邦銀は本当に儲け過ぎなのか=「バブル期以来の収益」とは言っても
 大分前だが、「バブル期以来の収益を挙げた邦銀は儲け過ぎ批判を気にしている」との新聞記事があった。邦銀収益のカラクリについては、引当金の戻りが大きく寄与し、「貸出増大・預貸利ザヤ拡大」という健全なものではないことは過去のエントリーで何度か書いたとおりである。ここでは、収益規模を過去と単純比較することが正しいかどうかについて考えてみたい。
 まず、バブル期と今とで違うのは、会計基準が透明化したことだ。不透明な時代の会計基準に基づく「収益」と、透明になった基準による「収益」を比較する場合、隠れた部分の収益を勘案する必要があるのではないか。
 ご存知のように、バブル期の銀行は「膨大な土地・株式の含み益」を抱えていた。この「含み益」を力の源泉として邦銀が海外市場に低利融資の攻勢をかけ、シンジケートローンなどの利ザヤが叩きつぶされたわけだ。「(邦銀のせいで)儲からないからやめる」と言ってシンジケートローンからの撤退を宣言した米銀(シティバンク?)がいたのを覚えている。
 その後の邦銀はどうなったのか。バブルの崩壊で含み益は吹き飛び、あらゆる手を使って不良債権を処理した邦銀はもはや余力はなく、自己資本の不足で公的資金を注入される結果となった。現在の会計基準が体力状況をほぼガラス張りにしていると仮定するなら、海外市場を荒らし回れる「含み益」などないことが分かる。
 「収益」規模がバブル期と同じとは言っても、実力ベースで体力比較するなら、今は情けないほど非力であると言えよう。なお「儲け過ぎ」を正しく解釈するなら、本来は取ったリスクに対して不当なリターンを得ている、という意味で、非常に低い預貸利ザヤは儲け過ぎではなくて、儲からなさ過ぎとも言える。もっとも、低い利ザヤであることは、私も含めて住宅ローンを背負った家計は助かるのだが。預金金利上げるぐらいなら、貸出金利を下げて欲しい、と願う次第だ(笑)。

 大量に人を採用している邦銀はリテール強化が念頭にあるようだ。これについて思うことがあるのだが、この問題ではvon_yosukeyanさんが非常に参考になるエントリーをアップしているので、そちらをまずご参照願いたい。
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by bank.of.japan | 2006-10-06 20:41 | 金融システム | Comments(16)
Commented by 為替トレーダー at 2006-10-07 00:01 x
あれ?本石町さんは、もしかして変動金利で住宅ローンを・・?
最近、固定金利でマンション買ってしまった私は選択間違えたかしら(笑)
Commented by bank.of.japan at 2006-10-07 00:23
いえ、固定(期間2年)です、為替トレーダーさん。借りるとき、これが一番低い金利でしたので。それに利上げなんで出来るわけない、と思っておりました(笑)。ところで変動金利って、なんで短期固定より高いんですかね。不思議です。
Commented by 壱万円札 at 2006-10-07 13:02 x
別にメガ・バンクを始めとする銀行の肩を持つ訳ではありませんが、かつて金融界の片隅にいた人間として言わせてもらうと、バブル崩壊後の巨額の不良債権処理は、銀行が今まで融資リスクに対して適切な金利をもらって無く、適切額の引き当てがされていなかった事に問題があった事に尽きます。バブル崩壊以前でも、融資先の信用度・担保にかなり問題があるのに、(1)かなり大きな融資を長々期に証書貸付しているケース(融資期限が来ると。また前回と同じ融資額で繋ぐことも含めて)(2)融資先の信用度・担保にかなり問題があるのに、漫然と単名手形で融資を何年にも渡って書き換えるケース。
Commented by 壱万円札 at 2006-10-07 13:03 x
《つづき》(3)融資先の信用度・担保にかなり問題があり、割引手形先の信用度に疑義があるのに、「割引手形なんて担保無くても割り引いてもらえる」と錯覚している債務者。何か既得権みたいに錯覚している債務者。そしてそれに気づいて対応しなかった銀行。これが大まかな実態でした。本来、融資金利は調達金利+融資リスクを下回ってはいけません。ある融資先の融資リスクが10パーセントで、調達金利が2パーセントならば、その融資先への金利は12パーセントを下回ってはいけません。(銀行の適切な利益や経費を考えなくても)こんな当たり前の事をしてこなかった銀行。
Commented by 壱万円札 at 2006-10-07 13:04 x
《つづき》そして適切な融資リスクに対応する金利を払ってこなかった債務者。これに問題があり、それが数十年にも渡り矛盾を積み重ねた結果、バブル崩壊後の巨額の不良債権処理は、今までの不作為の後始末であり、バブル崩壊が巨額の不良債権処理を招いた訳ではなく、今までの適切な融資リスクに対応する金利をもらってなく、適切な引き当てをしていなかった銀行の「真の姿」をバブル崩壊が顕在化させただけです。バブル当時の邦銀は我が世の春を謳歌していました。それは含み益ばかり喧伝されていましたが、適切な引き当てをしていなてい含み損に気が付いていませんでした。
Commented by 壱万円札 at 2006-10-07 13:20 x
