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経済財政諮問会議のバブル論議=預金金利“フラストレーション”説?
 微妙にずれた議論、的外れな議論は基本的には無視した方がいいが、わが国最高レベルの会議でそういった議論が交わされたとあっては簡単には無視できない。週末なんだけれも、ちょっと書いてみようかと思った次第だ。具体的には、第28回経済財政諮問会議(12月6日開催)での、バブルと預金金利をめぐる議論である。詳しくは議事要旨を見て頂くとして、簡単にまとめると以下の通りだ。

小泉議長 「バブルはそんな危惧すべき過熱状況か」
奥田議員 「デイトレーダーが増え、女性が多い。損した話もある。心の問題を忘れ、カネ、カネになっているのではないか」
牛尾議員 「メディアにも問題ある。資産バブルが起こり始めているのではないかという事実を理性を持って警告すべき」
本間議員 「安いモノが入ったり、IT技術によるコスト安で物価が上昇しない一方、金余り・低金利の中、預金以外のところに金が流れる動機が相当に強い。資産インフレと実物デフレの両立をどうバランスとるかだ」
福井議員 「株を持っている人は配当を受け取るが、預金金利は従来のままで、こうした人たち(株を持たない預金者?)のフラストレーションを生む可能性がある。このため、外貨資産も含めて一挙にややリスクのある資産に向かっている。こうした状況は、預金金利のゼロ金利が続いていることが原因で、ある段階では必ず限界が来るので、ある段階以降は多少は預金金利収入を通じて所得に還元される形にした方が消費が増えて健全な景気回復につながる。ただし、そのタイミングがいつかは非常に慎重に判断しないといけない」

奥田議員の問う道徳心、牛尾議員の言うメディアの煽りなどは説明の延長で出たものだとして、この会議はわが国最高レベルの経済運営のあり方を議論する場なので、例えば本間議員の言うように経済は「資産インフレと実物デフレのバランスをとる」局面に本当にきているのか、また日本銀行という金融面に精通したプロ集団の長である福井総裁の指摘する預金者行動が本当なのか、さらには預金金利ルートで消費活性化を図るのが経済合理性があるのかどうかが問われよう。

まず株価はバブルなのか。私には分からない。個人的には、景気先行きに強気ではないので、上げ足が速いとは思う。もっとも、私がどう思おうが、バブルならば弾けてみてそれは分かるだろうし、(仮にバブルが事前に分かったとして)それを予防するのは難しい。中央銀行の立場では、①資産インフレが起きているのかどうか②そうだとした場合、(80年代後半と同様に)タイムラグをもって一般物価に波及するのか-の判断が問われよう。この点、福井総裁の説明はちょっと分からない。ゼロに近い預金金利にフラストレーションを起こした人がなぜ株を素通りにして外貨資産に向かうのか、また外貨は株よりもリスキーなのか、預金金利収入を通じた所得増強→消費活性化というルートに着目して利上げするのが正しいのか。バブルを議論しているのであれば、土地も含めた動きが一般物価に波及するものどうかを議論し、そのうえで金融政策上の対応を述べるのが正攻法であろう。

一連の議論を通じて実は小泉議長の発言が最も自然だと思った。バブルを危惧する発言は、もとを正せば奥田氏がバブルを警告する報道を目にしたため。途中、首相はこう言っている。「8000円を切ったときはまだまだ下がると言われた。経済が少しよくなるとまだまだ上がると言うわけか」。文字だけでニュアンスの判断は難しいが、下がれば騒ぎ、上がっても騒ぐという騒々しさにやや呆れているという感じではなかろうか。また、預金者行動について「日本人の心配性の一つで(この部分の意味はつかみにくい)、貯蓄から投資へという動きを進めていたのではないか。そういう方向なのではないか」。これって至極まっとうな感想ではないか。回りの議員がやたら騒ぎ、トンチンカンであるように見えてしまう。

追記 ゼロ金利へのフラストレーションから預金からリスク資産にマネーがシフトしているなら、それって日銀が量的緩和導入時に期待していたポートフォリオリバランス効果が発揮されている、ということではないのか。
下に替え歌をアップしてありますので、お楽しみください。
by bank.of.japan | 2005-12-12 00:04 | 経済 | Comments(6)
Commented by gogogogo5555 at 2005-12-12 10:34 x
最近の議論からすると、やはりQEの解除はやりそうですね。しかし利上げはなくかつ単独でもはなく、解除と同時に次のフレームワークとしてのある種のインフレターゲットを採用するのはと思いますが、いかがでしょうか?
Commented by 滑稽本 at 2005-12-12 13:03 x
バブルがはじけても国ははじけないが、金利が上がったら国が弾ける気がするのですが…(汗
株の上げ足は確かに早いですが、225でも20,000円程度まではチャート上の目処も無いですし、走ったとしても不自然では無いですよね。

長期金利は既に上がってますが、日本の今の財政事情を見ると株価よりも金利の低さの方が不自然だと思います
Commented by gogogogo5555 at 2005-12-12 13:19 x
滑稽本 さん、「長期金利は既に上がってる」とはどう意味でしょうか?
Commented by bank.of.japan at 2005-12-12 14:40
gogogogo5555さん、どうもです。解除と同時のインフレターゲットは、日銀自身がまだ否定的ですので、個人的にはないかなあ、と思っております。滑稽本さん、初めまして。金利が上がるのが財政への不信感であればヤバイです。ただ、株高で長期金利はボトムからは上がってきましたが、なお相対的には低いレベルで、需給上崩れそうな感じはないです。株と金利のどちらが正しいのか。これは難しいですが、私は金利の世界が長いので、株高に持続性があるのか不安です(間違っているかもしれませんが…)。今後ともよろしくお願いします。
Commented by yh at 2005-12-12 18:07 x
来年度もゼロ金利政策が続くと、実質金利がマイナスになるようですが、景気に与える影響はそんなに大きなものなのでしょうか?企業への影響はまだしも、家計に与える影響がよく判りません。
Commented by bank.of.japan at 2005-12-12 21:07
yhさん、どうもです。実質金利がマイナスになると景気過熱ないしは資産バブルを招くリスクがある、との声を聞かないでもないですし、だから日銀は実質金利をマイナスにしないように利上げする、という理屈もあります。ただ、よく言われる実質金利はCPI-名目金利という単純なものです。私は専門家ではないのでうまく答えられませんが、実質金利は測り方によって異なる(GDPデフレーターだと大幅なプラス、期待インフレ率がプラスになるならマイナスが大きくなる)ので、実質金利の議論は実は正確には捉えにくい、というのが実情ではないでしょうか。単純な実質金利で議論する向きが増えると、それを材料に資産価格の上昇は持続する可能性はあるかもしれません。
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