郵政問題で思うこと=国内資金循環の観点から
 まず郵政問題(この場合は郵貯・簡保の金融事業)をどう考えるか。私はそれほど詳細にフォローしていないので、門外漢的な所見となるのはご容赦願いたいとして。実は、もし可能ならば国営状態のままリストラしていくのがいい、と思っていた。具体的には以下の理由による。
①民営化するにしても、あまりにもバランスシート、組織が巨大過ぎて、採算性の低さから自力で生きていけそうにない
②しかし、民営化された公社は倒産したくないから何でも金融事業をやりたがり、その一方で暗黙の政府保証をあてこむと予想される
③見出しにも入れたが、郵政が民営化されても、国内資金循環の構図、すなわち企業・家計が資金余剰で、政府が資金不足という状況に変化はなく、預金取り扱い金融機関(民営化された郵政含む)は、結局は多かれ少なかれ政府債務(国債や政府保証債、地方債など)を買うしかない
④同様の論点だが、政府に集まった預金を民間部門の投資に回す、というスローガンは理想論としては分かるが、民間部門に資金需要がない以上、空論めいた印象を受ける。民営化された郵政が強引に民間投融資をやろうとすると、民間金融機関との競合が激化し、投融資のダンピング合戦が起きかねない
⑤民間金融がこれからまともに市場原理を追求するなら、採算の取れない預金者は切り捨てるはず(小額預金は手数料徴収)。この結果、市場原理で弾かれ、預金口座を持てなくなった預金者を相手に、極限まで縮小した国営郵貯がサービスを提供すればいいのではないか。
以上の考えを郵政民営化に関わったある人にぶつけてみた。
その人いわく「国営だとリストラできない。だから民営化なんだ」という。
私の考えが、現実問題として空論なら仕方ない。民営化するしかないのだろう。その意味において、私は消極的民営化論者ということになる。しかし、あれだけの図体を受け入れる羽目になるインタバンク、金利市場、金融システムはこれから難儀である。願わくば、法案内容が「民営化」を機にまともになっていくことを期待したい。
このエントリー、書くかどうか迷ったが、資金は余ったところから不足のところに流れるしかない、という国内資金循環の現実を踏まえ、メモランダムとして残すことにした。
[PR]
by bank.of.japan | 2005-08-07 02:08 | 金融システム | Comments(7)
Commented by gogo55 at 2005-08-08 10:37 x
①、③、⑤は非常に同感です。④は現状はそうなっていますが、資金循環にも多少の明かりが見えてきました。特殊要因と都銀を除く銀行貸出にも上昇に転じています。実質的なデフレは終焉していることから、このままCPIの回復が進めば実質金利が十分緩和的(必ずしもマイナスでなくても)に推移することで、資金循環は改善されると考えます。個人のリスク選好も進んでいると考えます。現在はまだそうでなくても、景気が上向いたときにより金融から実経済への資金のパイプをより大きくすることが必要だと考えます。その意味において、民営化は意味があると考えております。
Commented by ・・・みたいな。 at 2005-08-08 12:14 x
「ためにする議論」という言い回しがありますが、郵政民営化は「ためにする民営化」になってしまったように思います。いつしか問題の根本が忘れ去られてしまったからです。その責任は、説明責任を果たさなかった政府側にも、政局にしてしまった反対派にもあるでしょう。
再び国民レベルの議論にならなければ、「郵政解散」にはなっても「郵政選挙」にはなり得ません。一体何のための「民営化」なのか、誰もが考え直すべきかもしれませんね。
Commented by bank.of.japan at 2005-08-08 12:21 x
gogo55さん、どうも。資金需要が発生すれば、景気回復は強力なものになります。現状、貸出は持ち直しの動きに見えますが、貸出金利は低下気味で、まだ安心できないなあ、と思っております。
Commented by bank.of.japan at 2005-08-08 15:03 x
・・・みたいな。さん、どうも。そうですね。「民営化」自体が焦点になり、本質が見えにくい。郵政民営化の目的は行財政改革なのに、いつの間にか、民営化という手段が目的化したような。願わくば、解散総選挙で、与野党通じた再編が行われ、小泉新党下で改革派結集となればいいのですが。
Commented by walrus at 2005-08-08 15:54 x
貸出残下げ止まり下での貸出金利底割れは、絶対的オーバーバンキングの傍証です。今後、更に貸出が伸びていく場合、低潜在成長下で局所的ミニバブルが散発する素地があると考えます。
Commented by ひまびと at 2005-08-08 16:08 x
いつも楽しく読ませてもらっています。僭越ながらリクエストですが、政局と日銀というテーマでのエントリーを一つ期待しております。
小泉政権からの信任は、福井日銀の支えであり、かつ歯止めであったと思います。量的緩和等ののロジックの一貫性など、ボードにとっては二の次だったのではないでしょうか。国民の実感も「小泉さんと仲の良い福井さんの日銀」というイメージが大きいと思います。
仮に自民が負けた場合、支えも歯止めも失った福井日銀がどうでるのか非常に興味深いです。「今後は財務省の顔色を見て仕事すれば良い」という意見もでそうですけど…。
Commented by bank.of.japan at 2005-08-08 18:10 x
walrusさん、どうも。ご指摘の件、アグリーです。無担保・無保証ローンでもミニバブルが起きつつあるのでしょうかね。ひまびとさん、政局と日銀の関係は私も興味あります。ただ、今はまだ予測は難しいですね。民主党は一応量的緩和の解除に前向きなようですし。ただ、どのような政権であれ、本格的な財政緊縮は難しいでしょうから、金融政策はしわ寄せを受け続けると思います。問題は「しわ寄せ」の程度でしょうか。エントリーは、選挙結果を見て考えたいと思います。
<< 決定会合でしたね インベストメントバンカーズ >>


無料アクセス解析