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入力ミスの儲けを返却!?=敵失の馬鹿勝ちがNOなら…(追記あり)(さらに追記あり)
 みずほ証券の入力ミスで利益を得た金融機関はそれを返却しそうな方向だ。大手業者同士がそれぞれ納得して、「武士の情」をかけたように見えるが、どうも釈然としない。道義性はともかく、金融機関が正当に得た利益を返却すると、株主から文句が出そうな気もする。大丈夫なんだろうか。それに目立たない形で儲かった業者がいた場合、公平性に欠ける面もある。
 さらに気になるのは、モラルハザードの懸念だ。今回のミスはオペレーショナルリスクが極大に顕現化した典型例と受け止められ、多くの金融機関が教訓にすべき事例。ところが、相当額が救済されるなら、リスク管理を真剣にやるインセンティブは薄れる。金融庁・日銀はそれでもきちっとやれと言うのだろうが、少なくともマーケット取引に関しては大失敗ほど救済される悪しき事例が残る。取引ミスは日常茶飯事であろう。個人が取引ミスで破たんした場合、普通は誰も救わない。銀行が困るぐらい金を借りた企業が救済(債権放棄)され、小額借りた零細・個人が追い込まれた不良債権処理と同じ構図が透ける。
 一般的に自由経済においては、熾烈な生存競争が繰り広げられる。原因は何であれミスを犯した企業の損失は、ライバル企業の利益となる。日本の自動車メーカーが、例えば米メーカーのミスで大勝した場合、得た利益をその企業に返却するのだろうか。市場取引は例外である、という理屈はどうも通りにくいように思う。割安・割高を自動裁定していくマーケットにおいて、ミスであれ何であれ裁定チャンスが生じれば、あっという間に裁定されていくもので、そこには美学も何もなく、機械的な力が働くだけであろう。与謝野大臣は「美しくない」と言ったが、場を開く東証の対応が醜悪であった以上、出来上がった取引の美を問うのは不毛であろう。
 知り合いの日銀関係者に聞いた。「解除に失敗したら、政策委の過半数の委員に『投票ミスだった。解除に反対だったのに間違えて賛成しちゃった。錯誤である』と言わせたら」と。アホか、というような感想だった。さすがに与謝野大臣も「(日銀の判断ミスに付け込むのは)美しくない」と政府・与党の方々には言えないだろうなあ。

追記 そういえば短観でしたね。DIはちょっと弱いけど、ほぼ予想通り。強気派には強気に取れ、弱気派には弱気に解釈できる内容でしょうか。日銀はもちろん前者。ただ、解除前傾姿勢を一段と強めるほどのものではないと思われ。簡単ながら以上。

もう一つ追記 このエントリーを書いた時点(14日夜)では、売却益の返還先が不明で、みずほ証券を前提としました。ご存知のように、報道ではそれはないようなので、モラルハザードの懸念の部分は割愛してご理解いただければと思います。
by bank.of.japan | 2005-12-14 20:30 | マーケット | Trackback(9) | Comments(9)
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Commented by von_yosukeyan at 2005-12-15 05:51 x
はじめまして。1年も昔に私の駄文置き場というか書き殴りを御紹介いただいたようで、失礼ながら今ごろ気づいた次第で、恥ずかしさに身が細る思いです

ところで、みずほ証券のフェイル差益返還の件ですが、報道では利益返還を行う当事者の中に、UBSグループが混じっていたのが非常に興味深いと感じました。周知のとおり、UBS証券は過去に電通上場の際に似たようなオペレーション問題で多額の損失を負いましたが、今回は立場が逆転してUBSグループ(UBS証券東京支店及びUBS AG東京支店)全体で、ジェイコム株3万8198株(保有比率263.48%)を取得していたようです。EDINETに掲載されている大量保有報告書に従うならば、UBSグループは取得金額195億5424万7000円と現金強制決済額(1株辺り91万2000円、単純計算で348億3657万6000円)との差額152億8232万9000円を返還することになるわけで、UBSグループ全体の2005年Q3決算における純利益の約10%に相当する額を返還するというのは、事実とすれば株主の理解が得られないような気がします
Commented by von_yosukeyan at 2005-12-15 05:52 x
(途中で切れたので)

UBS証券(当時は現社名ではなかったと思いますが)のオペ問題のときには、利益を得た金融機関が利益返還を行ったかどうかは定かではないですが(聞いたところによるとUBSは返還を求めたが拒否されたと聞きました)、今回の利益返還の報道はFSAによるブラックバックワークでもあったのではないかと勘ぐってしまうような釈然としない思いがあります。みずほ証券にしても、同じビルの中にあるUBS証券/UBS AGだけでなく、利益返還に応じた他の投資銀行に大きな借りを作ってしまうことになるわけで、禍根を残すような解決になってしまうような気がしてなりません
Commented by pom at 2005-12-15 08:03 x
利益返上は、不明瞭な圧力があったとしか思えませんね。

