりたい研究・リサーチがあり、それが結果的に中央銀行の各業務に合っていればよいが、そうではない人も多いだろう。
 間接的に聞いた話だが、FRBはドクターの有効活用策として、就業時間の半分は業務上の研究・リサーチをやってもらうが、残りは自由にやってよろしい、という仕組みにしているという(詳しい方がいればご教授を)。研究者は、自らの研究をやることが一番の生きがいであり、それが職を確保された状態(別にそんなに高給でなくてもよい)でやれるなら理想に近いだろう。
 日銀はこれをやった場合、①同一職種(総合職)で採用されているため、非研究系の総合職から『なんでドクターだけ遊んでいるのだ』という批判を招きかねない②本当に自由な研究ができないかもしれない(日銀に都合の悪い研究は認められない恐れ)③核融合とかスペースシャトルとか関係ないテーマが研究される-といったことが考えられる。
 ①はまあ杞憂かしれない。法律系の何人か聞いたら、「研究は研究が向いている人がやるべき」と言っていた。「自由な時間をやるから研究しろ」と言われても、「研究が苦手な人間には拷問だからだ」というわけだ。この点は、私の知っている日銀マン(バリバリの理論経済系)ですら、金研(金融研究所)の1課(研究の巣窟=恐ろしいところ)に配属され、先輩ドクターの千本ノックに根を上げたそうなので、まあ自ら金研に行って喜び勇んで研究する人材というのは貴重なのではないか。
 ②は、日銀の度量のみせどころであろう。私なら「わが日銀はなぜ間違うのか=2000年8月の失敗の本質」とか、「インフレターゲットは有効である=特に日銀の場合には」とか、わざと研究させてみたい、という気持ちを持ったりする。組織論的に有効な研究成果が得られたら、組織を矯正すればよいでしょ。
 ③は、理系的なものでも、場合によっては金融工学に寄与するかもしれない。数年前、某幹部があるペーパー(そんなに大変なものではなかった。というか、結論先にありきの印象があった)に関して「わが行のロケットサイエンティスト達が世界的に評価される論文を書いた」と豪語していて、それって何?とか、ロケットサイエンティストって死語じゃね、その科学者って誰よ、とか思ったものだが、本物のロケットサイエンティストをたくさん輩出すべきであろう。
 白川方明氏は最近の歴代総裁の中では、研究・リサーチに最も理解があるトップなので、人材のさらなる活用面ではかなり期待できると思っている。日銀がドクター増強・有効活用する一環で人材の回転ドア化を図れば、経済系ポスドク問題の緩和なども多少ながら役立つのではなかろうか。
by bank.of.japan | 2008-05-19 22:03 | 日銀 | Comments(43)
Commented by カナリーワーフ at 2008-05-19 23:28 x
お久しぶりです。本石町さんって、BOJの内部事情にとてもお詳しいのですね。他社の特定の部署の特定のポストの仕事はどんな内容かを把握しておられるって(取引先のカウンターパートであってもなかなか・・・)、なんかすげーと思います。さすがプロ。脱帽。

それはそうと、ベトナム国営銀行(=ベトナムの中銀)、今日政策金利を5.5%いきなり引き上げましたね。エマ系の通貨と株担当者がのけぞっておりました。
Commented by ある経済学者 at 2008-05-19 23:49 x
リクエストにお答えいただき多謝です。在米経済学者からは(というか私からですね、正確には。ただ、かなり共有されている認識ではないかと思います)、日銀は素晴らしいリソースがあるのに、利用できていないように思えます。

世界中の経済学のPhDは毎年秋にアメリカ経済学会のHP掲載の求人情報を見て履歴書を送ります。同様に世界中の雇用者がここに広告を掲載します。まずこの段階で日銀の広告はありません。(日本の大学より中国本土の大学の方が広告が多いという点も広く知っていただきたいですね。http://www.aeaweb.org/joe/current/joe_output.php?joe_issue=200711)

