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「私の履歴書」から興味深い点をメモ
 金融の昔話は非常に興味深いが、当事者から直接聞く機会はあまりない。野村証券元会長の田淵節也氏が「私の履歴書」に登場しており、これまでの連載で印象的だったことをメモとして残しておきたい。個人的な備忘録です。
 「(戦後混乱期の1947年の)証券会社の仕事は無きに等しく、街角に筵を敷いて旗を立て、当たればその場で現金を渡す三角くじを売ったりした」→うーん、今では想像も付かない。
 「新円切り換えや預金封鎖には株取引を優遇した仕組みがあり、封鎖預金の旧円で買った株を売れば合法的に新円を手にできた」→これは以前取り上げた話題。「小説日本銀行」にも登場していると指摘された件です。終戦前後を知る人にはやはり有名ですね。
 「山一が溺れるとバタバタするから飛沫がかかって野村もただでは済まない」→これは良く分かる比喩。金融機関は信用の輪でつながっている面があり、一角が崩れると将棋倒しになるリスクがある。今でも一緒で、まさに米国のサブプライム問題でも観察される。このときの野村の見切りの早さが躍進の原動力となったようだが、これは今でも伝統芸かもしれない。
 「(銀行界の日本共同証券に対抗した)証券界の日本証券保有組合で表に出ていたのは瀬川さんだが、日銀の人のアドバイスで動いたのは北裏さんだ」→日銀の人が誰か気になる。
 「興銀に傷が付くことは何としても避けなければならない、というのが(山一への)日銀特融の本当の狙いだったと思う」→この話は聞いたことがある。山一が運用預かりして担保に入れていたワリコーに累が及ぶメカニズムは調べてみたい。顧客が預けたワリコーが勝手に担保として流用されただけで、直接的に興銀の信用に傷が付くようには見えない。恐らくは、預けたはずのワリコーが流用されたことに対する不安・不信が興銀に飛び火する、ないしは流用を恐れた顧客によるワリコーの換金投げ売りが起きかねなかった、ということだろうか。しかし、これは数年前のことだが、金融不安があった中で、日銀はよくぞ金融債を不適格化にしたものだと感心するなあ。
 「会社のビルや工場を細切れに持つわけにはいかないから株がある。株の本質は会社そのもの実物であり、金の裏付けのない紙幣とは違う」→管理通貨制度の本質にも絡む興味深いコメント。
 折をみてまた取り上げるかもしれません。
by bank.of.japan | 2007-11-13 21:51 | マーケット | Comments(7)
Commented by ゴム3号 at 2007-11-13 22:09 x
山種さんの著書「そろばん」(『私の履歴書』を加筆したもの)にも、終戦後街角でスピードくじを売った話が出ていますね。あとヤミ屋をやったり、不動産賃貸をやって食いつないだとか。
Commented at 2007-11-13 22:39 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2007-11-13 22:45
ゴム3号さん、どうもです。焦土から立ち上がるときの苦労は大変だったのだろうと想像されますが、実感するのは難しいです。逆説的には、何でもありで、無茶も許された時代であったのかもしれません。
Commented by bank.of.japan at 2007-11-14 00:12
非公開さん、でした。すいません。不良債権処理の時間稼ぎ、ないし金融秩序維持に尽きるのではないでしょうか。他の例も含め、後ろ向きの再編であったと思っております。TBTFの原則ですかね。
Commented by よし某 at 2007-11-14 01:30 x
はじめまして。
たまたま手元に昭和36年発行の「私の履歴書」があり、これに野村証券中興の祖、奥村綱雄氏が出てきます。
金解禁の裏をかいて、外債投資の営業を地銀にかけまくり注文が殺到したものの、うっかり手違いで「日銀神戸支店」にパンフレットを送りつけて「ドカンと大きいカミナリが落っこちた」という下りとか、面白いですね。(若き奥村氏はこのあと左遷されます。。)
Commented by よし某 at 2007-11-14 01:43 x
あと、終戦直後は京都支店長としてやりたい放題。「新円を手に入れるため」、ヤミ市の中心・九条に「宝館」という映画館を立てて社長になったそうです。野村の支店長なのに。「新円は毎日ジャンジャン入ってくる」とのこと。本人も、このときのことを振り返って「いまだったら即座に首になるのだが、時代が時代である」といっています。楽しそうだなぁ・・・
Commented by bank.of.japan at 2007-11-14 21:20
よし某さん、どうもです。戦前の方がむしろ金融はダイナミックに動いていたのかもしれませんね。新円を入手するため、映画館を経営するとは…。焦土から立ち上がるとき、やりたい放題やらないと食えない、という時代だったのでしょう。今はコンプライアンス不況とか言われますね。
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