16日に公表された金融政策決定会合議事要旨(7月14、15日開催分)によると、野田忠男委員が公定歩合0.4%への引き上げに反対していた。「今やインタバンクで資金の出し手となった銀行の出身だから」とみなされがちだが、恐らくは自身の考えで反対したのだろうと思う。
大勢に逆らって反対票を入れるのは「精神的にしんどいことだ」と審議委員から聞いたことがある。野田委員の反対票は本筋の政策運営に対するものではないが、それにしても最初の決定会合で反対票を入れるのはなかなかではないかという印象を受けた。特に前任の中原真委員のように市場畑ではなく、企画畑の野田委員がマーケット的な視点で正論に基づく行動を取ったのは意外な収穫であった。 注目されるのは今後の投票行動であろう。景気動向が微妙な局面に際し、大勢が追加利上げに動こうとするとき賛成するのか反対するのか。これによって基本スタンスが鮮明になるのだろう。なお、日銀的には演技でしかなかった量的緩和下において、審議委員らを「タカ」か「ハト」かで分類する意味は乏しかったが、これからはタカ・ハト区分が意味を持つかもしれない。 ただし、インフレリスクが乏しい中での追加利上げとなった場合、賛成派は「糊代派」または「独立性をはき違えた日銀至上主義派」、あるいは「財政締め上げ派」であろうか。反対派は「普通の感覚派」となる。状況として最悪なのは利下げするかどうかでもめる事。そうなると法改正かもしれない。 ps ゼロ金利解除の決定を受け、政府は「市場安定の確保の重要性」、「政策判断の丁寧な説明」など求めた。いずれも情報発信の基本事項であり、中央銀行として出来て当たり前のこと。政府としては「けん制」の意味で言わずもがなの注文を付けたのだろう。嫌味な行動ではあるが、日銀側の情報発信がお粗末なのは否めない。情報発信をめぐる議論は何度も目にして不感症になっていたのだが、よくよく考えると「廊下を走るな」、「私語を慎め」といった類の話であり、政府が中央銀行の基本動作で文句言わなくなる日が早く来て欲しいものだ。
by bank.of.japan
| 2006-08-17 18:03
| 日銀
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Comments(4)
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システム5.1
at 2006-08-18 08:01
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反対者3人の中で意見が最もすっきりしていましたね。企画畑の銀行員らしいと私は感じましたが。
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bank.of.japan
at 2006-08-18 11:15
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システム5.1さん、どうもです。私もご指摘ような印象です。日銀内の声を聞いても感触はいい感じです。
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システム5.1
at 2006-08-18 13:44
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都銀の企画畑というのは日銀の方々と最も肌が合うと思います。市場関係者よりも。
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bank.of.japan
at 2006-08-18 16:41
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その感じは良く分かります。距離感は、日銀企画…都銀企画……日銀市場局…金融市場、ですかね。
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