この時点で、日本人だけに限定されます。日銀法上外国人が雇えないのであれば、仕方ありませんが。ただ、問題はこの先です。日本人に限定したとしても、優秀な日本人PhDの受け皿になりえていないのです。

Commented by ある経済学者 at 2008-05-20 00:09 x
私には雇用の条件の悪さがその理由だと思えます。日銀の広告は多くの日本人が目にしていると思うのですが、どう見てもポスドクにしか見えません。真面目に研究職の職員を雇用しようとしているようには見えません。結果、運悪くアカデミックポストが取れなかった人が腰掛をするポジションと認識されています。(アカデミックな就職活動はかなり運に左右されるので、もちろん優秀な方もいらっしゃいます。)

論文の雑誌掲載まで軽く2,3年かかる現状では、日銀のような短期ポスドクは非常にリスキーです。中期(6,7年程度)の身分保証もなく、年俸も低く、研究環境も必ずしもよくない中、地区連銀やBank of Canadaが正規職員として雇ってくれるのに、日銀に行く理由は皆無です。(Bank of Canadaには一時若手日本人が4人も在籍していました。)

Commented by ある経済学者 at 2008-05-20 00:09 x
なぜ大卒の学生を数回面接して正規職員に採用するのに、経済学PhDは面接+論文+推薦状があっても、正規職員(となる可能性を持つもの)として雇用しないのか不思議です。むしろ、実力のあるPhDなど本心では歓迎しないが、姿勢だけ見せるためにポスドク制度を作ったのではと思えてしまいます。

かなり偏った見方かもしれません。関係者の方のご意見を伺えればと思います。
Commented by ある経済学者 at 2008-05-20 00:29 x
エントリへのコメントとしては

FRBはおっしゃるように、一定の業務があり、それ以外の時間は自分のリサーチができると言う仕組みのようです。ポジションが上がるほど業務の比率が上がるそうです。

①については、営利目的の民間企業でさえも一部では純粋な基礎科学研究をする人達が居るわけですから、問題になるとは思えません。また、別職種を作ってもいいのではないでしょうか?

②については他機関でどうなっているのか興味深いですね。

③についてはきちんと業績評価をすれば問題ないと思います。どのランクのジャーナルに何本載せているかは客観的に評価できますからね。

研究環境や雇用条件を整備して、競争力のあるPhDを北米の大学や他国の中銀と競争して日銀が本気で採りにいくのであれば、数年で軽々と東大経済学部(及び他の日本の大学)を凌駕する研究機関になれると思っています。
Commented by 別の経済学者 at 2008-05-20 04:49 x
金融政策のパフォーマンスとPhDホルダーの人数との相関については精査する必要があると思います。また日銀の目的は物価の安定であり、東大経済学部を上回る研究機関になることではないでしょう。

日銀でPhDホルダーが少ない理由とは、まず「科学的な政策形成」が必要とされていない日本の金融政策をとりまく風土。経済学的に美しい政策を実現するより、永田町・霞ヶ関と調整を付けることのほうが日銀にとって遥かに重要とされている気がします。

以前のゼロ金利解除時のように、政治家・財務省との調整に失敗すると景気悪化のスケープゴートにされた挙句、世論から袋叩きにあい、組織防衛すらままならないというのが現実。こうした事態を避けるため、長年、PhDホルダーではなく法学士の総裁がトップを務めてきたとも考えられます。

