地銀投融資に見る「問題の本質」=いびつな景気回復の症状
 本日の日経報道「地銀の投資、監視強化=ファンドなどリスク商品」を読みつつ、問題の本質は別なところにあるのではないかと思った。つまり、投融資行動の一部を監視強化するにしても、なぜ監視強化しないといけない投融資行動が発生するのか、ということだ。監視強化の是非論も問われようが、しょせんは金融庁のやること(ちなみに日銀が『監視強化』の方針を決めた形跡はない)なので、必要と判断したらおやりになるんであろう。ただ、「監視強化」は業界的には「自粛」と解釈されやすいので、記事で挙げられたリスク商品への投資にはブレーキがかかる公算が大きい(経営健全性の監視が得てして特定商品の規制になる問題もある=商品価格の変動性を高めるリスクあり)。
 さて、「なぜ監視強化しないといけない投融資行動が発生するのか」である。結論を言えば、資金(借り入れ)需要が乏しいためだ。この点は記事でも書かれている。最大の原因は「地方企業の資金需要の低迷だ」と。この結果、もともと預金超過の地方銀行は、貸出の代替として①国債を買う②ファンド系の商品を買う-しかない。そうしないと、まずバランスシートがバランスしないし、バランスさせた上でリターンを得るには単純に金利リスクを取るか、ファンド系の商品で収益を狙うしかない。もうお分かりであろう。監視強化の対象となった「投融資」は、資金需要が低迷した「結果」に過ぎず、マクロ経済との関係では言えば、資金需要を伴わないいびつな景気回復の症状が地方銀行の資産構成に表れているわけだ。
 これではいくら監視強化しても、「資金需要を伴わないいびつな景気回復」が続く限り、地銀資産には何らかの症状が出続ける。「症状」というとネガティブな印象を与えてしまうので言い方を変えるが、貸出以外でリスクを取ってリターンを得ないといけない地方銀行にとっては「自然現象」であり、監視は強化してもいいが、自然現象にブレーキをかけるものであってはならない(もちろんリスク管理が適切かどうかは把握すべき)。
 しかし、先に述べたように、監視強化は自粛を招きやすい。すでに金利リスクを取る方向に傾斜した銀行は「アウトライヤー」規制を懸念する。一方、ファンド系への投資も自粛ムードが広がれば、地方銀行のリターンを取る方向性は出口がない。これに加えて日銀は利上げし、さらなる利上げを目指す構えを崩していない。経済構造が分断化し、景気回復の恩恵が地方銀行に及んでいないという事実を踏まえない金融行政の対応、そして金融政策の舵取り。これで財政が緊縮化に向かい始めたら…。地方銀行(&地方経済)は体力をすり減らす方向にいくであろう。
 金融システムの置かれた状況は金融経済動向と密接である。金融・財政運営、それに金融行政がきちんとバランスの取れた形で運営されるのであろうか。日経記事は、この点に関して大いなる不安をもたらしている。大丈夫なんですかね、この国の経済運営は。

ps この問題に関しては日本橋ふぁんど日誌さんも鋭いエントリーをアップされている。ご参照あれ。
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by bank.of.japan | 2006-11-02 21:32 | 金融システム | Comments(8)
Commented by 通行人 at 2006-11-03 05:34 x
先日、某東北の田舎の県に出張した際に現地の人が地域経済の窮状を切々と語るんです。地場の店がどんどん潰れてイオンばかりだと。そこまでは良かったんだけど、その後の食事会が粗末というかちょっと酷いぞというものばかりで・・・地元のウマい物はいっぱいあるはずなんだけど。
その後、話す相手が間違ってると思いつつついつい語ってしまいましたorz。
「東京に食い物送って、東京の連中がウマいもの食って、付加価値の大半は東京の店で発生しているんだぞ。(国内)輸出偏重のその頭を治せ。」「いくら稼いでも、預金したらほぼ全部インターバンク経由で東京の企業が借りて、その金でイオンあたりが店を作って進出してくるんだぞ。」「まずは自分たちで自分たちの良いところを認めてちゃんと金使え。地元のウマいものは地元で消費しろ。」「資本主義では金持ってる奴より、金の使い道見つける奴の方がえらいんだ」「工場の誘致なんてしても低賃金労働と、メーカーの売上動向に依存した脆弱な経済にしかならんぞ」と。
ちと言いすぎたかな。地方の一市民にどうこうできる話じゃないけど、これ間違ってないですよねorz
Commented by bank.of.japan at 2006-11-03 13:00 x
