信託の「利下げ」、日銀の「利上げ」
 先週末、新聞の折り込み広告にある信託銀行のチラシがあった。「この金利を見逃さないでください」というキャッチコピーで、住宅ローンを売り込んでいた。驚いたのは金利の低さである。固定2年物が「0.6%」であった。以下、固定物を並べると、3年物は「0.95%」、10年は「2.10%」、20年は「2.68%」、30年は「2.73%」となっていた。借り換えもOKなので、私は真剣にメーンバンクを変えようかと思っている(もちろん、仁義を切るために、このチラシを見せて競争可能かどうかを聞くつもりではあるが…)。

 さて、問題はこの銀行の対応を金融政策との関係でどう解釈するかである。日銀が「利上げ」を前提に量的緩和を解除しようとしているときに、民間銀行が「利下げ」するのは矛盾しているように見える。どちらかが間違えている可能性があるのではないか。もちろん、民間の「利下げ」が顧客基盤の拡大を狙った期間限定の販促に過ぎず、取り込んだ顧客に様々な金融サービスを提供して手数料など稼いでいくつもりかもしれない。ただ、足元貸し出しを通じて顧客と獲得するためには金利ダンピングせざるを得ず、それだけ資金需要が弱いことを示唆していると受け止められる。

 金融政策は中央銀行の想定するバーチャルな経済観で運営されるのに対し、民間銀行はリアルビジネスとして金利を設定している。貸し出しは下げ止まったが、明確にプラスに転じるほどの勢いはなく、新規約定平均金利の動向を見るに、金利を下げてかろうじて貸し出しがプラスになっているように思われる。貸し出しを増やそうとするとスプレッドが縮小する現実に対し、日銀の利上げは正しいのだろうか。日銀のバーチャルな判断が正しくて、利上げに見合うほどの資金需要がこれから発生するのかもしれないが、個人的には信託の利下げがしっくりくる。

追記 信託の利下げが正しい場合、日銀の利上げは何なのか。日銀の、日銀による、日銀のための利上げにならないことを祈りたい。 
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by bank.of.japan | 2006-02-14 21:58 | 日銀 | Comments(8)
Commented by オレンジ at 2006-02-15 09:48 x
先行指標といわれる水野審議委員がバブル懸念を強めていますが、信託銀行の利下げのような動き加速して、貸出基準が緩むことを牽制するための利上げという考え方もありそうです。資金需要がないので連続利上げは難しそうですが、市場の健全さを維持するために実質金利をマイナスにしないための単発的な利上げ(=金利水準の調整)を狙っているような気がします。
Commented by レレレのレー at 2006-02-15 10:57 x
この場合の実質金利って、「名目金利-消費者物価指数コア(前年比)」なのでしょうか? しかし、あくまで主観的判断ですが、期待インフレ率は恐らくそれ以前からプラスになっていると思われますので、今さら「実質金利をマイナスにしない」云々という議論は、どうもしっくりしないです。
それから、水野さんはバブルの芽を摘みたがっているようですが、ホリエモン・ショックでマザーズやヘラクレスではミニバブルが既に崩壊してます。一方、日経225はしっかりしてるので、これってすごく健全な市場に見えるんですけど。。。
Commented by bank.of.japan at 2006-02-15 13:38 x
オレンジさん、どうもです。資金需要が相対的に乏しいときの利上げは、銀行収益の圧迫要因にもなりかねないです。なお、実質金利論については、レレレのレーさんのご指摘に私は近いです。局地的なバブルの芽を摘むことを狙った金融引締めは、マクロ的にはオーバーキルをもたらしそうな不安があります。
Commented by 30兆円 at 2006-02-16 00:50 x
短期金利の「試し借り(日経ではこの表現)」が某メガバンク以降続いていますが、本当に困ったときに出してがいるのかどうかが、97年、98年の教訓ですよね。地銀さんのテストも始まったようですが、テストはあくまでテストでしかないと個人的には思っています。アイドリングは必要ですけどね。
Commented by bank.of.japan at 2006-02-16 12:05 x
30兆円さん、どうもです。メガの試し借りは聞きました。私はむしろ出し手としてどう対処するかがテーマではないかと思っており、日銀もそれを期待しています。試し出しのテストも必要ではないかと。あっ、それだと短期マーケットのボラが下がり、30兆円さんの立場では収益チャンスがないですかね(笑)。
Commented by システム5.1 at 2006-02-16 14:11 x
前回のゼロ金利政策以前は都銀がマネー・ポジションでした。それがいまや大幅なローン・ポジション。量的緩和解除後、確かに、一部の外資系や証券会社などミクロ的には調達に窮するところもあると思いますが、全体への影響は軽微ではないでしょうか。ロンバードはあるし、レポ市場が拡充、有担保で取れば良いし...。コール市場は、大枠では、取り手の存在しないマーケットに変化をしているのですから、というのはあまりに乱暴な結論ですかねえ。
Commented by bank.of.japan at 2006-02-16 15:24 x
システム5.1さんの見立てに賛同します。
Commented by システム5.1 at 2006-02-16 16:12 x
ご賛同ありがとうございます。
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