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量的緩和“ハードボイルド”論
 私の知り合いの日銀マンは最近の政策運営ぶりを「無様である」と言い切っている。政策ロジックを貫徹していく美学がないからだろう。量を増やしていく際に、それがいかに実体経済に対して効果がないと内心思っていたにせよ、政策運営主体として、「量の増大=緩和」と公言してやってきたのなら、我慢してやり続けるのが、一般的な常識ではないかと思う。
 増収増益を目標に掲げた企業の経営陣は、目標が達成できなかったら謝るのが普通であり、それを技術的な要因でごまかすことはあまりしないだろう。「また書き」が情けないのは、やろうと思えば30兆円を死守できるのに、ある種の手抜きをに見えることだ。国債買いきりを増やしたくない、手形オペを1年以上に延ばしたくない、将来の調節の機動性が失われる。日銀はいろいろ御託を並べるが、そんなもんは30兆-35兆円に増やしたときに覚悟すべき事柄であって、今になってこぼすのは泣き言でしかない。それとも後先考えずに量をふやしちゃったのか。だとすると、無責任極まりない。
 日銀に必要なのは、やせ我慢の精神ではなかろうか。意味はなくとも、こうと決めたことは意地でもやりぬく、結果的に自らに不都合が生じても、こらえてやり続ける。論理的には、それを正当化するロジックもある(植田和男氏と思われる委員が最後に指摘していた)。この精神は何かに似ているなあと思っていたら、ハードボイルド系の探偵小説の主人公の生き様だった。どんなに傷ついても、人から見てさほど意味があるとは思えない価値観のために、やせ我慢の精神で困難に立ち向かう姿を、政策運営に反映して欲しい。
 私は別に日銀をいじめようというつもりは全然ない。むしろ、日銀の信任にとっては、やせ我慢でもいいから量的緩和をやり続けた方がメリットになると思っている。そうすることによって、ネガティブな風評は最小限に抑えられるからだ。月刊現代の記事をご覧になった方も多いであろう。書かれた内容が本当かどうかは分からないが、この手のネガティブな記事が出てしまうのは、政策運営に隙が生じたからであろう。言うまでもなく、その隙は我慢の精神が途切れたところから生まれている。雑念を持たずに量的緩和を貫徹すれば、日銀の失点につけこむ余地はないと思う。いまさら言っても遅いかもしれないが…。
by bank.of.japan | 2005-07-06 01:52 | 日銀 | Comments(8)
Commented by walrus at 2005-07-06 08:37 x
福井総裁が歴史に名を残すとしたら、脱量的緩和を実現した名総裁としてではなく、量的緩和を貫徹した名総裁としてではないでしょうか?

「現代」読みました。ゴシップ記事というよりは、リアリティーを感じてしまいました。
Commented by bank.of.japan at 2005-07-06 12:04 x
この回復局面で解除のチャンスが到来しなければ、残る任期(3年弱)中の解除は難しい。その間、微動だにせず量的緩和を貫徹すると、歴史に名を残すでしょうね。もっとも、私は金利を知らずに現役を引く恐れもあり、それはツライことだが、仕方ないですね。
Commented by 振り向けば札割れ at 2005-07-07 17:35 x
「やせ我慢の精神で困難に立ち向かう姿を政策運営に反映させる」ことが、1億人の国民にとって大切なことでしょうか? 技術的とごまかしつつも実際に景気が徐々に良くなれば、それこそ国民が一番求めていることではないでしょうか。「何がなんでも30兆死守するほうがスジが通っている」「当預残を引き下げたほうがスジが通っている」勿論それは分かりますが、そんなことをしたために短期市場機能を殺したまま解除して市場を混乱させたり、金融政策引締めを連想させ金利が急上昇したり、そういった悪影響のほうが本当は問題だと思うのですが。
Commented by レレレのレー at 2005-07-07 23:02 x
当預の量には時間軸の長さを示すシグナリング効果があります。また、今までは量的緩和にさしたる効果はなかったかもしれませんが、実際に景気が良くなっていく中でもやせ我慢の精神で不動の緩和スタンスを維持することで、「ゼロ金利+時間軸」の効果がまさにこれから出てくるのだと思います。折角、効果が出始めるところなのに、現時点で敢えてそれを損なう必要はないと思う次第です。
Commented by bank.of.japan at 2005-07-08 00:07 x
「振り向けば札割れ」さん、どうも。量的緩和を語る場合、日銀周辺に限定するのと、一億国民に広げるのとでは、論じ方が異なると思います。私も国民レベルで語るとするなら、大半は量的緩和に興味がない(アンケート調査より)ため、さっさとやめればとは思います。なお、市場機能を殺すとか、金利が急上昇する、といったことは、量を増やす過程で日銀は分かっていたはずの副作用であり、そういったことを日銀が今になって心配するのは、個人的には都合が良過ぎるのではないかと思ったりします。それから市場機能を殺す、というのが、具体的にどういうことか、私には今もって良くわからないのですよ。
Commented by 振り向けば札割れ at 2005-07-12 13:24 x
返事を書こうといろいろ考えていたのですが、考えがまとまらず、遅くなってしまいました。すみません。でも、30兆を死守すると声高に宣言しておいて、それでも30兆割れする可能性もあると思ったのです。6月上旬はやろうと思えば30兆は維持できたはずで、それはbank.of.japanさんと同意見です。でも3月上旬はかなりヤバかったのでは?と思っています。即日オペで30兆割れは免れましたが、オペの足を間違えれば札割れしたかも・・・?なんて思っています。また手形オペを1年に延長したところで、このオペを打ち続ければいずれ札割れすることでしょう。そうなれば益々30兆維持は困難になります。

個人的には、「また書き」無しの状態で30兆割れしたときに市場がどう反応するのか、そちらのほうが怖かったですね。なので今回の件で為替・債券市場の関心がようやく当預残に向いて、議論が高まったことは本当に良かったと思っています。「30兆維持って大変なんだ」「30兆割れしても短期金利は大丈夫そうだ」--こういったことが確認できたからこそ、「また書き導入」「30兆割れ」のときに市場は何も反応しなかったんだと(あくまで個人的な意見ですが)思っています。
Commented by 振り向けば札割れ at 2005-07-12 13:24 x
レレレのレーさんのおっしゃる「当預の量に時間軸の長さを示すシグナリング効果がある」との意見、私はそうは思いません。30兆など、1ヶ月間供給オペをストップさせればあっという間に激減するはずです。

寧ろ、「30-35兆」という言葉をできるだけ長い期間残すために「また書き」は必要だったと思っています。「たまに30兆割るかもしれないけど、30兆維持するよう頑張るよ」というメッセージを発信しつづけるほうがいいと思うんですよね。やせ我慢で30兆を何がなんでも死守と宣言し、にもかかわらず30兆割れしたときの市場の反応のほうが怖くないですか? 長々と失礼しました。
Commented by bank.of.japan at 2005-07-12 18:56
6月より3月の方がヤバかったのはご指摘の通りです。ところが、2月の会見で、総裁が「当座預金残高目標は維持できると思っている」と明言してしまい、調節現場は目標死守を余儀なくされたようです。また、これにより「程度」は下限割れを容認していないと執行部は解釈したフシがあります。総裁答弁が後の「また書き」につながった事情は、市場機能の維持とかいう能書きよりとても分かりやすいと思います。なお、景気が回復する中でも目標を死守する場合、カーブが立ちやすくなるので、オペは楽になると日銀現場は判断しているようです。
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