財務省が国庫金の効率的な管理策を発表。具体的には、普通交付税の交付日や個人向け国債の発行日をずらし、財政資金の余剰と不足を同じ日にし、資金需給の振れをならすようにした。金融政策との兼ね合いでは日銀の量的緩和が多少楽になる面はあるが、もともと滅茶苦茶大きい財政要因の振れをならすのは短期金融市場にとってかねてからの課題で、資金の流れを穏やかにする“整地作業”として玄人受けする措置。今ごろやっと着手したのか、と言いたい気持ちもあるが、これは歓迎できる。
経済活動に伴う資金の流れは最終的にインタバンクに集約される。そこでの資金需給は「財政等要因」と「銀行券要因」によって振れる。問題は、この振れ方が半端ではないこと。各国それぞれ制度要因や銀行券嗜好によって差があり、ここでは詳細な説明は省くが、とにかく特に財政資金の振れは多分世界最大級。数兆円の余剰、数兆円の不足が発生するのは、他国から見ると、海抜ゼロメートルを中立として、余剰・不足を高度・深度で表すと、資金需給にエベレストとマリアナ海溝があるようなイメージであろう。 従って、日銀の金融調節は、山を削り、海溝を埋める技術に尽きるわけで、海外中銀のオペ部隊はある種の伝統芸能として見ているようだ(驚嘆しているのか、呆れているのかは知らない)。量的緩和(33兆円)は、海溝を埋めた上に何十兆円も積ませる技術であり、これは何と言うかマジックのようなものに見えるかもしれない。 日銀の調節技術によって資金需給がならされてきたことは、それ自体はインタバンクの中で完結する事柄であり、世間的にはどうでもいい話であろう。財政資金の受け・払いがばらばらなために発達した超高度な調節技術。受け・払いの調整が進み、財政資金の振れが穏やかになれば失われる技術だが、逆説的には国庫金管理の不備を埋めるために仕方なく発達した特殊技術という側面もある。普及性のある技術なら惜しまれるが、非常に狭い世界における、ある制度の非効率を補完する技術を誇ってもちょっと哀しいものがあるので、国庫金の効率管理がさらに進むことを期待したい。
by bank.of.japan
| 2005-08-26 18:52
| 日銀
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Comments(9)
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gogogogo5555
at 2005-08-29 09:01
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おはようございます、いつも様々な話題を有り難うございます。ところでふと思ったのですが、30兆円超の当座預金残高が6兆円まで減額されることになれば、誰がTBやFBといった巨額の国の調達を担うのでしょうか?以前おっしゃられたように量的金融緩和の解除だけで短期市場はかなり混乱することになると思われます。
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bank.of.japan
at 2005-08-29 11:32
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TB・FBの保有主体にさほど変化はなく、解除を織り込む価格調整が行われるだけだと思います。価格調整が激しいかどうかは、解除時の経済情勢および解除のやり方次第でしょうか。
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gogogogo5555
at 2005-08-29 12:41
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当座残高維持のため、日銀が最大の買い手ではなのでしょうか?それに金利上昇過程で金融機関が短期資産を買い続けるとは思えませんが。これは素人的発想でしょうか?
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bank.of.japan
at 2005-08-29 14:47
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gogogogo5555さん、どうもです。ご質問の趣旨がやや分かりかねるところがあるのですが、日銀が当座預金を減額する場合は、その分資金供給オペ(短国買い現先や買いきり等)が減るので、最大の買い手にはなりにくいと思います。また、金融機関が短期資産を買い続けるかどうかは、経済全体の資金需要との兼ね合いが大きな要因で、現状(企業・家計が余剰、公的が不足)に大きな変化がなければ、(解除に伴う)金利上昇(調整)過程では買いにくいですが、調整が終息すれば短国を買い続ける(もちろん、解除前と同じ価格ではなくなっている)ことになると考えられます。
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gogogogo5555
at 2005-08-29 15:13
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わかりにくくて申し訳ございません。私の言いたかったのは、解除によって日銀という最大の買い手を市場は失う中で、政府の調達額はほぼ不変なわけで、誰がその穴を埋めるのかというものです。そうでなくても混乱して買い手が引きがちな状況です。銀行も同額を買い続けるかもしれませんが、金利上昇に一旦めどがつくめで、現状の何倍もの購入は非現実的です。おっしゃるように時間がたてば、状況が改善するというのは理解できますが、市場は連続的です。混乱の最中であって、定期的に発行されるがTB・FBを誰かが買わないことには市場は成立しません。もし買い手が無いとなれば、更なるパニックへとつながると考えるのですが、この辺りを日銀は、解除の過程で考えないのでしょうか?
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bank.of.japan
at 2005-08-29 17:30
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ご趣旨分かりました。政府調達の穴は基本的には埋まると思います。「TBの価格がいくら下がっても誰も買わない=穴があく」なら、それは政府が信用を失った状態(いわゆる財政破たん)で、そうなるのはちょっと考えにくいです。むしろ、いずれ価格は調整されるはずで、もしパニックが起きて、市場の調整機能が働かない(市場の失敗が起きる)ようになり、それが経済に悪影響をもたらす恐れがあるときは、日銀は介入すると思います(ターム物のシグナルオペなど)。それと資金需給の面ですが、日銀がTBの買い手と言っても、もとは銀行が買ったものを担保として取っている、または買い切っており、それと見合いで銀行には金がいっている(当座預金になっている)面もあり、日銀が買わないか分がそのまま政府調達の穴があく、ということにはならないと思います。
公式発表である「国庫金の効率的な管理について」
http://www.mof.go.jp/jouhou/sonota/kokko/kk170826.htm を読んでも、新聞を読んでも、この発表の意味が分からなかったのですが、本石町日記さんの解説でその意味がよく分かりました。 ありがとうございます。
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at 2005-08-30 13:07
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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bank.of.japan at 2005-08-30 13:28
匿名希望さん、ありがとうございます。
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