また、日銀がアカデミックな研究成果を利用したいのであれば、PhDホルダーを雇用するよりも、より実績を積んで発言力のある大学教授に依頼すればよいだけこと。

FRBにPhDホルダーが多いから日銀もPhDホルダーを雇うべきという論理はあまりにもナイーヴではないでしょうか。
Commented by ある短期金融市場関係者 at 2008-05-20 09:49 x
PhDホルダーが、得意とする金融理論を実践したい時、どういう立場で参加したいかで変わるでしょう。日銀は政策金融をする場以外に、現場での金融実務をこなして行く組織でもあります。研究だけしたい人にとっては、日常の金融事務は瑣末に見えてしまうでしょう。こうした人材は寧ろ金融政策委員に付属させて理論的バックボーンを支える立場で入られたらいいのではないかと思います。政策委員の任期も5年ですから、その間に日銀内部の事情にも明るくなっていくでしょうし、場合によってはそれも面白そうだと思って、実務家の道も開けるでしょう。 私は寧ろ、在職の日銀マン(若手から局長レベルまで)が、セントラルバンカーとして金融政策に直接関わるためのモチベーションとして、金融政策委員を公募制にすべきだとかねてから主張しています。正副総裁がpolitical appointeeになってしまった現在では、せっかく有為な人材が日銀に入行し研鑽を積んでも、理事どまりでは意欲の低下乃至は意欲の持続力は衰えます。金融理論及び実務に精通した有為な人材が、手をあげて政策委員に立候補する。そして5年の政策立案の経験後は正副総裁の指名を受ける可能性や資格は十分あるわけです。
Commented by ある経済学者 at 2008-05-20 11:34 x
>別の経済学者様

もちろん日銀の目的は物価の安定ですが、過去15年を見れば、基礎研究(とくに実証研究)の重要性は経済学者が言うまでもないと思うのですが。

きちんとした実証研究の不足が日銀、ひいては日本のあらゆる政策決定の大きな弱みでしょう。例えば、失われた10年の原因について、どれだけのまともな実証研究がなされたでしょう? 研究というと理論研究と考える方がおおいようですが、日本に決定的に欠けているのが、しっかりとした実証研究です。

「科学的な政策形成」が必要とされていない日本の金融政策、とのことですが、これは鶏と卵でしょう。むしろ、日銀がきちんと分りやすい言葉で政策を説明出来、世論や市場とまともなダイアログが成立させられればよいのです。むしろ法学士の総裁だったからそれが出来ず、余計に袋叩きを誘発したのでは?

Commented by 別の経済学者 at 2008-05-20 12:21 x
>ある経済学者様、返信有難うございます。

実証研究の必要性については論を待たないと思います。日本の実証研究にまだまだ発展の余地があることは共通認識でしょう。問題は、「誰が」それを担うかです。日銀に期待できればベストなのかもしれませんが、本石町日記さんも危惧されているように、政策当局が客観的な立場から過去の政策の分析を行うことは非常に難しいと思います。かつての上司を批判することは美学に反するでしょう。また、そうした実証研究は学会、民間シンクタンクあるいは政府(内閣府あたり)が担うべきともいえ、「実証研究の必要性」から論理的に「日銀でPhDホルダーを増やすべし」という主張には結びつかないのではないでしょうか?

科学的な政策形成が必要とされていないというのはミスリーディングだったかもしれません。要は、首尾一貫した論理で説明責任を果たせればよく、それは必ずしも「科学」である必要はないということです。

総裁論になると話がずれてしまうので立ち入りませんが、2000年にゼロ金利を解除した際の正・副総裁のバックグラウンドをお確かめ下さい。
Commented by 飛車 at 2008-05-20 12:51 x
プロの方たちが議論されているところでまことに恐縮ですが。

>>ある経済学者様
>むしろ、日銀がきちんと分りやすい言葉で政策を説明出来、世論や市場とまともなダイアログが成立させられればよいのです。

まことに同感です。できればコアコアCPIに関する単純な数値目標でできたらと思います。二次目標として雇用ですね。これなら、変な議論が起きる余地がかなり減ると思います。