儲けた証券会社だって、相応のリスクをとった結果得た利益なのに、これを返上させられたのではたまらないですね。証券会社に利益を返上させるなら、個人投資家にも利益を返上させるべきだということになると思います。誤発注だと知って買ったのは、個人投資家だって変わらないですから。

こんな解決をするぐらいなら、取引を全部無効にするほうがよかったのではないでしょうか。全部無効にして、手数料だけ、東証とみずほ証券に負担させる。またはちょっと譲って、取得者1人につき取得した株式のうち発行済み株式数の100%を越える部分のみ、取引を無効にするか利益を返還させる。その趣旨は、信用取引が始まっていない以上100%を超える取得は実際上不可能だったはずだから、ということです。公開された大量報告ベースでは、UBSの儲けの一部分だけ「返上」の対象になる、ということです。ちょっと無理がある案ですが、証券会社にだけ利益返上させるよりは、市場の規範に沿った解決法ではないかと思うのですが。
Commented by 馬車馬 at 2005-12-15 08:28 x
返上するもしないも彼らの判断ではありますが(もちろん、「不明瞭な圧力」の結果であるなら望ましくありませんが・・・)、こういう「広義の裁定行動」はなんら非難されるべきものではなく、むしろ健全な市場機能の発露ですらあるという原則論は確認されてしかるべきではないかと思います。少なくとも、大臣のレベルでは。与謝野大臣のコメントを見たときは「金融庁御進講が足りないよ」、と思ったのですが、von_yosukeyanさん(いつも楽しみに拝見させていただいてます)のコメントを読むと、もっと根深い話なのかもしれませんね・・・。

まさか「明らかなミスプライスは黙って見過ごすべき」とか、そういうこと言い出さないだろうなぁ。そんなの日常茶飯事ですし(特にOTCマーケットでは。オプションの計算間違いとか、結構ありますよね)、そこでお馬鹿さんを叩くから市場価格が安定するわけで。
Commented by bank.of.japan at 2005-12-15 12:10 x
von_yosukeyanさん、いらっしゃいませ。一方的な紹介でしたので、お気になさらず。いつも拝見させてもらってます。これを機にいろいろやりとりして頂ければ有難いです。共通の話題多そうですので、よろしくお願いします。報道では、さすがにみずほ証券に利益が還元されることにはならないようですね。そちらでお書きになっているエントリーの趣旨に賛同いたします。今後ともよろしくお願いします。
Commented by bank.of.japan at 2005-12-15 13:35 x
pomさん、どうもです。東証がきちんと誤注文を取り消せていればここまで事態は広がらなかったわけで、システム不具合があっても何かやりようがあったのではないかと思う次第です。取引の無効化は一案ですが、訴訟が多発して現実には難しいかもしれませんね。今後ともよろしくお願いします。
Commented by bank.of.japan at 2005-12-15 13:46 x
馬車馬さん、どうもです。大手同士の自発的な相互理解によるものなら、それもありかなと私も思います。ご指摘のように、マーケットはどこでも(原因はともかく)ミスプライスはありがちで、それをも裁定するのがマーケットですから、後段でご指摘されていることに私も同意します。
Commented by von_yosukeyan at 2005-12-16 04:22 x
今回の問題で私は、来年予定されている東証システムの処理能力増強が、先の取引停止トラブルと今回の件を合わせてスケジュールが遅れるのではないかと危惧しています。東証は国内の証券取引が集中する主要市場ですが、札証や福証などとシステムを共有している上に、マザーズ(新興市場)や先物・オプションのシステムも同じ基盤を利用しているので、証券取引が単一システムに依存しすぎてはいないかという漠然とした不安もあります。システムを単にミラーリングするだけでは、バグや設計時の仕様上の問題は解決できませんし(実際に日銀や銀行、証券、決済機関、郵貯、生損保を含めて災害時のバックアップセンターは東西に存在します)、かといって大証に東証と同じくらいの処理能力を持たせて有事にバックアップさせるというのは費用的に無理もありそうです
Commented by bank.of.japan at 2005-12-16 12:04 x
von_yosukeyanさん、どうもです。そちらのサイトにお書きになったご意見、私も以前銀行のシステム関係の取材をしたおりに疑問に思ったことと同じでした。経営とシステムの距離感は、アウトソーシングの場合は(当面の)効率化に資するものですが、経営の機動性を高めるときには足枷になりかねないですね。そちらにも改めてコメントする予定です。
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