「日本人は金融など目に見えないものより(ロボットなど)目に見えるものが好きだ」
 本日の日経新聞にソニーを退任する出井氏のインタビューが出ていた。表題は発言の一部である。言い換えると、形のある「製品」での勝負は得意だが、形のない「金融」は苦手となるだろう。この指摘には私も同感するものだ。ただ、出井氏はグローバル企業になるためにも目に見えないもの(金融やネットワーク)を強化する必要があると訴えているが、私は無理してそうする必要もないのではないかと思う。
 個人ベースでは金融が向いている人は多いし、恐らくは増えているだろう(と期待したい)が、国民風土として目に見えない金融が向かないなら、無理してそうする必要はないのではなかろうか。人に得意・不得意があるように、国民性も得意・不得意がある。金融は特にアングロアメリカンが得意とし、これに対し日本は製品作りが得意であったということだろう。人間そんなに色々なことできるわけではないので、得意分野を強化するのがむしろいいと思う。
 昨年、「デイトレはけしからん」みたいな風潮が強まった。個人の自由でやっているものを経済界の偉い人たちが目くじら立て、マスコミでも「チャートばっかりみて売買するのは異常だ」との論評があった。これは私は驚いた。チャートで売買するのは一つの手法として確立されているし、難しいチャート解析ではなくても、単純に銘柄の値動きを追ってそのパターンを掴もうとするのはトレーディングとしては普通であるからだ。どこのマスコミとは書かないが、あの論評をあのメディアが載せたということにかなりがっくり来た記憶がある。
 額に汗して働き、良い製品を作り出すことが賛美される風土において、金融の発達・高度化はなかなか期待しにくい。特に銀行は公的制約が強く、利益が増えると儲け過ぎの批判を浴びやすい。預貸スプレッドが異常に低いということは、金融システム全体が企業の補完金融をやっているようにしか見えないのだが。金融でもう一度グローバルに飛躍するということをまさかメガバンクが本気で考えているとは思わないのだが。そうなんですか?
 
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by bank.of.japan | 2007-06-19 22:54 | 金融システム | Comments(13)
Commented by Texas Longhorns at 2007-06-20 02:50 x
Yes, I agree. Japanese people's comparative advantage is definitely not in finance, but perhaps in manufacturing. But doesn't mean that Japanese people deserve a shabby financial service. If Japanese banks are shabby on finance, then open the market for Gaishi and bring in the technically savvy non-Japanese to the financial service sector. That will increase the well-being of the Japanese people as a whole.
Commented by EURO SELLER at 2007-06-20 11:47 x
日本人にメインバンカー意識が薄いというレポートがありましたが,同様に主治医を持っている家庭も少ないようですね。一番目は,勢い金融関連もユニバーサルサービス化してオリジナリティを出す経験が少なすぎるのだと思います。二番目は,ライアーゲーム的な契約やルールの中での応用が利かないことです。私は,見える見えないの問題ではなく論理的な志向のこれまた経験が足りないのではないかと思うのです。
遅れてついてきているだけで,将来は何とかなるのではと期待しています。
Commented by 大事な視点 at 2007-06-20 12:24 x
最近、大企業の経営者に結構言及されることの多いこの論稿。20分で読めます。しかも内容が凄く良いです。本石町さんにも是非お薦めです。21世紀にも、高度製造業が世界からなくなることは絶対にないのです。競争は得意分野でしなくてはいけません。

藤本 隆宏
日本発の経営学は可能か:ものづくり現場の視点から
http://www.ut-mmrc.jp/dp/PDF/MMRC148_2007.pdf
Commented by 金融トップは文系ばかりから at 2007-06-20 13:04 x
日本人の特性というよりか、日本の制度・慣行の問題でしょう。
金融は情報サービス業なのに、文系ばかりがトップですね。
これは、日銀、官庁、マスコミにもいえますが、数学や統計の素養がないと、本当に金融は理解できないでしょう。定性的な理解ではまっとく不十分なはずですが、金融界だけなく日銀、官庁、マスコミの文系の人はなぜかわかったと思っている人が多いです。
口だけでなく、手の動かせる人が、日本の金融界にはあまりに少なすぎます。
これまではそうした人材なしでも、なんとかやってこれたのでしょうが、もう違いますね。でも、理系能力のある人がトップになるようになれば、違う世界になるでしょう。
Commented by 飛車 at 2007-06-20 17:06 x
>>大事な視点さん
掲示の論文読ませていただきました。大変に興味深い内容です。

2点だけ思ったことを。
「日本企業固有」の強みとおっしゃっていますが、本来各企業固有の強みであるにもかかわらず、日本産業界全体というくくりでマクロ的に実証すると、観察値として出てくるのは、輸出が多い大規模製造業である、という現状追認になっちゃっていないのかなぁと言う点です。
また、企業にとって重要な事は成長する事ではなく継続的に利益を上げ続ける事ですから、あまり市場規模の大きなところばかりでなく、中堅以下の市場規模方面にも目を向けて欲しいと思うことがしばしば。ややもすると長いものに巻かれているだけに見えてしまいます。
Commented by へっぽこ at 2007-06-20 18:35 x
>>チャートで売買するのは一つの手法として確立されているし
そうなんですか?
金融のプロが素人を鴨にするためにチャート手法というものがあることは知っていますが・・・
Commented by bank.of.japan at 2007-06-20 19:29
Texas Longhornsさん、このところ意見がほぼ一致してなんだかうれしいですね(笑)。ご指摘の件、うなずけます。ウィンブルドン方式がいいのでしょう。外資アレルギーの払しょくが必要ですが…。

EURO SELLERさん、どうもです。特にライアーズポーカー的な状況への対応は苦手ですね。これが巧みな人はいるのでしょうが、リスク回避的な組織では埋没しがちです。