また、形式的には政策委員は、日銀という官僚組織の上位の管理組織でもあります。ある短期金融市場関係者様がおっしゃる
>人材は寧ろ金融政策委員に付属させて理論的バックボーンを支える立場で入られたらいいのではないかと思います。
という案が面白いと思いました。
Commented by 飛車 at 2008-05-20 12:51 x
>>本石町日記さん
②の他の組織における、「自由な研究」ですが、組織内で研究をするからには、本当に自由な研究とはならないと思います。本当に自由に研究するのであれば大学でやればよろしいのではないでしょうか。その上で、組織統治上、更に上位組織(例えば、上記の政策委員がドクターを抱える仕組みでは上司が政策委員になりますよね)から研究内容についての指針が下される形になるのかな。

理想を言えば、政策委員の選任にあたっては、できるだけ多様な意見の持ち主を選び、特定の意見に固まらないようにして欲しいのですが、こういう基本理念の部分は政治家の方からとうに失せて、意見対立を政治的対立にして、力関係を生み出す道具にしてしまっているように見える点が、危惧する点であります。

部下側の多様性は、上司の多様性で担保するしか無いわけで、その意味では、上司の更に上位にいるトップの人間の度量が問われると思う次第。
Commented by 通りすがり@東銀座 at 2008-05-20 13:03 x
FRB本部にはPhDが200人いると聞きました。オフィス面積当たりではワシントンDCでトップだそうです。目立つのは中国系の多さです。アメリカ留学して、そのままアメリカで就職した人たち。そういえば世銀のチーフエコノミストも中国人が就任するそうです。
FRBは給料が安く、ウォール街へ行けばミリオン・ダラー稼げるような人を引き止めるため、いろいろ給料以外の面での厚遇をしているようです。(通りすがり@USA改め通りすがり@東銀座となりました。よろしくお願いいたします)
Commented by 水田X at 2008-05-20 13:15 x
はじめまして。東大経済学部ってねこより簡単、楽とぼくたちの時代いわれてましたけど。研究はどうなんでしょう。
Commented by とおりすがり at 2008-05-20 15:35 x
>>通りすがり@東銀座さん

FRBは本部だけではなく、地区連銀にも優れた研究者が大勢います。ミネソタ連銀やニューヨーク連銀はトップ20-30位の経済学部と並びます。ただワシントンDCではIMFの方が面積あたりに直してもPhDの数は多いでしょう。世銀のチーフエコノミストは今回は中国政府のプッシュです。日本が押し込めたのは東アジア担当チーフエコノミストまでだったので(河合先生)、中国の政治力はすごいですね。IMFでは副専務理事の一人が日本人です。政府案で日銀副総裁だった伊藤隆俊さんもIMFのアジア課のかなり上のポジションに居ました。

