知り合いのエコノミストから聞いた話。
ある顧客がスイスに行ったところ、「現地では円建てローンの広告が目立っていた」という。 これは意外な証言である。もともとスイスの金利は低く、欧州で流行る外貨建てローンのかなりはスイスフランで占められているため。つまり、私は、スイス以外の欧州人は金利の低いスイスフランで借金をし、スイス人は自国通貨建てでローンを組んでいる、と思っていたのだ。 以下は推測である。 スイス人が外貨建てでローンを組むには、スイスフランより低い金利の通貨が必要。それが円であった、というわけであろう。調べたところ、スイス国立銀行(中央銀行)はこのところ利上げしており、現在の政策金利(3カ月物LIBOR)の水準は1.25-2.25%のレンジ(不思議な政策金利体系である)。誘導目標はレンジだが、ターゲットは真ん中付近だとすると、1.75%となる。仕組みはよく分からないが、スイスフランよりも低い円建てローンが可能なのだろう。 なお、インタバンクでは引き続き相対的に外銀のビッドが強い状態が続いているようだ。資金ディーラーによると、一部外銀(恐らく欧州系)の調達はかつての都銀中位行並みではないか、という。 うーん、日銀が断続的に利上げし、しかも円高になればスイス人が借金地獄に落ちる、という構図なんだろうか。裏を返せば、現状のままでも金利ルートのポートフォリオリバランス効果がグローバル(欧州方面)に働いている、とも言える。円・スイスフランの金利スプレッドが開くほど、スイスの住宅市況が活性化されるのかもしれない。 キャリートレード絡みの証言、引き続き歓迎です。
by bank.of.japan
| 2006-10-05 19:36
| マーケット
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Comments(11)
いつも興味を持って読ませていただいております。これだけあちこちで円キャリーをやられてしまうと、日銀の金利引き上げにも国際的な話し合いが必要になってくるのかもしれませんね。為替取引と融資がこれほどまで国境を越えてリンクした時代は今までそれほどなかったのではないでしょうか?いずれ国内金利も「協調」して操作する時代に入るのかなと勝手に思っています。まあその前にどこかで一回吹っ飛ぶのでしょうが。
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bank.of.japan
at 2006-10-06 12:01
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害債さん、どうもです。ご指摘のように、内外のマネーフローが太くなっていくと、金融政策も国際協調を意識せざるを得ない側面があります。問題は、国際協調と国内経済がうまく整合的になれるかどうかでしょう。これは結構難しいと思われます。グローバルなマネーフローに着目すれば、世界中銀みたいな存在がいいのでしょうが。ユーロ・円の関係では、日銀はECB東京オフィスと化すかもしれません(笑)。
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壱万円札
at 2006-10-06 16:08
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もしかしたら、金利よりも為替を意識しているのでは???スイスフランのレートは知りませんが、ユーロは高くなっているので・・・
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bank.of.japan at 2006-10-06 19:47
壱万円札さん、どうもです。為替は確かに意識せざるを得ないでしょうね。特に日本は依然として輸出主導の経済ですので、為替変動の影響は大きいと思います。ユーロ高(円安)の傾向が続けばいいですが…。
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壱万円札
at 2006-10-06 20:22
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昔々、私が某信用金庫に勤めていた時、融資先に数億円の融資が必要となり、融資稟議を出しました。しかし信金自体の預貸率がタイトだった為、ドル建ての融資になってしまいました。為替ヘッジはしましたが。もしかしたらその融資先も資金繰りがタイトなのか、為替手数料狙いで借入者を丸め込んだかも。
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為替トレーダー
at 2006-10-06 23:50
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購買力平価でみてもユーロは円に対してかなり過大評価がされているとおもいます・・・。キャリーの影響は大きいですね・・。
むかし対外シンジケートローンが多かったときでもレートは円安に触れましたが、その比ではないかもしれません。 スイスフラン円はレンジレンジと思っていましたが、円安基調ですねぇ・・・。やはりキャリーが?・・・
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bank.of.japan at 2006-10-07 00:35
壱万円札さん、どうもです。貸出枠がタイトなとき、外貨で飛ばす、というのは昔話で聞いたことあります。日銀の窓口指導逃れだったような…。ちょっと記憶が曖昧です。銀行の古参で詳しい方がいれば教授願いたいです。
為替トレーダーさん、どうもです。対欧州通貨の円安では、キャリートレードの影響があるとは思うのですが、如何せんフローを掴める統計がないので、想像するしかないです。日銀も把握は苦労しているようです。知り合いの欧州系銀行筋によると、やっぱり円調達はかなり多いみたいですね。ちなみに先月の短期市場統計では、調達トップの業態はやっぱり外銀でした。
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EURO SELLER
at 2006-10-08 13:18
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私の名前も過大評価のユーロに対するアンチテーゼです。そうですか。スイスでもキャリートレードが始まりましたか。道理でUSD/CHFが上値を抑えられています。欧州全般、たとえばスペインの住宅バブルもそうやって円のローンによって成り立っているのでしょうかねえ。
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bank.of.japan at 2006-10-09 01:24
EURO SELLERさん、どうもです。私も欧州通貨統合はソフトユーロになる方向を見ておりましたので、昨今のユーロ高はなかなか付いていけないです。ネそれから、以前ネット検索したところ、在スペインと思われるローン業者が外貨建てを宣伝し、円も入っておりました。円ローンがバブルの一角を担っているかもしれません。
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K
at 2008-10-23 18:07
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予想が当たり、ヨーロッパ人が借金地獄に落ちましたね。
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bank.of.japan
at 2008-10-24 00:10
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Kさん、どうもです。ありがとうございます。良くぞ古いエントリーを覚えていてくださり、多謝です。まあ、最悪のシナリオを念頭に置いたら、まさにそうなってしまいました。欧州庶民、何とも気の毒なことであります。
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