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お勧めのワーキングペーパー=人民銀行の金融調節について
 知り合いの資金ディーラーが「このワーキングペーパーは面白い」と言っていたのが、「中国における金融市場調節=金融政策か為替政策か」である。アドレスはこちら。人民銀行の金融調節は前々から非常に興味を持っていたので、私にとっては久々にヒットなワーキングペーパーでありました。国際局さん、ありがとうごさいます。
 ざっと読んだ印象では、為替をほぼ固定した状態(人民元の上昇を抑制する方向)にしている結果として、過剰流動性への対処に苦慮している様子がうかがえた。意外だったのは、預金準備率の操作(引き上げ)がメディアを通じては「貸し出し抑制(引き締め)」と解釈されていたのに、実態としては金利コントロール(低下を防ぐ)のファインチューニングのために行われたこと。売手の代替的な手段なのかな、と思った。
 それと準備預金は、法定準備金と超過準備の二種類に分かれ、特に後者の規模がかなり大きいのにも驚いた。これは、インタバンク市場のインフラ整備が遅れており、資金取引が円滑に行いにくい状況にあるため、大手銀行などはバッファーとして多めの資金を超過準備として人民銀行に置いてるようだ。
 ところで、超過準備がかなり大きい、という事実はある日銀マンから以前聞いたことがあり、預金準備率の引き上げは結果として超過準備の減少につながる(ブタ積みから法定準備へのシフト)のではないかと思っていたのだが、これは短期金利の低下抑止という観点では正解であったことが分かった。よしよし。
 それと、超過準備には付利され、フロア金利として機能していることが明記されてあった。この部分、日銀が将来的に準備預金(or超過準備)に付利することを踏まえての指摘なのではないかと感じた。考え過ぎですか?
 全体としては、どうしても日銀をベースに人民銀行のオペレーションを考えてしまうので十分に把握できないところがある(今後、色々聞いて理解を深めます)が、それでも非常に参考になるペーパーである。興味ある方にはお勧めであります。B/S構成としては、日銀と外為特会を合体した形をイメージして読み進むと分かりやすいかもしれない。

応用編 量的緩和の正しいやり方は人民銀行が示唆していると思ったが、いかが。やはり日銀自ら外貨買い・円売り介入するのが理想的でしょう。
by bank.of.japan | 2007-05-24 21:32 | 日銀 | Comments(19)
Commented by 為替といえば・・・ at 2007-05-24 22:00 x
スウェーデンの中央銀行入りが予定されているマクロ・金融の大家スベンソン氏が興味深い提言をしています。保守的な日本人には受け入れられにくいかなとも思うのですが、本石町さんはどう思われますか?
<クルーグマン教授は、インフレターゲットを宣言することで、人々がインフレが起きると信じれば、インフレ期待の発生によって実質金利が低下し、景気を刺激すると主張している。しかし、問題は、人々が信じなければどうなるか、という点だ。わたしの提言は、為替ペッグという非常に劇的な政策を伴うため、人々の信認を得やすいのが利点だ」と言う。>
http://www.asyura.com/2002/hasan10/msg/124.html
Commented by 椿ライン at 2007-05-24 22:46 x
 毎度ご苦労様です。
 私もペーパーを読み、大変勉強になりました。執筆された王紅さんは、日銀サイトを検索したところ今回が初めての論文執筆だったようですね。どんな方なのか気になります(^^
Commented by 飛車 at 2007-05-24 23:42 x
拝読しました。固定相場制下での金融政策の独立性欠如の問題を、予想していたとおり再確認させていただいたのかなと。現在の中国と対比すべきは、現在の量的緩和ではなく、プラザ合意後の空前の好景気時期じゃないかと思います。米国依頼でしたがドル買い支え介入していましたから。
ところで、中央銀行手形の売りオペとは金融引き締めの材料に相当苦労しているんですね。というか国債市場が整備されていないのかな?外貨資産がどんどん積みあがっていくので、その分負債を作らないとベースマネーが増えちゃうのかな。手形出しすぎ&為替リスクで「B/Sが毀損する!」と騒ぐ人はいないんでしょうねw
人民銀行のイメージとしては、日銀と外為特会の他に、旧大蔵省の金融部局も含めているのかなと。

>応用編 量的緩和の正しいやり方

量的緩和しないでも済む(デフレにしない)金融政策のあり方の方がずっとずっと大事でしょうw
Commented by bank.of.japan at 2007-05-24 23:44 x
為替といえば・・・さん、どうもです。ご指摘の件は正しいと思います。宣言だけで期待が左右できる、というのは日銀的にも受け入れがたく、従って、仮に日銀が「本気で」でデフレ脱却のインタゲをやるなら、実効性ある手段(多分円安誘導の介入)を必要とするはずです。

