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郵貯から流出した資金がタンス預金になれば国債は暴落するか
 一時的にその可能性はあるが、結果的には日銀が国債を買う、ことになる。郵貯から預金が流失してタンス預金化すると国債が暴落する、と言われることがある。払い戻す現金をねん出するため、郵貯が国債を売るからだが、売られた国債の買い手がまったくいなくなるわけではない。タンス預金、すなわち現金化されるわけだが、そうなると日銀の負債側で銀行券が増える。日銀は資産側で銀行券増加に見合って保有国債を増やすことになる。例えば、郵貯から10兆円が引き出されてすべて現金化されると、日銀負債側の銀行券が10兆円増加。その分、日銀は国債を買い増してバランスシートをマッチングさせるわけだ。
 これを短期オペでつなぐ場合にはどうなるのか。郵貯が市場で売却した国債は、民間金融機関などの手にわたる。このときの資金の流れは、郵貯が10兆円プラス(これは払い戻しに使われる)、民間が10兆円不足となるが、民間は10兆円の国債を余分に持っているため、これを短期オペに突っ込むことで不足分の手当て可能となる。ただ、短期オペのロールオーバーは経済行為として国債を買いきるのと同義であり、調節上の負担を考えると、成長通貨(銀行券)見合いで、買いきりを増やした方が簡単だ。
 郵貯改革は国債管理政策との関係で語られることが多く、郵貯からの資金流出は国債暴落を招くと懸念されやすい。ただ、資金循環上においては、資金過不足の均衡点が次の均衡点に移行するだけの話で、移行中に国債市場が不安定化しやすいことが暴落懸念を呼ぶわけだ。仮に郵政公社なり、民営化された郵貯なりが預け入れ金を引き下げる場合、国債市場の不安定化を避けたいなら、日銀がかつて郵貯の大量満期に対応して実行した資金繰り支援策のようなスキームを用意すればいいのではないかと考えられる。
 もっとも、以上のシナリオが成立するにはホームバイアスの強さが変わらないのが前提。郵貯から流出した資金がそっくり国外に向かうと、国債安定化上はちょっとまずいことになってしまう。
by bank.of.japan | 2005-08-23 20:41 | 日銀 | Comments(5)
Commented at 2005-08-23 22:50 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ぐっちー at 2005-08-24 11:15 x
たまたま私もその事を今日書いたのですが、そのとおりでしょうね。ただ、そのタイムラグ(日銀購入までの)暴落があるという主張もあるので、そんなーこたーないよ、と書きました。国債の価格維持政策と郵政民営化をごっちゃにする議論が多く辟易しています。元来別なものですよね。日本国債が民営化した郵貯が買えないような代物ではそれこそ問題な訳で(笑) たんす預金ではなくドル預金にするくらいのダイナミズムが日本人にも欲しいと思うんですが、どうでしょう?
また伺いますね!
Commented by bank.of.japan at 2005-08-24 13:52 x
ぐっちーさん、どうもです。郵政改革の反対論にありがちな国債暴落説に違和感がありましたので、ちょっと書いてみました。ドル預金ですかあ。静かに増えるならいいですが、これだけ政府債務がでかいと、大量の外貨流出は風船が破裂するような怖さがあります(笑)。
Commented by yh at 2005-08-24 18:03 x
「グロソブ」に代表されるような海外の高金利債券に投資する投信の残高が増えているところをみると、日本人の投資行動も変わってきたのでしょうか。
Commented by bank.of.japan at 2005-08-25 00:40
yhさん、その兆候がないとは言えないですね。仮にホームバイアスが弱まるなら、それまでに財政再建の筋道が明確化することを願います。でなければ、仕事どころではないかも。
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