>>水田Xさん

もしや97年卒の方でしたら、知り合いですね。なつかしい!研究は従来ミクロ理論だけが世界レベルだったのですが、林先生や市村先生の帰国により、マクロや実証系も世界との距離が近づきつつあります。ただ、香港、シンガポール、中国が非常に力をつけてきているので、アジアNo1といえるかは微妙なところです。
Commented by PK at 2008-05-20 18:48 x
マルクスを語れなければ、日本では大成しません。
市場は駄目なんです。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-20 20:43 x
カナリーワーフさん、どうもです。長くいると、だんだん知り合いも増えて、自然に詳しくなる面はあります。まあ、継続は力なり、という単純なやり方ですが(苦笑)。ベトナムは経済基盤がまだ脆弱な面もあり、やや心配ですね。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-20 20:49 x
ある経済学者さん、どうもです。ご意見いろいろ頂き有難うございます。phdについてはまだ詳しい事情が分っているわけではないのですが、ご指摘の問題点を念頭に引き続きフォローしていきたいと思います。FRBの事例、カナダ中銀の対応など参考になる情報を提供頂き有難うございます。欧米中銀が優秀なphdを取り合っている状況は、日銀のドクターからも確認が取れました。国内では、日銀はphdの増強ではかなり進んでいるものの、国際的にはまだ大幅に劣後する状況であり、これは何とか改善していかないといけないのだろうと思います。引き続きよろしくお願い致します。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-20 20:57 x
別の経済学者さん、どうもです。
 「科学的な政策形成」が必要とされていない日本の金融政策をとりまく風土。経済学的に美しい政策を実現するより、永田町・霞ヶ関と調整を付けることのほうが日銀にとって遥かに重要」というのはうなずけます。これは日本全体としてもphdのニーズが乏しいことにも関連すると思います。
 phd数の国際比較はもちろん頭数の問題ではなく、研究結果の応用、学会との連携などを主眼にしないといけないでしょう。
 金融政策への要望では、景気悪いのに「低金利がけしからん。利上げしろ」といった非科学的な主張が目立つ風土でもあり、これは何とか変わって欲しいものだと思うのですが。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-20 21:05 x
ある短期金融市場関係者さん、どうもです。幾つかポイントを突いたコメント頂きありがとうございます。日銀は基本的には「バンク」であり、大多数の職員はバンキング業務に携わっております。金融政策の特に立案に関わる職員数は極めて少なく、この辺は総合職を取り過ぎの面があるかもしれません。こうした状況で、phdをどう有効活用するかはいろいろ検討が必要だと思います。理事のステータスは以前に比べ落ちているので、インセンティブとして審議委員登用への道を開くのは有効でしょう。これは議論としてなくはないです。武藤前副総裁は前向きだったと聞きます。政府・与党がどう受け止めるかですが、今ならチャンスかもしれませんね。
Commented by 初心者 at 2008-05-20 21:07 x
あえて暴論と思いつつ書きますけど、
日銀で基礎研究をすることが、本当に国民の生活向上に役立つんですか?
日銀でPhDを増やすことが、インフレ対策に役立つんですか?
それであれば良いのですが、税金で無駄なインテリを養うほど、
この国の人々に余裕がある訳ではないと思います。
Commented by PK at 2008-05-20 21:40 x
市場を真面目に研究しない土壌が根付いていますから、ゴールドマンサックスのような外資に市場間の歪みをつかれて富をさらわれるんです。ブラックショールズ式のブラックだかは日本の転換社債で大もうけしたそうですよ。市場の構造を研究して、評価の問題に正面から立ち向かわないとダメなんですね。
しかし、我が国では戦前日本を誤まらせたマルクス的土壌が戦争責任を問われずに温存されましたから、市場は毛嫌いされていますね。
価値を決めるのは市場です。マルクス主義者ではありません。
Commented by 経済学者(PHD)もどき at 2008-05-20 23:06 x
学校で経済学を4年多く勉強したやつをたくさん集めたって政策立案できんでしょう。マルクス経済学を実現するのと一緒のこと。千本ノックも試合経験ないコーチが真正面から思いっきり何十本打ったって、選手は試合では使いものにならんよ、市場との対話=市場経験者を活用すること、民間との往来を産官学の鉄の三角形で実現しないとさー、外人入れるよりそっちのほうが先でしょう官庁エコノミストさん、あれもう死語ですかね。
Commented by ある経済学者 at 2008-05-20 23:11 x
>>別の経済学者様

政策当局が客観的な立場から過去の政策の分析を行うことは非常に難しい、という点は同意します。ただ、現状ではあまりに実証分析がなされておらず、そのような分析をしなくても、やるべき研究はいくらでもあると思います。2000年の件についてはご教授ありがとうございます。

>>Bank.of.Japan様

自分の意見を声高に叫ぶようなコメントになってしまい、恐縮です。、このような議論をされているのをあまり見たことがないので、つい長々と書いてしまうことをお許しください。



Commented by ある経済学者 at 2008-05-20 23:28 x
>>初心者様

日本の多くの政策決定の問題は、知識・議論の極端な軽視にあると思います。「そんな理屈を言っても、現実的には。。。政治的にも。。。」。もちろん政策ですから、妥協の上で成り立つ現実的なものである必要はありますが、その前段階のデータに基づいた事実認識・議論が決定的に欠けており、半ば感情論のような変な議論が横行します。その結果国民生活に負の影響が出ます。民主党の低金利政策批判、自民党の貸金業法改正時の議論、経済産業次官の発言、いくらでも例は尽きません。

