ケイマン向け与信、20兆円!=カリブ経済は絶好調?-BIS統計に見る邦銀資産の考察(訂正・追加あり)
 BIS国際与信統計の2005年3月末分が公表された。これは国内銀行のグローバルな与信(投融資=貸出だけではない)状況を国・地域別などでまとめたもの。この統計、個人的には好きだ。統計上の面白さというより、何か想像力をかきたてるところがあるからだ。子どものころ、世界地図が好きだった。地図を眺めながら、どんなところだろう、と想像したものだが、この与信統計も似たところがある。こんな地域になぜ邦銀のエクポージャーがあるのか、一体どんな金融取引に伴うものなのか、その様子を想像するのが楽しい(現実は想像するほどのことはないのかもしれないが)。
 従って、この統計で私が真っ先に見るのは、欧米を始めとする先進国向けではない。やはり想像して楽しいエキゾチックなところである。具体的には、まずはオフショア、その中でも「ケイマン諸島」である。カリブ海に浮かぶ世界的なリゾート島に対する投融資規模は「でかい」、しかも「淡々と増える」という特徴がある。機械的な増え方は日本とケイマンの間に尋常でない構造的な関係が構築されているように思う。
 ケイマン向けの与信額、手元の資料では2年前からの推移が把握できる。(単位、百万ドル)
2003年6月末  96,850  9月末 104,974 12月末 114,175
  04年3月末 125,564  6月末 137,118  9月末 160,357 12月末 181,497
  05年3月末 188,081  
直近は1880億8100万ドル。1ドル=110円で換算すると、20兆円強。過去2年間でほぼ倍増している。一地域への与信額としては、米国(425,915)に次ぐ規模で、ドイツ(68,498)、フランス(68,498)、英国(98,065)を大幅に上回る。なお、本統計上では、邦銀海外支店勘定分は除外されるため、同統計上で地域間比較を行うのは実情にそぐわない面もあるが、本店勘定におけるケイマン向けの突出ぶりはかなりのもの。この部分、訂正します。本支店合わせた連結ベースでした。
 与信=貸出としてみると、あたかも邦銀は国内では貸し渋り、ケイマンには大盤振る舞いしているかのようだ。だとすると、ケイマン経済が絶好調で旺盛な借り入れニーズが発生し、なぜか知らないが邦銀本店がダイレクトに地球の裏側に融資を実行している格好となってしまう。審査の大部隊がケイマンに常駐しているとは思えないのに、である。
 タネあかし(取材に基づく推測だが)すると、与信には投資(債券購入など)も含まれる。過去数年間、証券化に伴ってSPCがケイマンに多く設立されたが、これらSPC発行の証券を邦銀が購入すると、BIS統計上はケイマン向け与信として計上されてくる(のだろう)。ケイマン籍SPC発行の仕組み債を買っても同様。昔は不良債権の飛ばしが疑われたが、これはほとんどないだろう、と思われる。ケイマンに子会社を作り、そこに劣後債を買わせていた銀行もあったように記憶するが、商法違反に近い資本増強にオフショアを使う例もさすがにないと思う。
 なお、資産を流動化したり、流動化商品を買ったり、仕組み債を買ったりするのは、資産内容を良くしたい(良く見せたい)というインセンティブの表れであろう。ケイマン向け与信を「アセットロンダリング」と呼ぶのはダメですかねえ、ダメですかあ、やはり。クーポンは高いけど、危険な仕組み債買うぐらいなら、JGBがいいと思うのですが。ケイマン籍SPCの東京子会社に超低利のローン出す(この取引が統計で捕捉されるか微妙)ぐらいなら、スーパーロングのJGBを満期保有(非時価会計)する方がいいような。そこまでして融資実績作りたいのですかねえ。少なくとも証券会社や外資系証券のセールス(金法担当)の方々の努力の一端がこの統計に出ている、と私は見ているのだが…。どうでしょう、みなさん。

追記 対象としては「信託勘定」も含まれる、とのこと。ケイマン組成商品を組み込む投信を個人が購入すると、与信残高に寄与することになる。ケイマン向け与信における「信託勘定」の比率は相当規模あり、淡々と増えるのは投信絡みの要因と推測される。
[PR]
by bank.of.japan | 2005-07-25 20:56 | 金融システム | Comments(2)
Commented by たぶん at 2005-07-28 23:07 x
ご存知かもしれませんが、年金基金や地方金融機関等によるヘッジファンド(その多くはケイマン籍)の購入残高がここ2~3年で○兆円単位に増加しており、それもケイマン向け与信残高の増加の一要因になっていると思われます。
Commented by bank.of.japan at 2005-07-29 00:32 x
「たぶん」さん、どうも。このエントリー、コメントありそうでないなあ、と思っていたところでした。ご指摘の点、私も同意するところです。ファンズ・オブ・ファンズ、オータナティブなどの絡みですね。資産項目の「その他有価証券」の部分でしょうか。うまく利益を生むことを祈っております。
<< そういえば決定会合だった=追記... 人民元切り上げ→円高→介入→調... >>


無料アクセス解析