“CPIショック”と金融政策の行方
 ちょっと旬を過ぎたネタながら、休暇中に発表された7月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)について。基準改定による指数の下押し幅が0.4%もあり、これは結構な驚きであった。債券市場には相当な影響が出たのだろうなと思いつつ出社したところ、案の定「大変な騒ぎだった」と知り合いのエコノミストが教えてくれた。市場では“CPIショック”と呼ばれているようだ。
 7月の同指数上昇率(前年同月比)は新基準で0.2%、旧基準では0.6%。基準改定の下押し幅は「最大でも0.3%」と日銀は見込み、債券市場の予想では「0.1-0.2%程度」だった。結果として0.4%も指数が下押しされたのは特に甘めの予想をしていた債券市場には衝撃であり、長期金利が急低下したのは当然の反応かもしれない。
 休暇中であったので、主として旅先での新聞報道が情報源であったが、債券市場がCPIショックに見舞われた事情は詳しくはつかめず、むしろ「脱デフレ」との新聞見出しに「?」という印象を持った。やっぱり席についてリアルタイムで相場の動きをモニターし、市場関係者と直に意見交換しないと統計の評価はわからないものだと痛感した次第である。
 さて、消費者物価の基準改定を受けた金融政策の行方だが、日銀マンらも改定の影響が予想より大きかったことには「驚いた」ようだが、これで追加利上げに向かう金融政策の運営姿勢が変わることはないようだ。ただし、旧基準から新基準への移行で指数が大きく下方にずれたことで、債券市場のインフレ期待はかなり後退し、金利低下地合いは相当に強い経済指標が出てこない限り、変化しそうにない。従って、日銀が仮に早めに追加利上げに動こうとしても、市場との対話が難しくなるのは必至であろう。
 なお、追加利上げの時期については、日銀自身もまだ分かっていないのが実情だと思われる。いつかはやるつもりだが、それは指標&株価次第ということであろうか。雨男のジンクス、外れるといいのだが…。
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by bank.of.japan | 2006-08-29 22:54 | 経済 | Comments(8)
Commented at 2006-08-30 01:17 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2006-08-30 11:56 x
↑さん、コメント多謝です。非公開の処理をされておりますので、この欄で返答するのは一応は避けたいと思います。
Commented by ECO at 2006-08-30 13:44 x
確かに大騒ぎでした・・・。改定値公表前は、日銀自身の強気な経済見通しを前提に、年内一回、年明けの3月までにもう一回、と見込んでいたのですが、携帯電話の値下げなんかで上昇率がゼロになりかねないような状態では、難しいかもしれませんね。でも8月からガソリン価格上昇でCPIが押し上げられるから、逆にさっさと2回目の利上げもありかなぁ・・・・と、経済見通し担当として混乱しているところです。次の総裁会見でのコメントを早く聞きたいんですが、あんまりはっきりしたことは言わないんでしょうね。水野さんが昨年12月みたいに「そんな細かいこと気にしてませんから!」とでも言ってくれれば、見通しも立てやすくなるんですが・・・。

役に立たないコメントでスミマセン。
Commented by bank.of.japan at 2006-08-30 14:46 x
ECOさん、どうもです。日銀も追加利上げのスケジュールは決めかねていると思われます。ボードメンバーそれぞれイメージはあるでしょうが、所詮はイメージに過ぎず、実際にどうなるかは統計や株価などに左右されると思います。個人的には、利上げが後一回できれば御の字で、いずれ到来する減速局面が後退局面にならないように祈るしかないのではないかと見ています。今度ともよろしくお願いします。
Commented by 通りすがり at 2006-08-30 17:00 x
統計をやっている人にとって、改訂による指数下げは予想の範囲内です。
過去の消費調査から入れ替え品目はある程度わかるし、機械的な作業です。
日銀でも物価統計を作っているのですから、当然わかっているはずです。
むしろ、わかっているから、7月に利上げしたのでしょう。
これで、金融政策のスタンスが変わらないと思います。
そのうち、ほとぼりが冷めれば、やるでしょう。
Commented by bank.of.japan at 2006-08-30 18:14 x
通りすがりさん、どうもです。基準見直しが機械的な作業になるのはその通りですね。ただ、日銀の統計専門家らも、下げ幅の大きさは意外であったようです。もっとも、これも技術的な要因によるもので、金融政策の方向性を左右するほどの事ではないでしょう。追加利上げをやれるような状況になることを祈りたいです。
Commented by 通りすがり at 2006-08-30 21:52 x
技術的で金融政策を左右しない?
そんなことないと思います。物価をみない金融政策なんてありません。

日銀の統計専門家は、企画局白塚氏でしょう。
2005年11月日銀レビューを書いています。
彼はかつて0.9%上方バイアスがあるといっていました(本格的な学術書で)。
それを機関誌みたいなぺらぺらの日銀レビューで、0.26%もないと意見をかえました。
その苦悩がレビューにでています(と私には読めます)。
皮肉なことに、かつての意見(0.9%)と今回の意見変更(0.2%)の中間に、現実が落ちました。
bank.of.japanさんは、日銀職員にやさしいですが、その目でレビューを読むとどんな感想でしょうか?


Commented by bank.of.japan at 2006-08-30 22:41
通りすがりさん、どうもです。説明が舌足らずですみません。金融政策はもちろん物価を見るものです。ただ、かつてのCPIペッグの時間軸政策ようににそれのみに縛られることはない、という意味です。「今回の基準改定によって金融政策が左右されない」というのは、私の持論ではなくて、日銀はそう考えている、という意味です。なお、私は統計の専門家ではないので、レビューへの感想は特にはないです。というか、生活実感として、一物一価の統計作成でどの程度物価の実勢を補足できるのかなあ、という素朴な疑問を持っています。生活防衛上、なるべく安く物を買う行動を以前として取っており、この点は以前のエントリー(7月24日)でも紹介した花王社長の「家庭用品分野では今もデフレが続いており、収益環境は厳しい」に同調するものです。それから私は(個々の)日銀職員には優しい(つもりです。日銀マンがそう思ってくれるか別にして)ですが、政策運営には総じて批判的です。
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