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一万田総裁のロンバート論=日銀の金利は市中より高いのが原則である
 国会会議録の検索システムを使って一万田総裁の発言をチェックしていたところ、面白いものを発見。これは中央銀行の民間銀行向け貸出(LLR)の在り方に関する原則論と言っていいかもしれない。ロンバートはやっぱり高い水準にあるべきで、量的緩和解除時にロンバート設定で日和った日銀政策委メンバーに読ませたい。

昭和24年4月15日 衆議院大蔵委員会より。

○小山委員 それで六十億という金を貸し出されるのは、これは新たに貸出ししようというお考えでございましようが、そうしますと、今市中に行われております高率適用ということとどういう関係がありますか。

○一万田参考人 高率適用ということは、何も御心配はいらない。高率適用ということは、日本銀行の金利をお考えになると、日本銀行の金利は今安いのは一銭四厘、そうして市中貸出しは二銭八厘。日本銀行の預貯金の増加を考えずに、ただ日本銀行に來て、手形を書いて一銭四厘で借りて二銭八厘で貸してもうけて行こうという処置は、無制限に許さるべきことではありません。そうしますと、一生懸命に預貯金を集めるのに苦労して、インフレーシヨンにならぬように、なるべく預貯金の範囲で仕事をしようという最も大事な、正直ないい人は損ばかりしている。そうしてたとえば日本銀行に來て、安い金を借りて高くまわしている人が得をする。そうするとそういう銀行というものは、組合の俸給の引上げですか、こういう賃金要求にはすぐ應じてしまう。そうすると横の連絡で苦労する、そういう状況なんです。九原則でも原則として日本銀行に依存しないという建前であり原則であります。そうしてみると日本銀行の金利が、市中の金利よりも高いというのが原則であるべきであります。しかし日本の今日の経済情勢では、日本銀行の信用に依存せぬということは不可能であります。そこである程度の依存は認めなければならない。その認めらるべき範囲は、まあ普通の金利でひとつ上げましよう。しかしそれ以上お借りになれば、そうもうけられませんが、それでももうけるようにしてやるのです。私の方の高率適用でも二銭五厘から二銭七厘で、市中銀行は二銭八厘だから、一厘から三厘のさやが上る。それでも貸してやつて、貸さぬとは言わない。しかしそうむちやくちやにもうけては困る。そこで預貯金の増強を大いにはかつて行き、その一割二分くらいまでは安い金利で差し上げ、それ以上になれば、それより高い金利になる。しかしそれでもいくらかはもうけられるのですが、なお貸出しを躊躇しない。こういうのですから、私から言えば実に至れり盡せりで、どうぞ高率適用については御心配なさらぬように……。

補足 市場金利よりも低い公定歩合での貸し出し(窓口指導)は、資金不足時代の銀行(都長信銀)にはまさに一万田総裁が言うとおりに「至れり盡せり」であると同時に、日銀の民間銀行に対する絶大なる権力の源泉となった(後年の営業局の不幸な事件の温床)。裏を返せば、全銀預金超過という事態は、少なくともLLR的な観点で日銀の権力は皆無に近いわけである。
by bank.of.japan | 2007-04-10 20:52 | 一万田総裁 | Comments(4)
Commented by うさこ at 2007-04-10 23:50 x
制限を設けたらいいのでは?には反感をかわれそうですが。          ロンバートを活用したディーリング(またはあてにした運用や調達方法)には不満もあるのではないですか?ただ、日銀は短期マーケット活性化にやっきになってるかに見えるので辛抱しているのかとも。
Commented by 椿ライン at 2007-04-11 00:42 x
 予告通り、一万田総裁の発言ありがとうございます。組合の要求にはすぐ應じてしまうというところで爆笑しました。
 ただ日銀を弁護する訳ではありませんが、ロンバート設定で日和ったという冒頭のくだりはなんとも・・・。意味のない数字で落としどころを図った政府の方にも問題があるかと思います(なお書き修正の経緯も含まれるかも知れませんが)。
 個人的には、「一万田総裁」というカテゴリができたことに驚きました。歴代総裁の名言を振り返るのも面白そうですね(速水総裁の円売り介入は「国売りだ」発言とか)。
Commented by osome at 2007-04-11 18:01 x
面白いやり取りですね。
昔しの銀行が預金の獲得競争さえしていれば、半自動的にどこまでも儲かる仕組みだったことや、そういう状況をどう見ていたかを、やや古いけれど平易な表現で語ってくださっています。
今、政策を決める立場にある方々にも、「正直ないい人」が損ばかりしないように、と思って政策を打ち出していただきたいものです。
Commented by bank.of.japan at 2007-04-11 19:17
うさこさん、どもです。ロンバートに制限設けたら大変な騒ぎになるでしょう。今後は、利上げがもしできるなら、徐々に誘導目標との格差を広げることでしょうか。それでも受動的貸出なので、至れり尽せり、です。

椿ラインさん、どうもです。本当はロンバートはもう少し高くしたかったのでしょう。総裁も「中途半端…」と認めてましたし。利上げのたびに裁定されるロンバート水準は、市場への利益補填みたいな面があり、私は個人的にはダサい判断であったと思います。

osomeさん、どうもです。他にも面白いやりとりがありますので、おりを見て少しずつ紹介していきたいと思います。
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