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漠然と語られる量的緩和の解除を定義してみる=超簡単解除方法
 世の中、郵政民営化を争点とした総選挙の行方が話題となっている。これについてはいくつか取り上げたいことがあるのだが、頭がまだ休暇モードから十分に切り替わっていないので、温存しておいたネタを一つ。それは「量的緩和の解除」についてだ。「解除」という言葉はよく聞かれるが、具体的にどいういうアクションが「解除」なのかは意見が分かれるところだろう。当座預金残高目標の引き下げか、それとも金利政策に戻ることなのか。日銀の予想が当たれば年末から年明けにかけて物価はプラスに転換する見通しで、それ以前に短観などが改善していれば政策委員会での解除論は具体化するはずなので、今のうちから「解除」を論点整理してみたい。
 まず「解除」の定義である。日銀の政策ロジックに基づくと、「量的金融指標をターゲットとする金融政策をやめる(量的緩和の枠組みをやめる)」ことだ。これはイコール「金利ターゲットの金融政策に復する」ことになる。従って当座預金残高目標を引き下げるのは「解除」ではなく、金利ターゲットに戻るための解除作業の一つであると位置付けられる。「解除」はまた、消費者物価に金融政策を連動させるコミットメントもなくなる。
 以上のように「解除」を定義すると、ポイントになるのは①解除プロセスの期間(金利政策に戻るまでの時間)②金利ターゲットの水準③金利ターゲットに戻った場合の調整体系-などだ。 これらを政府・与党や市場への配慮を省いた日銀企画の純粋発想に基づいて考えてみると、①短期間(せいぜい次回決定会合までの1カ月)②プラス金利③公定歩合引き上げ(ターゲット金利プラス50bp)&国債買い切りオペの激減(月額4千億円へ)となる。すわなち、解除を機械的に捉えると、無担保コール翌日物を短期間にプラスに誘導」、「公定歩合を大幅に引き上げ」、じ「国債買い切りオペを月8千億円削減」となる。これを『解除の三点セット』と命名したい。
 もとより、この三点セットを一挙にやると、かなりハードな衝撃を各方面に与えるであろう。現実には、このハードな解除から引き算していけばいいわけだが、ではどこまで引けばいいのか。定義上、金利ターゲットに戻ればいいのだから、それはゼロ金利でも構わない。私は間抜けなことにゼロ金利に戻るにせよ、当座預金残高目標を徐々に引き下げなくてはいけないと思い込んでいたが、「明日からゼロ金利政策である」と宣言すればいいだけだと気が付いた。そして「なお書き」の部分で、「大量に供給した資金は金融市場に配慮しながら徐々に吸収する」と補足すればいいのである。さらに解除をソフトにやるなら、公定歩合引き上げと国債買い切りの減額は見送ることになる。日銀の解除は「ハードな3点セット」と「ソフトなゼロ金利復帰」の間のどこかで着地する、というのが私の現時点での予想だ。政策オプションとしての予想レンジは広い(笑)が、時間はかかっても3点セットを成就しないと日銀としては解除した気分にはならないだろうと思う。
by bank.of.japan | 2005-08-15 21:47 | 日銀 | Comments(12)
Commented by 裏ドラ at 2005-08-15 23:01 x
「ソフトなゼロ金利復帰」の一番ソフトな奴を実行すると、時間軸が外れるだけで、現象面は今と全く同じ状態のままになりますね(笑)。
で、ふと思ったのですが、この場合・・・
時間軸が外れるだけで足元の緩和が続くとなると、イールドカーブにはスティープバイアスが掛かりそうな気がしますし、逆に強力インフレファイター姿勢を見せながらの「ソフトなゼロ金利復帰」だと市場の方が先行きの金融引き締めを先取りする形で中短期金利の上昇をやらかして、「市場追認」みたいな金融引き締めになってしまいそうな気がします。
直感的に思った事なんでトンチンカンかもしれませんが。
Commented by bank.of.japan at 2005-08-16 00:31 x
時間軸が外れるだけのゼロ金利復帰の場合、高水準の当座預金を維持するための長めのオペが不要となり、ターム物金利を押さえつける力がなくなることになります。結果、いずれにせよスティープ化しやすいと思われますね。
Commented by システム5.1 at 2005-08-16 08:01 x