通行人さん、どうもです。食事会がお粗末…、あぁ、その感じは良く分かります。地元の旬のうまい物はあるのですけどね。私自身、超田舎の出身なので、個人的感想も入りますが、都市圏の人が求める田舎の良さと、田舎の人が考える都市住民の田舎像にはかなりギャップがある気がします。その辺を分かって、うまく演出した旅館、リゾートは、私の田舎でも成功しています。でも、そういう成功例は、地元では異質な存在と受け止められているかもしれません。私も、実家近くの旅館が全国区で有名な秘湯だとは最近まで知らなかったのですよ。田舎にいると田舎は退屈で、脱出しないといけない場所、少なくとも私はそうでした。発想の切り替えは難しいです。ご指摘は正しいと思いますよ。
Commented by 害債 at 2006-11-03 15:17 x
最近地銀というとほとんど条件反射してしまう駄目なワタクシですが、勝手にリンク貼らせていただきました。まさに資金需要のない中で(わずかながら金利がついたために)預金だけが一時的に増えるインバランス状態が元凶のひとつかと思います。短期的には金利引き上げは預金金利の引き上げ幅が少ないかたわら貸付金利を引き上げられるため銀行へのメリットはありそうですが、絶対的な需要が出てこない限りどうせもとの木阿弥でカーブがフラット化することはさけられないとおもいます。地銀ではありませんが、某信託銀行の中間決算では対3月末比で不動産向け融資の占率が急騰していました。一般化するのは危険であるとはいえ、やっぱりそこにいくか、という印象です。金利を引き上げた結果バブル的な融資が増えたらしゃれにならないですがね。
Commented by 壱万円札 at 2006-11-03 15:57 x
昔、信用金庫に勤めていた時、大蔵省の検査が入りました。本部の資金運用で国債の評価でひと揉めがあったそうです。検査当時、金利が上がった為、既発国債の市場価格は額面割れしていて、当然わが信金も額面割れしていた価格で評価していたのですが、なんと大蔵検査官は「額面で評価しても良いのでは」と検査基準・会計基準に無い事を言い出したのです。言いたいことは良く判りますが。たとえトヨタの社債でも市場で額面割れしていたらそんな事は言わないに違いありません。今一番のハイリスク債券は国債です。ハイリスク商品である国債の監視強化こそ金融当局はすべきです。そして日銀も自らハイリスク商品である国債の残高をゼロにすべきです。現在の政府の財務を客観的に見れば、国債がハイリスク商品である事は判るはずです。
Commented by 壱万円札 at 2006-11-03 16:11 x
追記 国もハイリスク商品である国債の販売自粛をすべき。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-03 21:29
害債さん、どうもです。リンク有難うございます。地銀さんは伝統的に預金超過ですので、最近の運用難はかなりきついかもしれません。やっぱ、イールドカーブはフラット化の圧力が強まるのではないでしょうか。某信託銀行のように、貸出と言えばやっぱり不動産に向かう比率が高くなるのは自然かもしれません。逆説的ですが、資産価格の上昇が唯一の望みではないかと、住宅ローンを背負う身としては勝手に期待する次第です。
壱万円札さん、どうもです。国債がある意味では本質的かつ中長期においてハイリスクである可能性はあります。政府がアウトライヤーですから、資金循環を担う銀行もアウトライヤーになりやすいわけで。でも、国債減らすと増税・歳出カットは不可避ですので、目先は大不況の恐れがあり、誰も踏み出せないのではないかと思う次第です。
Commented by システム5.1 at 2006-11-06 08:18 x
壱万円札さんの、「国もハイリスク商品である国債の販売自粛をすべき」というのに何と反応して良いのか難しいですが(笑)、結局、別のエントリーで議論になった、「預金を落としなさい」という結論になりますね。
Commented by ズバリ勉強不足。 at 2006-11-08 22:45 x
>壱万円札さん
国債は「名目ベース」で最もローリスクな資産です。トヨタの(円建て)社債よりハイリスクになることは有り得ません。
民間部門が金余りである以上、政府部門が国債発行しないと経済は回らないのです。
んで、「名目ベース」に不安を感じる向きも多々ございましょうが、所詮為替なんて不美人投票だと思いますよ。個人的には目下「円ブル派」なんですけど、コレは思いっきりポジショントークです(汗)。
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