椿ラインさん、どうもです。王紅さんは私も話がしたいところですが、まだ十分にペーパーを咀嚼していないので、ちょっと先になりますかね。
Commented by PK at 2007-05-25 13:15 x
財務省は、米国債を少しづつ減らすべきだと思います
ホームバイアスのある民間の資金が海外に出られるように呼び水で30兆円を積み上げたのですから、民間の資金が海外に出ている以上、大規模介入の30兆円は少しづつ減らすべきです。
Commented by 飛車さんへ at 2007-05-25 17:36 x
(間違っても、飛車さんに「ホラ、私の方が正しいでしょ」と言いたいのではなく、私が申し上げたロジックというのは経済学的にも(本レポート以外も含め)実証的に確認されているということをお伝えしたくて書き込ませて頂きます。決して飛車さんを批判する趣旨ではありません)。現在、日本企業は貿易財セクターで非常な価格競争に巻き込まれており、そうであるがゆえに定期昇給を実現することができなくなっているというのは、実証的に確かめられております。
Commented by 飛車さんへ at 2007-05-25 17:36 x
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グローバル企業、賃金伸びず・日銀が分析

経済のグローバル化に伴い、労働者の賃金が伸びにくくなっている。日銀の分析によると、外国人持ち株や輸出比率の高いグローバル企業ほど、生産性の上昇と比べた賃金の伸びが低めに抑えられる傾向が出ている。国際競争にさらされる度合いが高いためだ。労働需給が引き締まり、人手不足感が強まっているものの、企業の賃金抑制姿勢は根強く、家計部門への景気の波及は緩やかにとどまりそうだ。

日銀は企業のグローバル化に伴う賃金の抑制圧力を調べるため、外国人持ち株比率と賃金の関係を分析。賃金の指標として物価騰落を加味した実質賃金と、労働生産性の伸びからみた妥当な賃金との格差(実質賃金ギャップ)を計算した。外国人持ち株比率が高く、グローバルな企業が多い自動車や電気機械などは賃金水準が比較的高い要因もあり、労働生産性が伸びている割には賃金の引き上げが抑えられているという関係が分かった。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070525AT2C2404A24052007.html
Commented by 飛車さんへ at 2007-05-25 17:44 x
一点補足しておきますと、景気拡大期であるにもかかわらず賃金水準(その総体としての労働分配率)がほとんど上昇しないというのは、バブル崩壊まで、より正確に言えば、90年代前半までは全く見られない現象でした。
東南アジアや中国、インドの急速な台頭を受け、丁度80年代のアメリカが日本の台頭に非常に苦しんだ状況と同じく、現在、日本企業はアジア諸国の成長による非常なる価格競争に巻き込まれています。そうであるがゆえに、景気が多少回復しても経営者は昇給は行わず、せいぜいボーナスで反映させるという程度にとどまっています。これは、GDPの6割を家計部門が占めることを考えると非常に深刻な事態で、家計に景気のエンジンが移りにくいということは、需要の不足を通じてデフレ圧力となります。
Commented by 飛車 at 2007-05-26 00:19 x
>本石町日記さん
あれ?何かありました?(^^;。意外と鈍感。

ところで、「宣言だけで」と制約条件を設けられたら、そりゃ卑怯ですよ。「宣言と実行」だったらどうですか?もともと「宣言だけ」なんて変な話になったのは、「ゼロ金利でもう利下げできない」と思い込んでいた頃の、「手段が無いからインフレターゲットできません」という話でしょ。そんな事だから「ポテトでも何でも買えば良い」という話になったのかと。最終的にはポテトは買わずとも量的緩和や外為介入+インフレ参照値という創造力あふれる方法で実行できる事を示していただいたわけで。
まあ、いずれにせよ日銀は「暗黙の宣言と実行」でデフレターゲットをして、適切に人々の期待をコントロールしているように見えて仕方がありません。
Commented by 飛車 at 2007-05-26 00:19 x
>>飛車さんへさん
貿易財の価格競争の結果、輸出企業の賃金が低下するのは当たり前でしょう。産業構造が調整される結果、最終的には輸出産業は海外移転していって、金融業なども含め国内で内需産業の比率が増えていくはずです。大事なのは、その際に輸出産業を過度に保護して、内需産業への転換を遅らせる事が無いようにしなければならないということではないかと思います。

