年末年始に銀行不動産融資と日銀の動きを伝える報道があったので、これを機会にバブルと金融政策の関係について思うことを記してみたい。その前にまず日銀の対応で押さえておくべき項目を以下に列挙してみたい。
①私が知る限り、日銀は最近の地価動向をバブルとは見ていない(そもそもバブルかどうかの判断が難しい) ②考査で重視するのは銀行経営の健全性であり、地価動向ではない ③考査運営方針を年度途中で変えることはない ④ノンリコースローンには注目しているが、これは既に今年度考査方針に盛り込まれている ⑤考査は銀行との契約あり、行政上の権限はない そのうえで、仮に地価動向が誰が見てもバブルだとした場合、金融政策としてどのように対応すべきなのだろうか。1980年代後半に発生したバブルの崩壊によって長期不況に陥った日本を、諸外国が反面教師にしたのはよく知られている事実だ。教訓は、バブルは強引につぶすべきものではなく、崩壊したときの手当てを厚くする、ということであろう。従って、金融政策としては発生が認められるバブルに対しては、強引な引き締めを取ることは難しく、恐らくは崩壊したときに備えて極めて慎重に(緩和余地としての)のりしろを作るのが現実的ではないかと思われる。 そもそもバブルに対してどのような金融政策運営が適切なのかの解答はまだ得られていない。資産価格を金融政策の直接的なターゲットにするのはできない、というのが日銀の考え。ロジックとしては、資産価格の高騰がいずれ一般物価に波及することを念頭に金融政策の舵を取ることになるが、それを実践しているイングランド銀行、それに近いと思われる米FRBがうまく舵を取れるかはまだ分からない。 資産価格も含めてインフレを未然に防ぐ金融政策というものも考えられなくもないが、バブルの芽も摘み取るような金融政策は恐らく恒常的にかなりの引き締め状態であり、中央銀行の心理状態としては「バブルになるぐらいなら不況の方がましだ」というオーバーキル嗜好ではないかと思われる。私は日銀がそういうサディスティックな嗜好を持っているのは思わない。それっぽい感じのメッセージが出たとしても、それは解除を正当化したいがための勇み足であり、本気ではないはず。もっとも、それ自体は対話が下手ということでもあるが…。
by bank.of.japan
| 2006-01-05 01:37
| 日銀
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Comments(6)
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walrus
at 2006-01-05 18:23
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本年もよろしくお願いいたします。
①極めて潤沢な企業部門キャッシュフロー(ボリューム面)、②世界的な長期金利の謎(金利面)、③財政発散(政治面)、という構図は、金融引締め効果が構造的に実体経済に及びにくくなっている可能性を示唆していると思います。解除後のmeasured pace利上げも所詮糊代確保(金融政策正常化)が目的とすれば、その引締め効果は極めて限定的でしょう。将来的にミニバブルがミドルバブル程度に膨張する余地が構造的に生じてきているのかも知れません。
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bank.of.japan
at 2006-01-05 20:39
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walrusさん、今年もよろしくお願いします。最近、糊しろ作りのペースがかなりスロー化するような印象も受けております。ある意味で、「極めて低い金利」の滞留期間における新たな時間軸効果が生まれるのでしょうかね。
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jonen
at 2006-01-06 08:14
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不動産融資の監視強化の報道、その方針打ち出していない=日銀
[東京 5日 ロイター] 日銀は不動産向け融資の監視を強化するとの報道に対し、そのような方針を特に打ち出した事実はなく、現在の不動産融資の状況が金融システムにとって大きなリスクとはなっていないとコメントした。 以下ソース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060105-00000816-reu-bus_all これも対話の一種なのでしょうか? すごい高等戦術ですね。いまひとつよくわかりませんが。
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bank.of.japan
at 2006-01-06 10:51
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jonenさん、ポイントを突きましたね。これが戦術だとすると、日銀という組織は狂っていることになります。もちろん日銀は狂っているわけではないので、何が原因でこうなったのか、が私としては興味深いわけです。勘違いと妄想と無知と…。ちなみにロイター報道は、日銀の正式コメントです。
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jonen
at 2006-01-07 13:47
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いったいどっちが本物の日銀なのでしょうか?
狂っている?離人症?多重人格? 二転、三転とはお見事です。 <日銀>不動産融資の監視強化 「ミニバブル」を懸念 日銀は6日、大手銀行や地銀が行っている不動産向け投融資について、リスク管理体制の監視を強化する方針を明らかにした。東京や大阪などの都心部を中心に不動産価格が上昇し「ミニバブル」の懸念が強まっているためで、融資先の不動産会社などの収益見通しが甘すぎないか、などを重点的に点検。問題がある場合は、銀行に報告を求め、融資金利をリスクに見合った適正水準に引き上げることや投融資残高を減らすように要請することも検討する。(以下略) 【竹川正記】(毎日新聞) - 1月7日3時5分更新 ソース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060107-00000009-mai-bus_all
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bank.of.japan
at 2006-01-07 22:02
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jonenさん、どうもです。ちなみに正式コメントは政策広報課から出されています。仮に二転三転する要因が日銀側にあったとした場合、①政策広報課が担当部局に騙されている②政策広報課も担当部局も知らないところで誰かが吼えている③この誰かは偉い人なので現場からの口封じが難しい-といったことが考えられます。関連の続報があるのかちょっと楽しみですね。何か起きているのか、起きていないのか、これはかなりの見物だと思います。
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