《つづき》現在のメガ・バンクも、雑誌等によると、数年前メガ・バンクの決算が不良債権処理に追われて、建設業で不良債権処理「飛ばし」が以前より巧妙に行われていて、未だにメガ・バンクも透明な会計処理をしていないようです。雑誌には以前名前がさんざん言われた中堅建設会社が明記されていました。今は少し余裕のあるメガ・バンクも刑事事件の時効が過ぎるまでは適切な会計処理をできないそうです。本当に銀行が健全になるには、透明な会計処理、そして適切な融資リスクに対応する金利をもらい、適切な引き当てをする、事に尽きます。
Commented by 壱万円札 at 2006-10-07 13:55 x
《つづき》ついでに郵便局の問題は、郵便局が適切な不良債権処理をしていない事です。バブル崩壊後、貯金の超々々々々々々低金利を原資に、巨額の不良債権処理をしてこなかった事は、いずれ顕在化します。融資先で実質焦げ付いているのに、延々と漫然と融資・出資し続けています。本来融資できない先も、出資という名目でミルク補給しているそうです。ただし巨額の不良債権処理をしようとすると、郵便局員のリストラ、政府外部機関の不正で大量の血が怖くて誰も手を付けません。また労組との関係もあり民主党も知らぬふりです。少し前、新聞に郵政公社が利益を上げていると記事がありましたが、あれは引き当て前の虚像です。
Commented by 通行人 at 2006-10-07 21:22 x
収益に関する似たようなネタにV字回復というのがあります。単年度でとく損を一括処理して、翌年元の収益構造に戻ると「奇跡のV字回復!」となるそうな。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-08 01:03 x
壱万円札さん、どうもです。詳細にわたるコメント多謝です。まさに貸出におけるリスクに見合ったリターンが得られていなかった(それは今でも続いている可能性が大かも)こと、不動産の担保価値を膨らませすぎたツケが一気にきたのがバブル崩壊であったのでしょう。特に短期貸しのロールオーバー(ベタ貸し)が金利だけ払い続けることの不自然さは問題がありそうな感じです。
通行人さん、どうもです。それに似た銀行決算があったのを思い出しました。経営状態は変わらないはずなんですよね。
Commented by なっしゅ at 2006-10-08 06:04 x
上場企業など比較的大きな企業向け融資のスプレッドは引き続きタイトです。
中小企業向け融資は、昨今証券化が前提となっていたりして、やっぱりスプレッドは低めでしょうねぇ(その低スプレッドの影響は証券化商品の投資家がかぶる)。銀行もリレバン対応の一方で不良債権処理もしなくちゃでどうすりゃいいんだ!というところ。
なお、今後景気が継続的に拡大してくるとなれば、総資本コストの抑制に目覚めた企業側が、負債積み増し(=銀行等からの調達増加)という流れになるはずなんですが、スプレッドの引き上げまでに至る道はまだ遠そうです。
Commented by von_yosukeyan at 2006-10-08 21:40 x
>なっしゅさま

中小企業融資のCLO/ABS化は掛け声はすごい(声は大きい)と思うんですが、国内で消化できるほどの市場があるんでしょうか? セカンダリが成熟しているとは思えないし、政府系/自治体は積極的ですが、スプレッとの薄いシニアやメザニンの買い手というのが思い浮かばないのですが、現状はどんな感じなんでしょうか?
Commented by 為替トレーダー at 2006-10-09 06:48 x
なるほど固定2年ですか。とりあえず一番低い金利のもの選んでおいたら間違いなさそうですよね(笑)。変動金利のほうが高いのは、多分、短期固定のほうが預貸利ザヤ小さいからでしょうね(もしかして公庫と民間の競争的なもの・・・?) 
Commented by なっしゅ at 2006-10-09 13:45 x
von_yosukeyanさん
私は運用部門にいる訳ではないので半分憶測なのですが、預貸率の低い地域金融機関は、資金を遊ばせておくよりは、ということで購入していると思います。国債は別として高格付の社債はどうしても玉が少ない状況ですからABSに向かわざるを得ないと思います。メザニンは私も謎です。ほんと、金融機関はどこで儲けてるんでしょうか。
Commented by von_yosukeyan at 2006-10-10 01:01 x
なるほど。運用難が背景ですか・・・。ALM上問題がないのか心配になります
Commented by システム5.1 at 2006-10-10 08:30 x
上記見解は(民間)金融機関寄りかなあと感じます。ちなみに、私は以前、メガバンクに属していましたが(笑)。
Commented by bank.of.japan at 2006-10-10 23:37
為替トレーダーさん、どうもです。私が聞いた話では、変動より短期固定が低いのは、新規顧客取り込みのためのディスカウントらしいです。2年後に取り戻すつもりなのでしょう。私としては、最初から長期固定(金利は高い)にいくより、短期で転がした方が勝つのではないか、というもの。インフレ圧力、弱いですから。
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