銀行“便乗気味”利上げの行方
 ゼロ金利解除に伴い、銀行間では「普通預金」の金利引き上げが相次いだ。そして、短プラも引き上げられそうである。前者については、ほぼ0金利を一部は0.2%に、多くは0.1%に引き上げる。一方、短プラは0.25%の引き上げ幅となる見込みだ。「預金」を「融資」する際の単純なコスト計算をすると、0.1%のコスト上昇に対し、0.25%が融資金利に転嫁される格好となる。利ザヤは結果的に0.15%広がるわけで、この分は便乗気味の利上げである。
 「気味」としたのは、本当に便乗できるかどうかが不透明なため。預金サイドについては、リテール顧客獲得のために大半の銀行は金利を上げざるを得ない。一方、貸出サイドだが、資金需要はそう盛り上がっていない。何度もエントリーで取り上げたように、貸出増加で目立つのは激戦商品である住宅ローンや擬似国債である地公体向け融資などで、企業からの借り入れニーズは低調。そういう中で、短プラ引き上げ分を簡単に転嫁できるかどうかは難しいように思う。
 ここで問題となるのは、大企業は借り入れ依存度がかなり低い一方、中小企業は依存度が高いこと。短プラ引き上げは、大企業ではなく中小企業を直撃する公算が大きく、利上げは弱い立場ほど直撃されるという逆進性が生じしてしまう。日銀の利上げロジックは、潜在成長率に対して高過ぎる現在の成長を潜在成長率以下に抑制すること。そして高過ぎる成長の原動力は設備投資であり、利上げは設備投資を抑制しないといけないわけだ。
 間接金融を通じた金融政策(利上げ)の波及メカニズムでは、先に記したように中小企業を直撃し、大企業の特にキャッシュフロー内で設備投資するところはほとんど影響を受けない。短プラ引き上げを貸出にフル転嫁すれば銀行収益は増えるが、中小企業の収益が移転するだけとなる。さらに移転を分解すると、銀行は移転された所得の半分弱を預金者に還元する構図である。預金・貸出ルートで見た利上げの実像はマクロ経済的にはあんまり筋が通らない感じだ。
 なお短プラ引き上げが貸出に転嫁できないと、銀行は業務純益が減少すると考えられる。短プラ引き上げの行方、一体どうなるんでしょうね。
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by bank.of.japan | 2006-07-19 22:10 | 金融システム | Comments(0)
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