>>経済学者(PHD)もどき様

ではバーナンキにはFRB議長は務まりませんか? 優秀なPhDを大量に採用して、日銀の実務に触れさせることで、時間をかけてトレーニングすればいいと思いますが。市場経験者の活用については賛成です。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-21 00:03 x
飛車さん、どうもです。研究の自由性の担保については仕組みが必要でしょう。人材の多様性はそれなりに多様ではないか、という感じです。多様性を求める声は日銀内でも根強い気がします。

通りすがり@東銀座さん、どうもです。距離がいきなり近くなりましたね(苦笑)。接近遭遇するかもしれませんが、その場合にはよろしくです。FRBの事情、ご教授ありがとうございます。日銀phdは今日聞いた感じでは20-30人ぐらいでしょうか。増えるような情勢になって欲しいものです。

水田Xさん、どうもです。今後ともよろしくお願いします。

とおりすがりさん、どうもです。参考情報有難うございます。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-21 00:14 x
初心者さん、どうもです。ご指摘の疑問は当然あると思います。もっとも日本は公的部門全体に無駄なインテリが多いとも言え、結果的に総偏差値稼働率が低い、という現象に直面しております。多分、高い偏差値の人材が「調整」という作業に無駄に投入された結果であり、そういう状況がなぜかこの国には求められるのでしょう。基礎研究は直接的な効果は見込めないものの、経済事象のマクロ・ミクロの研究が深まれば、いつかはもっと効率的な人材活用につながる風土になると期待したいです。まあ、青臭い理想論かもしれませんが…。

PKさん、どうもです。片割れのショールズはLTCMでヤラレて、市場にうまく対処するのは難しいです。もとより市場も完全ではなく、それでもうまく市場と付き合うことが必要でしょう。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-21 00:16 x
経済学者(PHD)もどきさん、どうもです。研究者がいきなり政策立案は無理な面もありますので、ご指摘のように人材が回転ドアで行き来するのは重要だと思います。市場との交流も有効であろうと思います。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-21 00:20 x
ある経済学者さん、お気になさらず。このエントリー、実は空振りかと思っていましたが、むしろ熱心なコメント頂き感謝しております。こうした議論は取材ベースではいろいろやっているのですが、公開の場で、学者の方からの書き込みを頂き、書いてよかったと思います。日銀の関係者も、彼らシャイなのか。立場もあるのか、なかなかコメントしてくれませんが、かなり多くがこの議論をウォッチしてくれていると思います。今後ともよろしくお願いします。
Commented at 2008-05-21 04:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ある短期金融市場関係者 at 2008-05-21 15:43 x
議論は政治の場でも広がってくれることを期待しています。若い日銀スタッフのモチベーションアップに繋がり、PhDも理論を実践する場が広がり、市場経験者・実践者も場合によっては経験を金融政策の場に活かす
機会があるやも知れないというのが、公募制導入の長所です。
Commented by 通りすがり@東銀座 at 2008-05-21 16:43 x
>とおりすがり様
そうですね、IMFの方がきっと多いでしょう。きっと「うちのオフィスは狭いぞ」というFRBのアピールなのかもしれません。
Commented at 2008-05-21 16:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-21 21:18 x
最初の非公開さん、そして次の非公開さん、了解しました。