景気拡大期であっても賃金が上昇しないと言いますが、景気拡大していました?底を打ったところで、資産価格抑制を理由に、金融政策で成長にキャップをはめられている状態なわけで。僕は既に後退局面に入ったかも知れないという認識です。
個人的には失業率があと1%下がったら賃金上昇局面に入っていたと思っていますが、既に1年前に利上げを始めて物価上昇率を再度マイナスにぶち込む中央銀行がいるから(ry
Commented by 飛車 at 2007-05-26 00:23 x
すみません。本石町日記さんのレスと飛車さんへさんのレスが、頭の中でちゃんぽんになっていたみたいで、本石町日記さんへのレスが意味不明になっていました。
酒飲んで帰ってきた直後ということで、ご容赦をorz
Commented by とおりすがりの人 at 2007-05-26 14:21 x
インフレ目標も自信がないと拒否して物価政策も満足にできない日銀ですからね。
為替政策まで負わせるのは所詮無理ですね。
一つができないのに、二つもできるはずないでしょう。
まあ、日銀の能力は世界の中銀の中で最低ランクですから、まずは物価だけでもきちんとやってもらわなければいけません。
もっとも、飛車さんのご指摘のとおり、デフレターゲットはうまく運営されているので、決して能力は劣っていないという意見もありますね。
となれば、きちんとしたターゲットをあたえればいいだけかも。
Commented by 飛車 at 2007-05-26 17:58 x
暗黙のデフレターゲットの例:

「避けるべきは景気変動であり、そこには景気拡大も含まれる。それを避けるためには、物価指標が悪くても利上げはする」という事を言っています。「あらかじめ時期を示唆しない」と言いますが、時期を決めないからこそ、「地価・為替などがトリガーであって、物価は無視」「何時でも行動に出る」という宣言をされている事になるわけです。

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利上げ、総合的に判断 日銀総裁単独インタビュー

 日本銀行の福井俊彦総裁は25日、朝日新聞の単独インタビューに応じ、金融政策の運営にあたって「物価は基本的な視点だが、物価だけをみていると視野が狭くなる」と述べ、地価や円安の動向も重視する考えを示した。
政策金利を必要以上に据え置くと、「景気の波を大きくする。バブルの苦い経験は二度としたくない」とし、持続的な成長のため金利を上げる姿勢を強調した

http://www.asahi.com/business/update/0526/TKY200705250403.html
Commented by dell at 2007-05-26 20:51 x
ついに、福井総裁自身が本音を語っちゃいました。

http://www.asahi.com/business/update/0526/TKY200705250403.html
日本銀行の福井俊彦総裁は25日、朝日新聞の単独インタビューに応じ、金融政策の運営にあたって「物価は基本的な視点だが、物価だけをみていると視野が狭くなる」と述べ、地価や円安の動向も重視する考えを示した。政策金利を必要以上に据え置くと、「景気の波を大きくする。バブルの苦い経験は二度としたくない」とし、持続的な成長のため金利を上げる姿勢を強調した。


Commented by ただのとおりすがり at 2007-05-27 02:13 x
おなじ引用が続いている
強調したいのはわかるが、少し差別化してほしい。
25日の衆議院決算委員会でも、福井総裁は第3次利上げについて「為替相場や資産価格を十分に念頭に置く」と強調しましたね。
これで確信犯です。
Commented by PK at 2007-05-27 09:31 x
問題は金利ではなくて敗戦国民の確信の問題だから、財務省の超ゆっくりな米国債売りの方が良い。グリンスパンの0.25%刻みに相当する米国債の売買を行うべきだ。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-28 13:20
みなさん、いろいろコメントいただき、多謝です。先週末から予定が立て込みました。夕刻以降に対応する予定です。よろしくお願いします。
Commented by bank.of.japan at 2007-05-28 18:11 x
飛車さん、ただの通りすがりさん、どうもです。インフレターゲットが宣言と実行が一般的には必要です、もちろん。日銀も仮にやるならそうすると思います。手段はやはり為替介入(を企図した外債購入)でしょう。日銀のトラッキングレコードがダメなのはそうですね。今回も物価がマイナスになり、デフレターゲットしているように見えたのはその通りです。インタビューで、ご指摘のくだりを見出しに取られてしまうのは、「第二の柱」を説明しないといけないからで、バブル予防の利上げと受け止められても仕方ないですね。金融政策は、実態がどうあれ、世の中の受け止め方が大事で、景気が悪くなれば、いかに弁明しようと日銀は批判を免れない運命にあると思います。従って、私は利上げしない方がいいという立場です。
Commented by dell at 2007-05-28 21:52 x
>バブル予防の利上げと受け止められても仕方ないですね。

と言うより、それ以外に何か理由があるのですか?
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