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「展望リポート」、変わらないのは相対的に後退?=ヘッジが目立つのは高等戦術かも
 展望リポートが出た。前回をコピー&ペーストした内容だろうと予想しており、ほぼそれに近い感じであった。福井総裁の会見内容から発言を拾うと「われわれは意外に慎重であり、4月と変わらないとの見方は正解である」に尽きるであろう。ただ、本来は時間経過に伴って景気拡大を背景にインフレ期待が強まるはず。逆説的には、時間経過してもインフレ期待が高まらず、追加利上げに向けて前傾できないのは政策スタンスが相対的に後退した印象を受ける。
 それと、中長期のリスク分析である「第二の柱」において「下振れのケースとして、景気拡大や物価の上昇が足踏みするような局面も考えられる」というのが唐突に入ったのが目を引いた。最近の景気情勢から「足踏み=軽度の踊り場」のリスクが意識されるので、ヘッジを掛けたのだろうか。さらに、物価上昇率の先行きについて、「第1に、需給ギャップに対する物価の感応度に不確実がある」といきなり言い切ったのはちょっと驚き。もともと感応度は弱いとの見方が一般的で、今ごろ言うなよ、と思った。「景気拡大の長期化にも関わらず、生産性の上昇が継続し、賃金の上昇が遅れる場合には物価が上昇しにくい状態が続くことも考えられる」というわけだが、今がそうなのではないか。これもヘッジだね。
 ヘッジが目立つのは、振り返ってみて見通しが適切であったことを証明するための日銀文学であるが、4月時点では予想しなかったネガティブな事象が起きる(起きつつある)ことでもある。シナリオがやや弱気に振れている感が強い。もっとも、物価が上がりにくいのも景気拡大が足踏みになるのも想定済みの事態ということにして、あくまでも将来の追加利上げの可能性は堅持し続ける、という作戦が念頭にあるのだろうか。だとすると、かなりの高等戦術である。作戦参謀、考えましたね。確かに追加利上げの可能性を捨て去ると、日銀の負け確定だし。

なお、展望リポートの文章量が減った。一ページ分少ない。これは説明にこだわる白川理事が去ったことが一番の要因ではないかと思った。日銀マン&ウーマン、そうでしょ?
by bank.of.japan | 2006-10-31 21:35 | 日銀 | Comments(8)
Commented by 壱万円札 at 2006-10-31 21:52 x
「マン&ウーマン」より「パーソン」の方が、スマートな言い方かと・・・(私自身は「パーソン」という言葉は何か、しっくりこないので嫌いなのですが)
Commented by walrus at 2006-10-31 22:26 x
今回の総裁会見を利上げに対し、地ならし的な捉え方が多いようですが、そうした見方は的を射ていません。基本的に原則論を繰り返したに過ぎず、先行きリスクも敢えてバランスさせています。リスクがバランスしても利上げするというのは、そもそも緩やかな利上げがメインコースになっているのだから、改めて驚く必要は全くありません。景気強気維持については、もはや退路のない日銀にとってごく自然な現象です。今回の追加情報は、会見でのITリスク重視のコメントとbank.of.japan さんご指摘の諸点です。相場に対峙するうえでは、明らかに日銀にとって外部環境が逆風になりつつある点をこそ重視すべきです。因みに私の試算によれば、3Q実質GDPはマイナス1.6%程度が見込まれます。
Commented by walrus at 2006-10-31 22:28 x
▲1.6%はもちろん前期比年率です。
Commented by ファルマコン at 2006-10-31 22:52 x
景気強気派の私も今回のIPや9月の指標にはやられました。ずばり「弱い」。私もwalrusさん同様、3Qは相当弱いとみています。輸出の強さでかろうじてプラス維持程度に思っていますが、4Qにかけてもあまり期待できないな~って感じです。まー、息の長い景気拡大は続くかもしれませんが、何とも実感が乏しい形ですね。日銀は何かいい材料がでて市場が勝手に反応してくれたら追随して利上げするでしょうけど、しばらくは様子見ですかね。何か強いデータって期待できますかね~?
Commented by walrus at 2006-10-31 23:08 x
内閣府の景気総合指数によると、3Q実質設備投資は前期比▲1.8%となっています。個人消費も恐らく前期比▲1.0%近いマイナスとなりそうです。いずれも年率ではありません。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-31 23:24
壱万円札さん、アドバイス多謝です。今度使ってみます。
walrusさん、早速の解説多謝です。先行きのアップサイドリスクの堅持=追加利上げの可能性堅持、これは確かに退路がない日銀の崩せないポーズでありますね。逆風でも突っ張り続ける、これしかないです。逆風が暴風雨になって吹っ飛ばされることがないよう、祈りたいです。GDPのマイナス、日銀は家計調査のバイアスのせいにするかもしれません。
ファルマコンさん、どうもです。しばらく統計的には逆風かもしれません。生産統計も目先弱そうです。電子・デバイスは在庫がジャンプした感あり、調整のリスクも指摘されます。追い風を待つしかないです。
Commented by オレンジ at 2006-11-01 09:20 x
弱気見通しの人しかエントリーできないような雰囲気もありますが・・・私は、3%から2%成長に減速する過程は、結構、大変なんだなと見ております。特に、物価が上がりにくい環境では尚更のような。2%成長が普通になれば、目線が落ち着いてくるように思います。
Commented by bank.of.japan at 2006-11-01 11:24 x
オレンジさん、どうもです。私が弱気なのものですから、雰囲気もそうなりがちです、すいません。マスコミ&マーケット全般は強気論が目立つので、少数派(=弱気派)の方々が集まりやすいのかもしれません。なお、成長率の鈍化自体は日銀も早い時期から予想しており、読みを外したわけではないですが、潜在成長率を1.8%前後に置いたため、2%成長だとほとんど物価は上がらない(そのヘッジも展望リポートでなされた)と考えられます。目線は慣れても、利上げするのは相当にしんどいかもしれません。「第二の柱」に頼り過ぎると、失敗した場合のツケは大きいと思われます。今後ともよろしくお願いします。
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