ある短期金融市場関係者さん、どうもです。公募制導入は一考に価するかもしれません。
Commented by IMFとか世銀とか at 2008-05-21 23:00 x
まー宇宙飛行士とか、メジャーリーガーなら応援するけどさ。そこに中国人以上に日本人がいて、何が意味あるのかね。で彼れらは、世界経済に対して何を貢献してきたのでしょうか。経済学は実学だよ。美しい方程式で宇宙の原理をときあかすことではないでしょう。
Commented by 一万田と田中角栄 at 2008-05-21 23:03 x
でどっちが妥当性があったかなんて検証のしねーだろ。ということいですばらしいエコノミストさんこれからの経済政策はイカに。
Commented by ということで、経済政策クイズ at 2008-05-22 00:09 x
前提条件
為替は安定。消費は盛り上がらず。不動産に向かっていた外資Fが撤退。商品価格は上がり続けます。さーあなたが日銀総裁ならどうしますか。
というか今の段階では当面政策維持でしょう。で問題は劇的変化の中で何をするか何をいうかですよね。平時ではなく有事の日銀総裁かっこいいです。有事では官僚も政治家も一億総玉砕その中で、今回の冷静な一言です。そういう意味では象徴的一言です。なんとなくなく風貌もさきお方を彷彿とさせます。今回にご発言は極めて重要。国賊的馬鹿官僚、政治家ごときは真摯をもって受け止めるべきです。
Commented by ということで、経済政策クイズ at 2008-05-22 00:11 x
すみませんスレ違いです。
Commented by Willy at 2008-05-23 13:49 x
FRBなどに比べれば日銀の経済学まわりの人材の層が薄いことは事実でしょうが、一番大きな問題はそうした人材を活用できる体制が整っていないことでしょう。そして活躍の場がないところには人は集まらないし育たないと思います。従って、政策委員にリサーチスタッフを貼り付けるというような案は良案だと思います(現状では、政策委員の質自体が日銀最大の弱点のような気もしますが)。
Commented by Willy at 2008-05-23 13:50 x
「ある経済学者」さんの問題意識は、少しずれているように思います。日銀の目的は別に主要ジャーナルのパブリケーションを増やすことでもないし、大学の経済学部と競うことでもないはずです。従って、米国のテニュア制度との比較で人事や待遇を語っても意味がないと思います。日銀には、理論家として(ある程度)優秀であると同時にそのアウトプットを政策的に活かせる調整能力を持つ人が現状では必要であって、その見極めのために6-7年も必要ないということなのでしょう。国別にみたときにパブと金融政策のパフォーマンスに相関があったとしても、パブを増やすことが金融政策のパフォーマンスの向上に繋がるかどうかはかなり怪しいですし、仮に因果関係が多少あったとしてもPhDやパブの数を組織目標にするのは最善でないと思います。氏は在米とのことですが、日本と米国では大学と財・官界との関係が異なりますし、中央銀行に割いているリソースの大きさも違いますから、FRBのパフォーマンスが良いからと言って、単純に日本もそれを模倣した方が良いというのはあまりにナイーブだと思います。
Commented by Willy at 2008-05-23 14:07 x
> 日銀で基礎研究をすることが、本当に国民の生活向上に役立つんですか?

「初心者」さんの確信犯的(?)なコメントですが、仮にリサーチが政策決定の場で十分に尊重される体制が整うなら、数億円~数十億円程度の投資は十二分にペイすると思います。

話は少しそれますが、メガバンクや証券会社も、本当にプライドを持ってるならせめて実務家の立場から総裁・副総裁と論戦を張れるくらいのエコノミストを育てて審議委員として送りこむべきだと思います。

90年代末以降の日本の縮小志向・人材育成軽視の風潮には危機感を覚えます。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-23 23:49
Willyさん、どうもです。人材をうまく活用する体制が整いにくいのは、公的部門始めとして全般に言えることかもしれません。ボードのスタッフ機能を強化するのは一考に価すると私も思います。「アウトプットを政策的に活かせる調整能力を持つ人」は重要ですね。
 関連したエントリー(MBAの憂鬱」をアップする予定です。
Commented at 2008-05-27 20:06 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2008-05-27 22:12
↑さん、どうもです。ご愛顧ありがとうございます。お気遣い多謝です。気をつけてみます。
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