大事な視点さん、情報提供有難うございます。参考にさせてもらいます。
Commented by PK at 2007-06-20 19:50 x
日本語はスコラ学の洗礼を受けていないので、OJTのごとく現場を長時間共有しながら話者と聞者が近接して情報交換している場合には使えますが、両者の距離が離れて完全にテキストに依存するようになると情報伝達が困難になります。
そして、日本はものづくりで行け、と言うのは結構なのですが、おそらく様々な理由から話者と聞者の距離はますます離れていくようになり、ものづくりの技術の伝達が難しくなっていくと思います。
従って、テキストに拠って遠距離や異時点間で確実に情報を伝える言語技術があらゆる場面でどうしても必要になってくるでしょう。
観察(テキストにする直前の準備)、再話(原テキストを起こすこと)、分析(テキストの要素要素を吟味すること)、構築・要約(不要なものを除き伝達したいことを純化すること)、批判・批評(伝達された時の受け止められ方の可能性を探ること) これらを小学校から成人以降も繰り返し繰り返し訓練する必要があります。そうなれば、1世代の後にはインド人に劣らない数学能力、アングロサクソンに劣らない金融能力が身に付くはずです。
Commented by bank.of.japan at 2007-06-20 19:56
金融トップは文系ばかりからさん、どうもです。金融の場合、数年前まで護送船団時代が続き、MOF担的な人材がまだ経営レベルに残っている面があります。この辺は世代交替に期待しているのですが。

飛車さん、どうもです。収益性を軽視してシェア競争に邁進しがちなのも特有の風土なんでしょうかね。

へっぽこさん、どうもです。チャートもいろいろあり、これは各ディーラーの趣味によるところかもしれませんが、一つのツールとして参考にしている市場関係者は多いと思います。私の知り合いは「エリオットウェーブ」を愛用していました。チャート上の抵抗線はそれなりに気にされています。
Commented by 飛車 at 2007-06-20 22:28 x
>>本石町日記さん
感想文レベルで考えてみました。

高度成長期は大量生産型製造業(規模の経済型)が重視されました。これらの産業では他者より大きな設備で大量生産すると平均原価は下がります(ぺんぺん草の川鉄みたいなw)。売価が世間並みだとすると安く作れた企業は利益が得られ、次の設備投資にまわす資金が得られます。
高度成長期は寝てても売上が伸びまして、売上高だけ見ていても他者との競争に勝てそうかわからないので、シェア伸び率で判断していたのかなと。決して利益軽視ではなく、利益を増やそうと思ったらシェアの伸び率を重視せざるを得なかったんだと思います。

業種的には隅っこの方の話ですが、そろそろ定年の営業部門のトップをはった人と話をしていると、大抵、「今苦しいけど頑張って売上をとっておけば、後で利益はついてくる」というような事を言いまして、まさに経験的にそのような時代をすごしてきたのかなと思う次第。

ところで、いまどきシェア競争重視の企業は海外でシェア獲得競争を続けられる輸出産業以外にはないのでは?大半が淘汰されちゃっていると思います。デフレ時代は寡占型がよろしいかと。
Commented by three-hyphens at 2007-06-21 00:33 x
世の常ではありますが,この出井氏のような「日本人は…」という言説で始まる,「一言で括った」議論が横行するのはいかがなものかと思います.よく見れば多様なものを,一言「日本人」と括るだけで,様々な視点や思考を見落としてしまうことになり,(インタビュー全文を読んだわけではありませんが,)こうした言説は知的ないささか謙虚さを欠いた乱暴な意見です.

私の個人的な経験を挙げますと,いわゆる純日本的な企業文化の元で,非常に保守的な行動様式の中で働いていた日本人が,あるきっかけ(合併など)で突如米国経営の中に放り込まれると,豹変したように米国人以上に米国人的に行動するのを目の当たりにしてきました.

銀行やら証券やらに手を出し,本業をぱっとしない状態に追いやってしまった出井氏の経歴を見ると,この発言は,自らの視野の狭さがぽろっと出てしまったのか,それとも自戒をこめた反省の弁なのか,とのその程度にしか解釈できません.

数千年の間,農耕を専らとしていた民族が,それを忘れて「ものづくり」と鼻を高くすることに失笑を禁じえないです.
Commented by bank.of.japan at 2007-06-21 21:10
飛車さん、どうもです。ご指摘のことは、特に銀行業界に当てはまるかもしれません。規制金利の下、融資の拡大が利益の拡大となり、今でも融資残高は重要な指標ですね。時代が変わればやり方も変わる、となればよいですが。

three-hyphensさん、どうもです。ご指摘のように、一つの価値観に括る物言いは乱暴な面があります。私もこの点は気をつけないと。出井氏の場合は、多少忸怩たる思いがこもったのかもしれません。個人的には、マネジメントの問題であり、潜在的には「見えないもの」に能力を発揮できる人が多いのだと信じたいです。

Commented by 飛車 at 2007-06-21 21:24 x
>時代が変わればやり方も変わる

企業は1996年頃からの縮小均衡路線に対して、良く反応していると思いますよ。問題は、それがデフレに対して正のフィードバックを起こしているという事です。誰かが止めてあげないといけないのですが、日銀も一緒になって、この対応を後押ししてしまいました。政府については行ったりきたりでしたが。

底を打てば上がるという言い方をする人がたまにいますが、これは経験則でしかありません。何が原因で底をうつのかによって、底がどの辺になるのかが変わってきます。僕もデフレスパイラルのような底なしは想定していませんが、底をうつきっかけは政治スタンスの変更による金融政策のレジーム転換ではないかと思うのです。というわけで、政治のスタンス変更がなかなか日銀に伝わらない現在の制度に不安があるわけです。
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