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前田氏(東レ名誉会長)&グリーンスパン氏に賛同=日経新聞より
 本日の日経新聞、二人の弁に賛同であった。まずは「YENの漂流」の関係インタビューに出てきた前田勝之助・東レ名誉会長の為替に対する考えである。人為的な相場誘導論には賛成しかねるが、全体としての発想は正しいと思った。かいつまんで紹介すると、以下の部分だ。
・一般的に(円が)強いことは良いことだ。しかし、それだけの実力がないのに(高く)評価されるのは良いこととは言えない。
・デフレが続いている状況を見れば、ある程度の円安誘導を政府は考えるべきだ。
 後者については、私は人為的な誘導をやる必要はないと思っているが、政府は少なくとも円安傾向は容認すべきであろうと考える。円安がもっぱら金利差に根ざした円キャリーによってもたらされた投機(バブル)とみなし、だから日銀の利上げが必要だとする主張は愚の骨頂であろう。繰り返すが、振れやすい為替に立脚した金融政策論はそれ自体が振れやすく、そんなことするなら固定相場制か、ドル化した方が話は早い。
 日銀も「金利正常化のためには藁(円安)をも掴む」ようなメッセージを出さないようにしないとね。しょせん、そんなものは藁でしかないから、溺れちゃうんだよな。

 次はグリーンスパン元FRB議長の「私の履歴書」より。ぐっちーさん、自伝の抜き書きではないかと怒っておられましたが、私は本を買っていないので、この履歴書は重宝します(笑)。
・(ブラックマンデーの理由)市場は時に熱狂し、おのずと破裂するリズムがある。そんなリズムの表れで、外部要因は関わっていない、というのが最も意味のある見方だ。
・(日本のバブル)米株暴落で日銀の利上げが遅れたのが日本のバブルにつながったとの議論があるが、そうは思わない。利上げしていればバブル発生を遅くしたかもしれないが、防げたとは思えない。激しい利上げをすれば別だが、それでは経済の腰を折る。
 まあ、そうだと私も思う。バブルは市場が潜在的に内包するリズム(市場心理学的なものかな)で、周期的に到来する熱病のようなものだろう。詳しく覚えていないが、かなり昔のNHKスペシャルで、数人の仮想ディーラーにディーリングをやらせたコンピューター上の実験では、必ず暴騰・暴落が起きた(と記憶する)。相場とはそういうものだと思う。野村証券の田淵氏に言わせれば「相場には魔物が住む」というわけだ。
 中央銀行としては、だからといってバブルを放置するとは言えない(言いたくない)立場にある。気持ちは分かるが、少なくとも「バブルを退治する」というようなメッセージは出さない方がいい。マスコミを喜ばせるだけだから。「第二の柱」は、これがどう受け止められるか、という視点が欠けていたのではないかと思う。これは、次期体制に向けてロジックを見直すときのポイントであろう。
by bank.of.japan | 2008-01-17 21:05 | マーケット | Comments(6)
Commented by PK at 2008-01-18 08:00 x
通貨は、人の価値・扱われ方が各国間で揃う方向にもっていくことが良いと思う。ただ、日本の場合、敗戦国で外国資産に臆病であり、また、米国のアジア諸国分断政策と日本の人口の減少で国内市場規模が大きくならないから、円高に振れてきつい。
ストックの増大した現代の経済で、中央銀行にできることは少なくて、ケインズが示唆したように多様な資産を持って多様な市場に公的なコメントを発するプレーヤーとして参加する方向に進化するぐらいしかない。
日本のバブルは、大蔵省が税収のために初期の段階で放置・煽ったことが大きい。また、日本のメディアは左派特有の煽情的行動で、経済学の言うような情報公開で歪みを取る機能というより、歪みを増幅する機能の方が強い。
Commented by bank.of.japan at 2008-01-18 20:02
PKさん、どうもです。「日本のメディアは左派特有の煽情的行動で、経済学の言うような情報公開で歪みを取る機能というより、歪みを増幅する機能の方が強い」というのは、よく分かります。
Commented by yy at 2008-01-19 00:54 x
はじめまして。
どうもこのグリーンスパン氏の発言は、「住宅バブルの発生も防ぎようがなかったんだ」とでも言いたげに聞こえてしまいます。
しかし、議長時代に変動金利ローンを推奨したり、住宅バブルの可能性に否定的な発言をしていたことを考慮すれば、この発言はいささか無責任ではないでしょうか。
少なくとも、氏の置かれていた立場からすれば、もう少し打つべき手があったのではないかと。
Commented by ttori at 2008-01-19 10:38
多分NHKスペシャルの「マネー革命」に出てた話だと思います。
ちなみに私はグリーンスパン本、上下巻とも買いました。。
Commented by bank.of.japan at 2008-01-19 10:51
yyさん、どうもです。自己弁護の印象は確かに受けます。ただ、将来の予見は神でもない限りできないこと、バブルも抑制しようとすると景気がオーバーキルしかねないこと、などを考えると、事後的には多少利上げペースを速める以外に手がなかった、と思われます。その結果は現在とはさほど違わないのかなあ、と考えたりします。

ttoriさん、どうもです。ありがとうございます。そういう番組名でした。本、買われたのですね。私はダイジェスト版代わりに履歴書読んでいます。
Commented by 飛車 at 2008-01-21 00:10 x
「為替はほっとけ」というスタンスではありますが、「デフレ下の流動性の罠で金融緩和に実効性が期待できない場合には、スベンソン流もあり」という事になるのかな。2003年は大成功だったし。
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