長国買い入れ減額ですが、月4,000億円に戻すには、別のルールの変更が必要です。「かつて、長国買い入れは成長通貨の安定的供給が本来の目的であり、日銀は保有国債が償還を迎えると乗換えをしていた。そのため、長国買い入れは事実上、半永久的な資金供給となり、成長通貨の安定的供給と整合的であった。しかし量的緩和の拡大と共に長国買い入れはオペレーション手段の色彩が濃くなった。日銀は買い入れを増額する一方、保有国債増に歯止めをかける措置も取った。それは、償還の来る国債を基本的に1度だけ1年の短期国債に乗換え、その短国は現金で償還を受けるという措置だ。これに従えば、当面、保有国債は増加し続けるが、やがて買い入れ額を増加しない限り、増加に歯止めがかかる。実際、最近は保有増のペースが鈍っている(ただ、これにはオペの技術的問題からより残存の短い銘柄が落札されるケースが多く、それによって足元の償還が増えていることも影響している)。月4,000億円だった買い入れペースを同1.2兆円まで増加させたことを強調し過ぎると、それはミス・リーディングになる。」ということなのです。
Commented by システム5.1 at 2005-08-16 08:01 x
(続く)従って、月4,000億円にするには、また半永久的に乗り換えないと。もっとも、短期金利が十分に上がり、タンス預金が放出され、日銀券ルールに抵触する時は長国買い入れの減額が必要になります。
Commented by gogogogo5555 at 2005-08-16 09:16 x
QE+ZIRPという金融政策の効能はデフレ終焉で急激に増すことになる。すなわち実質金利の議論です。CPIがニュートラルまたはプラス化してからが、この金融政策の本領であるはず。資金需要の低下が止まったような現状で、景気指標や株価がボトムアウトしたからといって、急いで金融緩和をやめる理由はないと考えます。銀行貸出が大きく伸びるまでは、急いでZIRPまでやめる理由を見出せません。QEは主に時間軸効果をもたらしましたが、それはFWDカーブ上消えつつあります。ZIRPをいじるのであれば、長期金利とて大幅な上昇は避けられないでしょう。
Commented by システム5.1 at 2005-08-16 09:30 x
そうですね。ZIRPが始まってからの6年半、10年国債利回りは2%以下で推移し続けています。私も以前は、ZRIPの終焉=長期金利急上昇と考えていました。しかし最近少し考え方を変えました。現状の低金利の主因は期待成長率の下方屈折ではないかと。何しろ人口減少の経済になりますから。ZIRPから出ると米国で起こった急速なフラット化が日本でも実現するかもしれません。まあ、仮説に過ぎませんが。
Commented by gogogogo5555 at 2005-08-16 10:01 x
私もかたうてその議論は考えてみました。人口減少は最近やっと話題になっているようですが、それをいうなら労働人口そのもは90年代後半から減少に転じています。それに金利市場が折り込む期待成長率の範囲は精々10年がいいところでしょう。しかし10年後に人口減少が大問題になっているとは思えません。よほどの経済成長を達成し、税収増とならない限り、人口減少と少子高齢化がもたらす問題とは、むしろ国家財政のなのではないでしょうか?また個人的には人口減少→潜在成長率低下の議論にも、今後10年という時間では、賛同できません。
Commented by 労働力人口 at 2005-08-16 10:48 x
gogogogo5555さん、
90年代にピークを迎えたのは生産年齢人口ですね。労働力人口と総人口は近々ピークということになります。供給サイド(制約)のみから考えるとおっしゃる様な理解になります。これもある程度は女性の労働力化等で補えるでしょう。ただ、生産性が基調的に下がっている点は見逃せません。もっとも、私が指摘しているのは需要サイドであります。最後に、賛同をいただこうとは思っておりません(笑)。こういう議論は水掛論になりがちなので。
Commented by bank.of.japan at 2005-08-16 11:18 x
このエントリー、議論が続いていますが、ここで念のために用語解説を。「gogogogo5555」さんのコメントで「QE+ZIRP」との表現がありますが、前者は『量的緩和』、後者は『ゼロ金利政策=zero interest rate policy』との意味。でよろしいでしょうか、gogogogo5555さん。それから「システム5.1」さんの国債買い切りオペに関するコメントについては別途エントリーで取り上げたいと思います。
Commented by gogogogo5555 at 2005-08-17 14:34 x
労働人口さん、一般論に賛同できませんとう意味で申し上げました。今後とも宜しくご指導ください。
Commented by システム5.1 at 2005-08-19 07:53 x
労働力人口さんになってしまいました。すいません。
Commented by Hicksian at 2005-08-23 00:37 x
TB送らせていただきました。一ヶ月ほど前の記事でどうもすいません。
替え歌(以外ももちろんですが)、毎回楽しませていただいております。
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